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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
血塗られた秘密
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第76話 フリークとアース

 コレは今から約2000年前の出来事。


 当時、フリークは、まだ200歳にも満たない若く未熟なエルフだった。

 しかし、持って生まれた優れた魔法の素養ゆえプライドがとても高く、己がエルフたちの中では誰よりも優れていると思っていた。


 あるエルフが、フリークにこう尋ねた。


「どうして君は男の姿なんてしているんだ?」


「そんな事は決まっている。お前たちと違って、私は特別な存在だからだ」


 そんな彼にも友人が一人いた。名をアースという。

 彼女も優れた素質を持つエルフだったが、自分よりは少し劣っていた為、傍に置いておくにはちょうどいい存在だったのだ。


 一方で、アースがフリークに抱いていた気持ちは少し異なっていた。

 災禍をもたらすという不吉な黒い肌をもって生まれたアースは、周囲から偏見の目で見られる事も多かった。

 しかしその中でも、フリークだけは自分をくだらない外見などではなく、実力で判断してくれたのだった。




 ある日、フリークは自分の事を認めない魔法協会と対立し、そのすえ、乱闘騒ぎを起こした。

 そしてフリークはエルフの国から追放されてしまった。


 その後フリークは、アースと共に世界中を遊び歩いた。

 惑わしの森にある丸太小屋も、彼らの隠れ家の一つだった。



 森の丸太小屋では好きなだけ魔法の研究をしたり好きなだけセックス遊びをしたり、彼らは自由気ままな生活を200年ほど続けていたが、ある時アースがこう言った。


「私たち、このままでいいのかしら」


「ん? どういう意味なんだ」


「このままこの森で、この生活を続けていてもいいのかって事よ」


 それを聞くと、フリークは彼女の事を鼻で笑いながらこう言った。


「クク、何いってるんだ。この森で魔法の研究をしようって言いだしたのは、君じゃないか。君の言う通り、この惑わしの森は魔素に恵まれた良い場所だ。おかげで新しい魔法もいくつか開発できた」


 フリークはそう言うとベッドから起き上がり、かけてあった自分のシャツを手に取った。そして再びベッドの上に戻ると、そこにいたアースの艶のある黒い肌に触れる。


「それにだ。君が毎日たのしくしたいっていうから、こんなくだらない情事の真似事にも付き合ってやってるんだろ?それでも不服なのかい」


「いや、そうではないんだけど……。あなたは国の事が許せないんでしょう」


「許せんよ。だからこうして力を磨いて、いつか教会の奴らを見返してやるんだよ」


「それは私も同じ。私たちを追い出した国の連中は許せないわ。でも思うんだけど、復讐するならもっと大きな事をした方がいいと思うのよ。その方がより、アイツらの度肝を抜けるわよ」


「たしかにそれは一理ある。そっちの方が、奴らに私たちの力をハッキリ認めさせる事もできるかもしれない」


「ええ、私たちを追い出した連中に一泡吹かせられるわよ。でも何をしたらいいかは、まだ分からないのよ」


「それなら私にいい考えがあるよ。大図書館に忍び込もう。あそこなら、奴らの隠している弱みが何か見つかるはずだ」




 この世界の何処かにあるという幻の王国アルヴヘイム。その詳しい場所はエルフにしか知ることはできず、エルフにしか立ち入ることは出来なかった。


 エルフにとって魔法こそが全てであり、知恵こそが魔法である。なのでアルヴヘイムの最奥にある禁書庫は、彼らエルフにとって、とても神聖な場所であった。


 なのでもちろん警備も万全であったが、フリークとアースは禁じられた転移魔法を使って国外から侵入した。


 エクスポートディメンション。その代償は身体の一部だ。



 真夜中の禁書庫。突如炎の魔法陣が現れた。その中心にはフリークと片腕を失ったアースがいた。


「く、ぐあぁぁ……!」


「静かにするんだ。ほら、ハイポーションだ」


「ええ。ありがとう……」


 アースはフリークから受け取った万能薬を傷口にかける。すると腕の切り口はふさがり痛みも無くなった。


「はぁ。禁書庫に忍びこむためとはいえ、流石に片腕を失うのは割に合わなかったかしら」


「いいや、そんな事はない。エリクサーさえ手に入れば腕なんてまた復活するんだから」


「それもそうね」


 エリクサーはとても貴重な代物だったが、数千年の時を生きるエルフにとっては、この薬の入手確率もそう低くないのである。



 そして二人は、禁書庫にある貴重な蔵書の中から、魔法協会への復讐のヒントが書かれている本を探し始めた。


 その後、厳重に魔法で封印を施されていた古書を見つける事ができた。



 両者はとても賢く、世界中のあらゆる言語文化に精通していた。


 しかし、片方の古い木簡に記されていたのは見たことも無い異世界の文字。理解には到底及ばなかった。


 だが、もう一冊はアルバー文字で書かれているようだ。二人は古書を読み開く。


 その正体は、後にヴォイニッチ予言書と呼ばれる事になる異世界について記した冒険記だったのだ。


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