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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
豪傑たちの伝説
75/120

第75話 酷解

 カンッ カンッ


 鉱脈を叩く音が繰り返し響く。その音で望は目を覚ました。


「望ちゃん、気が付いたか」


「ん……ディップさん。私たち、捕まっちゃったんですね」


「そうだ。怪我はないか」


「はい、大丈夫です」


「チッ、俺とした事がヘマこいたぜ」


 ダイバー達はみんな手枷をはめられ、同じ鉄格子の中に閉じ込められていた。

 ネベルは壁に寄りかかって座っていたし、マックは牢屋の外をじっと眺めていた。


 しかしその中でフリークだけ姿が見えなかった。

 その事を聞くと、ディップはこう答えた。


「ああ、アイツならクローン兵士に連れていかれた」


「あ、兄さん。どうやら戻って来たようですよ!」


 すると、遠くの方から数人の話し声が近づいてきた。望が牢の外を見ると、そこにはクローン兵に連行されてくるフリークの姿があった。


「どうしてお前だけ、催眠電波が効かないんだ? お前もエルフなんだろう?」


「私には耐性があるのですよ。何せ催眠魔法の使い手ですから」


「訳の分からない事をいうな。お前も入っていろ!」


 するとクローン兵は、フリークを牢の中に乱暴に叩きこんだ。

 痛みで彼は苦悶の表情を浮かべる。

 既に連れていかれた先で拷問を受けていたらしく、フリークの肌は赤く腫れあがっていた。


 望が心配そうにフリークの顔を覗き込む。


「フリークさん、大丈夫ですか?」


「……ええ、心配要りませんよ。それより皆さん聞いてください。先ほどあのクローン兵士と歩いた時に、この基地の構造はだいたい把握しました。私が何とか魔法を使って倒しますので、カギを奪ってここから脱出しましょう」


「でも、その怪我じゃあ……」


 望は電気鞭で打たれたフリークの怪我の痕を見た。


「大丈夫ですよこの程度。それに、この中で武器なしで戦えるのは私だけなのですから」


 当然のごとくダイバー達の所持品は武器も含めてすべて没収されていた。エナジー(ボトル)が無いとネベルは魔法が使えないのだ。


「フリークさん! おれたちも、いろいろ援護するよ」


「イエス。幸い相手は一人だ。みんなでかかればどうってことないさ」


 だがそう言った矢先。レーザーライフルを持ったクローン兵士がさらに二人現れた。


 元からいたクローン兵は、やってきた彼らに向かって仰々しいまでにキッチリした敬礼をした。二人のクローン兵も敬礼を返す。


「F-5。何故まだ、侵入者を処理していない?」


 F-5と呼ばれたクローン兵士は次のように答えた。

 彼らクローン兵士には、個人が持つ権限ランク順にA-1からF-5までの呼び名があるのだ。


「はい。この者たちは何故か、マシンの電波の効き目がないようなのです」


「ふむ。このエルフはよく分からないが、他の者は人間だからだろう。ここに人間を操るための装置はないからな」


「ではD-2。この人間たちはどうすればいいですか」


「そんな事は決まってる。計画を知られた者は放置しておくわけにはいかない」


 すると、レーザーライフルの銃口は、一斉にダイバー達の方を向いた。

 クローン兵士は既にトリガーに指をかけている。

 命の価値を知らない彼らにとって、銃の引き金はとても軽い。


「うわっ やべぇ」


「まだ死にたくないです」


 ダイバー達は予想外の展開に慌てふためく。

 それでもクローン兵士たちは、無慈悲に人間たちを殺す。


 ―ピュンピュン ピュンピュン―


 超圧縮された熱エネルギーが高速で何度か射出された。

 人体が炎の矢に貫かれる。

 辺りに血しぶきと、肉の焼ける匂いが散漫した。


「フリーク!!!」


 ダイバー達は熱線に穿たれその場に倒れたフリークの元に急いで駆け寄る。

 フリークはダイバー達の前に飛び出すと、身を挺して彼らの事を守ったのだった。


 そして、フリークの心臓は完全に止まっていた。


「そんな……」


「クソッ!」


 フリークは死んだ。だが事態は何も変わっていなかった。


 クローン兵士たちは、レーザーライフルにエネルギーを込めなおした。

 そしてもう一度ダイバー達に銃を向ける。


「今度は外すなよ?」


「もちろんです。資源は有限ですからね」


 ダイバー達は必死を覚悟した。


「オーマイガッ、まさに絶体絶命だよ」


「こうなったら、一か八かだぁ!」


「そんなっ ああ、僕の人生も短かったな」


「プクク、皆さん陰気になりすぎじゃありませんか?そんなに悩んでいるとすぐハゲますよ」


「オイこら。誰がもうすぐハゲそうだって?  …ん、てオイ!?」


 その聞きなれた声に驚いて、ディップは咄嗟に後ろを振り向く。

 なんと、さっき撃たれたのがウソかのようにフリークはピンピンしていたのだ。


「そんな、お前はさっき撃ち殺したエルフ……!」


「灰燼と化せ、ヒートヘイズ!」


「何?! ぐああぁっ」


 三人のクローン兵士は、フリークの放った魔法の火炎に身を焼かれて息絶えた。


「ふう、今の私ではこれが精一杯です。さあ、鍵を奪ってここから逃げましょうか」


「フリークさぁん! よかった、無事だったんだね」


「ええ、どうやら急所を外していたようです。プクク、ツイていました」


 フリークは九死に一生を得て、苦々しく笑っていた。


 だがネベルは、それが偽りだという事を見抜いていた。


「フリークさん。さっきは助けてくれてありがとうございましたです。アタシ達をかばって本当に死んじゃってたら、どうしようかと思っちゃったです」


「プクク、この私がそう簡単に死ぬはずないじゃないですか。さあ、それよりも早く鍵を探しましょう」


「はいです」


 だがしかし、ディップはこう言った。


「いいや待て。そいつはさっき、確実に死んでいたぞ」


「何を言ってるんですか兄さん。 フリークさんはこうして生きているじゃないですか」


「だからおかしいんじゃないか。一度心臓が止まってた奴が、こうして何事もなかったかのように歩き回っている。これは余りにも異常だ。 オイこら、今度こそ答えろ。フリーク。お前は一体何者なんだ?」


 そう言ってディップは、フリークをギロリと睨みつける。


「……そんな事はどうでもいいじゃないですか。今は悠長に話しているような時間はないと思いますよ」


「いやッ 今話せ。じゃあないとお前はもう仲間じゃない。俺たちの敵だ!」


「…………それでも、出来ません」


 彼らの間に険悪な雰囲気が漂う。


 元からミュートリアンという事で、フリークに対して多少の警戒は存在していた。

 だがハーピィ渓谷で彼の背後に浮かぶ無数の死者を目撃した件から、フリークに対する疑念はさらに強まっていたのだ。


 マックもフリークにこう尋ねた。


「ヘイ、何か言いたくない理由があるのは分かった。だけど話してくれないと、オレ達も困惑したままだ」


「…………すみません。どうしても無理なのです」


「フリーク…!」


 彼は頑なに自分の秘密を明かそうとしない。するとネベルがこう言った。


「言ってしまえよ」


「オイこら。まさかお前は、こいつの隠し事を知ってるのか?」


「……少しだけだ。けど()()()()()()は知ってる」


 そういうと、フリークの体はまるで怯えた猫のようにびくりと跳ねた。


「なら、貴方も分かるでしょう。絶対に言えないという事が」


「そうでもないんじゃないか」


「はい?」


 ネベルはこう言った


「俺たちはダイバー。過去の遺物を探し求め未来へ紡ぐのが使命だ。こいつらにも過去に何があったのか知る権利はあると思うぜ」


「…………分かりました。話しましょう……」


 フリークはそう言うと、牢屋の一番隅っこに腰を下ろした。

 そしてダイバー達に、己の罪の告白を始めたのだ。


「もうお分かりだと思いますが、私は不死者です。その昔、私は創造神ウルムに歯向かいました。そして神から罰を受け、最も苦しく残酷な死が訪れるまでは死ねなくなってしまったのです」

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