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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
豪傑たちの伝説
73/120

第73話 暗黒洞窟

 ダイバー達は180°転回し、バルゴンの案内でドラゴンの財宝が眠っているという暗黒洞窟へと向かった。

 700年も前の伝説だ。確実なものなど無いに等しかったが、それでもダイバー達は待ち受ける冒険と財宝に期待に胸躍らせていた。


 ディップはバルゴンにこう言った。


「安心しろ。お前の先祖の宝を横取りするなんて無粋な事はしねえよ。……ただ、そこに宝がある。それだけで理由は充分じゃねえか」


「兄さん……! 最高にカッコいいですよっ!」


 デルンは兄に対して拍手で称賛した。


 しかしバルゴンは言った。


「そうか? もし、おぬしらのおかげで宝を見つけられたら、少しくらいは財宝を譲ってもいいと思っていたんじゃが」


 それを聞くと、喜びのあまりピクシーは飛び上がった。


「ほんとぉ!!! わたしに頂だ…っ(むぐぅ」


「……お前は黙ってろ」


 強欲な妖精はそのおしゃべりな口を塞がれると、ネベルによって革袋の中に押し込まれていた。



 数時間後、ダイバー達はまだ日の沈まぬうちに暗黒洞窟の前にたどり着くことができた。

 四方をくるりと囲まれた山合の窪地にあった黒い穴。その先は地下深くへと続く鍾乳洞の入り口だ。


 洞窟の前には古い木の看板が落ちており、そこには霞んだアルバー文字(ドワーフやエルフなどの長命種が使う古代文字)の注意書きが書かれていた。


「立ちいり禁止。と書いてあるようですね」


「この洞窟の中は()()()()というの名の通り真っ暗闇じゃ。しかも壁がつるつるしていて、かがり火を置く事が出来なかった。そのせいで洞窟内の鍾乳石につまずいて怪我をする者が大勢出たから、今は立ち入り禁止になっているのじゃよ」


「なるほど。そうでしたか。プクク!石につまずいて転ぶドワーフの間抜け面が目に浮かぶようです。楽しい話を聞かせていただきぃ、ありがとうございますぅ!」


「グググ。これだから気に食わんのじゃ~…………」


 フリークから揶揄されたバルゴンは、ムッスリといじけて深い皺をさらに増やしていた。


 バルゴンの話を聞いていたデルンは彼にこう尋ねた。


「待ってください。僕たちだって暗い所だと何も見えないのは同じですよ。これだと洞窟の奥まで進めないんじゃないですか」


 するとバルゴンはこう答えた。


「うん。一応、たいまつは2本持っておる。じゃが一人分の足元しか照らせないから、ゆっくりとしか進めないな」


 鞄からたいまつを取り出し一本をデルンに手渡す。だがその時、キャンディが「うひょひょひょ」と高笑いしながら彼にこう言った。


「バルゴンさん!アタシに任せてくださいです!」


「なんじゃ? ……う、うぉぉぉお!!?」


 バルゴンは突然のまばゆい閃光に驚いた。その光の正体は、キャンディの自作した懐中電灯の明かりだった。


「このスーパーぴかぴか君3号は、最大99999Lm(ルーメン)の光を出す事が可能です。これなら洞窟の中でも、昼間のように照らすことができますです!」


「おおっ、そいつは頼もしい。ならばキャンディ、先頭を歩いてわしらの道を照らしておくれ」


「はいな! 了解しましたです!」



 ダイバー達は暗黒洞窟に入っていった。

 スーパーぴかぴか君3号の強い光で照らされると、暗黒洞窟の内部は思った以上に大きな空間が広がっている事が分かった。

 いくつもの洞窟が複雑に入り組み繋がっており、数千年もの年月が積み重なって作られた自然界の大迷宮がそこには存在していた。


「みんな、はぐれないように気を付けて進むんだ」


「そうだなマック!  オイこら、お前ら気をつけろー」


「うん、分かった。 マックさぁん」


 キャンディの懐中電灯のおかげで視界は充分に確保できていたが、ここが危険な鍾乳洞であることが変わりない。足元はつるつると滑りやすく、一歩踏み間違えば大惨事だ。


 ダイバー達は暗黒洞窟の深部へと、慎重に進んでいった。



 そして、その先にあったのは無数の水晶で埋め尽くされた空間だった。

 地面や壁面から、それらはまるでキノコでも生えるかのように密集し成長していた。中には大きさが5メートルを超える巨大な物もあった。


「うわぁー! すごい綺麗っ!」


「ワオ! なんて幻想的な光景なんだ」


 ダイバー達は水晶の洞窟の美しさに目を輝かせていた。


「本当に水晶があった……。もしかしたら、エニゴンの財宝は本当にここにあるのかもしれん!」


 これまでバルゴンは若い戦士の目撃情報も半信半疑だったが、実際に水晶を目の当たりにし考えは覆った。莫大な先祖の財宝が手に入るかもしれないという底知れぬ興奮が、彼の内から沸き起こっていた。


 ネベルはこう言った。


「どれが【七色に輝く水晶】なんだ?」


「きっとこの中のどれかじゃ。みんな、探してくれ」


 そしてダイバー達は手分けして、洞窟の水晶の中から七色に光るものを探し始めた。


 だが微精霊の影響で僅かに緑色の光を放つ物はあっても、【七色に輝く水晶】は中々見つけることが出来なかった。


「ぐっはぁぁ~、全然見つからないよ」


「いいや。この中にあるはずなんじゃ」


「ええー、まだ探すんですかぁ? …おれ、ちょっと休憩!」


 いくら探してもそれらしいものは見当たらず、ダイバー達は音を上げ始めていた。


 開始5分で水晶探しに飽き一人昼寝をしていたピクシーは、未だあきらめず夢中で探すバルゴンに対しこう言った。


「ねえねえ、こんなに探しても見つからないなら、ここじゃあ無かったんじゃないのぉ~」


「そんなはずはないぞ妖精どの。エニゴンが残した手がかりの一つの水晶が、ここにはこんなにたくさんあるのじゃ。必ずどこかに【七色に輝く水晶】はあるはずじゃ」


「そう、そのエニゴンの手掛かりだよ。もう一つの【月夜の調べ】ってのがまだそろってないじゃん」


「う゛んッ。……そうじゃな」


 財宝の手掛かりは二つあるのだ。この空間には余るほどの水晶はあったが、【月夜の調べ】といえるメロディらしい物は無い。むしろ洞窟内はダイバー達の声以外は無音だった。


「でも、わしの国の戦士がここから歌声を聞いたといっておるのだぞ」


「そんなの聞き間違えだったんじゃないのぉ~」


「むう……。そんな」


 さっきまでの高揚感はいずこに。ピクシーに言い返すことが出来ず、バルゴンはすっかり気を落としてしまった。


「まあ、そんな簡単に見つからねえよ。何せ伝説の財宝なんだからな」


「うーむ……」


 そう言ってディップは肩を落とすバルゴンを慰めた。だがそのとき、


「待てっ」


「プクク!プククク! …………おや、どうしたんですか?」


 落ち込むバルゴンを見てこっそり嗤っていたフリークは、ネベルにそう問いかける。


「何か、音が聞こえないか」


「え? まさかぁ」


 信じられないと思いつつも、フリークは試しに聞き耳をたててみる。すると微かに、遠くの方から不思議な歌声が聞こえてきたのだった。


「なんじゃと!」


 バルゴンも同じように聞き耳をたてると、同様に歌声を聞く事ができた。


「そんなありえないっ どうしてこんな洞窟の中で、人の歌声が聞こえてくるんですか?」


「そんなの何でもいいわい! いくぞ、この声の先に、きっと財宝があるんじゃっ!」


 そう言うとバルゴンはウッキウキで音の聞こえる方へと駆け出した。

 ダイバー達も慌てて彼を追いかける。


「この先に【七色に輝く水晶】もあるのかなぁ?」


「ああ、たぶんな。いよいよお宝とのご対面ってわけだぜ」


 そうして歌声を頼りに水晶の迷路を進むにつれ、だんだんその声も大きくはっきりと聞き取れるようになってきた。


 暗黒洞窟は普段は何も音を立てる物が無いため気がつかないが、入り組んだ構造ゆえ音も複雑に反響した。その為、共鳴して聞こえた遠くの音は、元の音源の性質とかけ離れている場合もあるのだ。

 この場合、ダイバー達が聞いたという歌声も例外ではなく、近づくにつれそれは【月夜の歌声】とは全く違うものだと気づいた。


「助けて」


「殺さないで」


 歌声の正体は、この世の物とは思えない狂気の断末魔であった。


 ズシャッ


 肉が固い物につぶされる音が聞こえて来た。怖くなったピクシーは咄嗟に革袋の中に身を隠す。



「――ここで待ってろ」


「……うん」


 戦う事の出来ない望やキャンディにそう告げると、ネベル達は慎重に建物の角から歌声の主を覗き見た。


 いつの間にか彼らのいる場所は、岩や水晶が野ざらしの洞窟ではなく、人の手によって鉄板や電灯できっちり整備された工事現場のような場所に変化していた。

 リ・ケイルム山の地下洞窟にこっそりと作られていたことから、秘密基地と形容した方が正しいのかもしれない。


 そんな場所でダイバー達が目にしたのは、たくさんのクローン兵士と虐げられた獣人族の奴隷たちの姿だったのだ。

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