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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
豪傑たちの伝説
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第71話 啀み合う二人

 ネベル達がベリーパイを食べながらバルゴンの話を聞いていると、そこにディップが近づいてきた。

 彼の持つ布袋には、剥ぎ取った大蛇の皮が一杯に詰め込まれていた。


「俺も少し話を聞いてたんだが、どうやらドワーフの国ってのはかなり栄えているようだな。いったいどんなところなんだ?」


 するとバルゴンはこう答えた。


「うん。活気のあって良いところじゃぞ。この砂漠を抜けるとすぐにリ・ケイルムという大きくて平坦な山が見える。その山を真横に貫くようにして掘られたかつての大坑道にみんな住んでおるのじゃ。居るのはほとんどがドワーフだが、武具の売買があるから人間のほかには蜥人族(リザードマン)狐人族(フォックスマン)などとも交流があるぞ」


「へえー、そりゃすげえ」


「あとな。ドワーフはみんな酒が好きだ。だから酒は美味い物がそろっておるぞ」


「なに?! それは俄然楽しみだぜ」


「お。おぬし酒がイケる口かー。こりゃぁ、帰ってからの宴が楽しみじゃい。グッハッハッハッ」


 バルゴンは明るく陽気な人物で、少し話しただけでダイバー達は彼と打ち解ける事が出来た。

 だが、その事をよく思わない者がいた。


「皆さん、小汚いドワーフなんかと仲良くしてはいけませんよ?」


 突然、彼らにそう言ってきたのは、エルフのフリークだった。砂漠の丘陵の狙撃地点にいたマックを回収してネベル達の元に戻って来たのだ。

 バルゴンと和気あいあいと食事をしていたネベル達の方を、フリークは怪訝な表情を浮かべながら見ている。すると望は彼にこう言った。


「急にどうしたんですか? なんでそんな酷い事を言うんですか」


「おや、酷い事?これは事実なのですよ。ドワーフとは年がら年中、泥にまみれているか酒を飲んでいるかしか能のない生き物なのです。その醜い下っ腹を見れば一目瞭然でしょう」


 何故フリークがここまで敵意を示しているのかというと、それは種族的な反発関係があったからだった。

 エルフとドワーフという種族は外見、能力すべてにおいて対照的であり、それが両者間の敵対意識につながっていたのだ。


「おぬし、エルフじゃな。男のエルフとは珍しい」


「どんな姿でいようとも、私の勝手でしょう」


「それはそうじゃが。だがドワーフがただの酒飲み呼ばわりとは心外じゃ。まあ、酒は好きじゃが。そもそもエルフこそ、陰気でひょろひょろとした軟弱者ばかりのくせに」


「プクク、汚いデブよりマシじゃないですかね?」


「なんじゃとぉー!」


 怒ったバルゴンは思わず鋼鉄の戦斧を握った。それを見たダイバー達は慌てて二人の仲裁に入る。

 しかしバルゴンの身体は小さいが、屈強なドワーフである彼の腕力はバーンズ兄弟二人がかりでも抑え込む事が出来なかった。ズルズルと引きずられながらデルンはこう言った。


「や、やめて下さいバルゴンさん! ほら、フリークさんも謝って下さいっ」


 するとバルゴンは、その名前に強い反応を示した。


「フ、フリーク?! このエルフはフリークというのか!」


 キャンディは答えた。


「はいな、そうです。あれ、もしかして知り合いだったんです?」


 バルゴンの足は止まる。そして、その場で彼はへたりと座りこむと、何やら考え事を始めてしまった。


「…………そう言われればそうじゃ。わざわざ男でいる変わり者など、エルフでもそういるはずはないのだ」


「オイこら、急にどうしたんだ?」


「おぬしら気をつけろ。このエルフはとんでもない悪党なのじゃよ」


「な、なんだって?!」


 それを聞くとダイバー達の頭の中には、ハーピィ渓谷の泉でフリークの背後に群がっていた無数の死霊達の事が思い起こされた。


「まさか………人殺しとか?」


 望が恐る恐るバルゴンに尋ねる。


「そんな生易しいものじゃないわい」


「ええっ それ以上って、いったい何??」


 すると彼はこう言った。


「こ奴はひどいぞぉ。400年前にはわしらの国の大臣とイカサマの博打で勝負して、国庫の金を根こそぎ奪い取りおったのじゃ」


「…………ああ、そんな事もありましたね。あれは魔法の研究の資金が欲しかったんですよ。プクク、ご馳走様でした~」


「クッ、まだあるぞ。200年前には国中の女を見境なく口説きまわり、たぶらかしおったじゃろう。あの年の出生率は過去最悪だったのじゃ」


「覚えてますよ。魅了魔法の実験には種族的に嫌われているドワーフの女性で試すのが一番良いと思ったのです。まあ、あの結果は、私が元から魅力的すぎたせいかもしれませんがね」


「グググ……おぬしがたぶらかした女の中には、わしが恋焦がれていた女性もいたのじゃぞい! うぅ……」


 200年前に想い人に振られた事を思いだしたバルゴンは、いきなり大声で泣きだしてしまった。


「おぬしらぁ、これで分かったじゃろぉ~! わしはエルフは全体的に気に食わんが、中でもこいつは格別に性格最悪なのじゃ!!!」


「………うん、知ってる……」


 皺だらけの顔をますますしわくちゃにして涙を流すバルゴンを見て、なぜかダイバー達は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。



 ひと段落してダイバー達は再び移動を始めた。バルゴンも行動を共にしており、現在の目的地はケイブロングヴェルツとなっている。


 バルゴンの話によれば、リ・ケイルム山の隣の広大な平原地帯にあるのが、コロニー〈ガブリエル〉らしい。

 二つの国の間ではクローン兵士や銃器を持った巨大ロボットが検問を張っており、ドワーフたちの中ではまだ誰も〈ガブリエル〉に行った者はいないという。

 だが山の向こうからドワーフの国にクローン兵が侵攻してくるので、そこに国があるという事は確かだそうだ。


「バルゴンさんの国にもクローン兵士が……」


「グッハッハッハッ なに。あんな雑兵などいくら攻めてこようとわしらの敵ではないぞ」


 実際バルゴンはかなり強かった。彼が合流してからイグメイア砂漠を出るまでに、二度モンスターの襲撃にあったが、バルゴンのおかげでいずれも戦闘はあっという間に終わった。


 腕力ならネベルよりも確実にある。

 さらにバルゴンは、モンスターの攻撃をわざわざ避けようとはせず、すべて受け止めていたのだ。

 彼は完璧な戦士職だった。

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