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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
豪傑たちの伝説
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第68話 ヨムルガンド

 ネベル達がイグメイア砂漠に突入して10日ほどが過ぎた頃、彼らは岩山のように巨大な大蛇との戦闘の真っただ中だった。


 生き物の全長はゆうに数百メートルはあり、地上からだけでは全貌を把握することは不可能だ。

 大蛇の動きは、空から見ることでようやく理解できた。


 召喚獣サウザンドウイングの背中から、キャンディが双眼鏡を通して眼下に望む砂原を覗く。


「えーと……首の向きからして、大蛇は右に旋回しそうです。 あっ、ディップさんが狙われてますです」


「了解っ ディップさん、そっちいきますよ!」


 トランシーバーを持った望は、地上にいるダイバー達に情報を伝えた。


「オッケー! 分かったぜ望ちゃん!」


 ディップは尾棘狼(ソーンテイル)の背に乗って砂原を猛スピードで疾走する。


「いやっほー! とばせとばせーッ」


 ディップが手綱を操ると、ソーンテイルはさらに速度を上げた。

 すぐ後ろからは、ぱっくり口を開いた大蛇の毒牙が迫って来ている。


「この、怪物め。これでもくらえ」


 同じソーンテイルの背に乗っていたデルンは、背後の大蛇に向かってエナジーライフルを撃ち応戦した。


 弾丸は顔面に命中。怒った大蛇は、口から球形の毒粘液を吐きだした。


「マズイな。デルン、しっかり摑まってろ!」


 ディップの操るソーンテイルは右へ左へと屈曲に移動しながら、大蛇の毒粘液を巧みに躱した。しかし大蛇は山のような巨体にもかかわらず、正確かつ素早い動作でディップ達を追いかけてくる。


 すると、空からフリークの乗ったサウザンドウイングが、ディップ達の乗るソーンテイルの近くまで降下してきた。


 その後、フリークはディップ達に状態異常に対抗できるバリアを付与した。


「加護よ、宿れ。ダークヴェール」


「おお、助かったぜ」


「いえいえ、お構いなく。ただあのモンスターの毒粘液は一度しか防げませんので、そこは頭に入れておいてくださいね」


 ダークヴェールは状態異常を何でも一度だけ無効化する魔法だ。

 この魔法の優れている所は即死魔法でも防ぐ事ができるという点にあるが、対毒という点では効果時間の長いアンチポイズンという別の魔法に軍配が上がる。

 しかしフリークは、光属性の魔法はからっきしであるのだ。


 フリークはダークヴェールの他にも環境適応魔法という物を使う事ができた。

 そのおかげでダイバー達はイグメイア砂漠の過酷な温度変化にもなんとか耐える事ができた。

 広大な砂漠で迷っても、ロンドの能力があれば方向を見失わずに済む。


 なので、この10日間もっぱら彼らを苦しめたのは、大型モンスターによる襲撃だった。この大蛇はその中でも特に大物であった。


「あんな怪物、本当に倒せるんですか? もうすぐ砂漠を抜けられるんだったら、このまま逃げ切った方がいいんじゃ………」


「オイこら、弱音を吐くんじゃない。今更にげられねんだ。それに、あの大蛇の皮はすっげえお宝らしいじゃねえか」


「貴方の言う通りです。あの蛇の皮は私の故郷じゃ滅多に手に入らない物でして、魔法の品としても高値で取引されているんですよ。富と幸運の証でもあり……。そうそう、媚薬としても使われるので持ってるだけで異性から好意を抱かれるのだとか」


「なに? ってことはッ、可愛ちいエルフの女の子達からモテモテになってしまうってことかぁー?!」


「でも兄さん、エルフってみんな両性具有じゃありませんでしたっけ」


「……は! ん?という事はつまり?」


「プクク、どうしてですかねぇ」


 ディップがエルフの真実に気づきかける。だがその前に、望が話の筋を元の大蛇討伐に戻した。


「そんな事はまあどうでもいいんですけど、あの大蛇は結局どうやって倒すんですか?」


「望ちゃん、どうでもいいて…………」


 するとフリークがこう言った。


「一応弱点はあるんですよ。あれは輝石黄蛇というモンスターが成長した姿でしょう。身体のどこかに宝石のような結晶体が露出していて、そこが心臓と繋がっているそうです」


「じゃあ、そこを攻撃すればっ」


「はい、だがここまで大きい個体だと流石に探すのも大変ですよねー。相手も動き回ってるわけですし。マックさんやネベルさんも、別のところから弱点を探してくれてるみたいですが――」



 その時マックは、少し離れた小高い砂丘の狙撃地点にいた。


 そしてネベルはロンドと一緒に、もう一体のソーンテイルに乗って後方から大蛇を追いかけていた。


「うへぇー、でっかい蛇だねコレは」


「はぁ……呑気な奴だな」


 ネベルはピクシーのあまりの能天気ぶりに思わずため息をついた。するとピクシーはプンスカ怒ってこう言った。


「何よ! 人の顔見て溜息つくなんて失礼だよ? ネベルこそ、いつまでもこんな蛇の尻尾なんて追いかけてないでさー、さっさと決めちゃえばいいいじゃん。ほら、ズバッとさぁ」


「フン、俺だってそれが出来たら苦労しないさ」


 目の前の大蛇は長さが数百メートルもあり、ちょっとのダメージでは致命傷にならない。その上、奴はとても素早く、渾身の一撃も躱される可能性が高かったのだ。


 よって、空にいるフリーク達か丘にいるマックのどちらかが弱点を見つけるまで、地上のネベル達は攻撃を制限されていた。



 要するに、大蛇の弱点を探すにしてもエクリプスで攻撃を仕掛けるにしても、先ずは動きを鈍らせる必要があったのだ。


 そこで、デルンはふとある事を思いだすと、近くにいたダイバー達にこう伝えた。


「すみません皆さん。もし僕の考えが正しければ、大蛇の動きを止められるかもしれません」


「本当かデルン。よし、話してみろ」


「はい。これはあの大蛇に限った事では無いんですけど、蛇の鼻の上あたりにはピット機関という優れた熱感知部位が備わっているんです。あれだけ正確に僕らを追い回すことを出来るのは、そのピット機関のおかげなんですよ」


「なるほどな。お前の言いたい事はだいたい読めたぜ。つまり~、そのピット機関をダメにしちしまえば、大蛇は俺たちを見失うってことだな」


「はい! たぶん、そうだと思います」


 デルンの話を聞くと、フリークも納得したように頷いた。


「ふむふむ。さすがデルンさん!やはり貴方の知識は頼りになりますね」


 それを聞くと、デルンは慌ててこう言った。


「いえっ 僕なんて…全然ダメですよ! だからそんなに期待しないでください」


「おや、それはどうしてでしょうか?」


「僕は、いつも兄さんに守れらてばかりなんです。僕の臆病のせいで、この旅の間も何度もみんなの足を引っ張ってしまった」


 彼はバルガゼウス戦の時、自分が誤射したせいで仲間を死の危険に晒した事をずっと気にしていた。

 そこから勇敢な兄のような勇気を持とうと努力してきたが、なかなか恐れ知らずのディップのようには成れなかったのだ。


「頼りになると言ったら、フリークさんの方ですよ。あなたが居なかったら、この砂漠の道のりでもとっくに終わってた」


「たしかに。魔界の事ならお役に立てるでしょう。ですがエルフの私は、蛇の臓器の話など今まで聞いた事もなかった。おかげで新しい世界が広がりました。貴方の知識がこうして役に立っているのだから、そう謙遜しなくてもいいのですよ?」


「え? そうなんですか」


 フリークはこう言った。


「はい。それに、人には誰しも得意不得意があるものです。弱点を克服し成長しようとすることは素晴らしいと思います。しかしデルンさんにも誰にも負けない利点があるという事は忘れないでくださいね」


「は、はい。ありがとうございます……!」


「では、この弱点の事をネベルさんにも知らせましょう。大蛇討伐の開始です」

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