表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
幕間 Tears of the innocent in darkness
67/120

第67話 闇の沈黙

 イグメイア砂漠のクローン工場に、もう一人の三大天使長がやってきた。

 汎用型人機(マルチタスクユニット)の代わりに自身のクローン体に搭乗していた斑目マダムは、その手で持ってきたクローン体マキナをロワンゼットの目の前に放り投げた。


「おやおや、そのザマを見る限り神の雫の回収は失敗したようだな。せっかく性能を落としてまで美しく作った愛玩用クローンが、とても汚らしくなってしまってるじゃないかい」


「余計な小言は聞きたくないよッ! これは地上の人間にやられたのさ」


「我らの他に人間? ああ、アンチダイバーの生き残り。もしくは子孫か」


「今はダイバーと名乗っているようだけどね。全く憎たらしいよ」


 斑目マダムがコンピュータに命令すると、制御装置室のロボットアームからくつろぐ事のできるイスが差し出された。

 彼女は椅子にどっぷりと腰かける。しかしプーパの肉体では足の長さが足りず、フワフワな綿がたくさん詰め込まれたイスに体が飲まれるような形となった。


「それでお主は何の用でここに来たんだ? この程度の修理なら出来ぬ事はないだろう」


「当たり前だよ!舐めるんじゃないよっ だが、ただ直しても意味はない。もっと強力に改造して、次こそ奴らから神の雫を奪ってやるのさ」


「なるほど。そういう事ならば協力しようとも。じゃが……」


 するとロワンゼットは、斑目マダムの意識が入ったプーパの肉体を凝視した。


「その肉体は、我々の活動体として使うにはやや不便ではないかな」


「はぁ?? ……いや、アタシもそう思っていたんだよ。何しろコイツは、実験的に作ったクローンのクローン。つまり劣化型で全ての能力が低いからねぇ」


「そうであろう。ここにはまだ汎用型人機(マルチタスクユニット)がある。いっそ移り換えたらどうだ」


「ほーん、それならそうしようか」


「ああ、それがいいだろう。余ったクローン体は儂が預かっておくよ。クフフ」


(……………………)


(……………………)


(…………。)



 斑目マダムが去った後、ロワンゼットは原子移動装置(テレポーター)を使って〈ガブリエル〉にやって来ていた。

 その目的とは、アポストロスに面会する為であった。


 ロワンゼットは黒い金属の壁で囲まれた牢獄のような小さくて狭い部屋の中でアポストロスの事を待っていた。この部屋の中での会話は、どんな方法でも情報傍受されないのだ。


「私に話とは、一体なんの要件だ」


 しばらくすると部屋に一つだけの扉が開き、2メートル半はある人工皮膚のアンドロイドが入ってきた。アポストロスはブレインズのクローン体だったが、半分はロボットだったのだ。


「来てくださったか。ところで、北大陸の侵攻の進捗は聞いていますかな?」


「ああ。亜人の国一つにかなり苦戦しているようだな」


「ううん………。その戦況を打開するためににも、儂に大軍を動かす許可をくれまいか。最低でも20万は」


「…アレックス様なら、その数は過剰戦力だとおっしゃるだろう。資源は有限なのだ」


「分かっておる。だが次で確実に攻め落としたいのだ」


 それを聞くとしばらくアポストロスは考えこんでいたが、やがてロワンゼットにこう告げた。


「いいだろう。お前に20万の指揮を任せる。だがこれ以上の損失は人類救済後を見越しても許されない。分かったな」


「分かりましたとも。クフフ」


「私は任務に戻る。せいぜいアレックス様の期待を裏切らないようにあがく事だ」


 そうして部屋から退出しようとするアポストロスに、ロワンゼットはこう言った。


「おいアポストロス。お前さんが一人ついて来てくれれば、20万の軍隊なんか不要なんじゃが?」


 それを聞くと、アポストロスは機械の瞳でロワンゼットを思いっきり睨みつけた。


「勘違いするな! 私はアレックス様の命令しか聞かない」


「……アポストロスよ。あんなAIごときに、いつまでも従属し続ける必要はないぞ」


「…………なに?」


「儂が何も知らないとでも思っていたのか? コードブレイン社の初代創設者アレックス・ブレインズの生きていた時代には、まだコールドスリープ技術は存在しないのだ。だからアレックスを語っている奴は、ただの人格をまねた疑似AIという事になる。どうだ?あんな奴につくのは止めて、儂の兵とならないか? ふふふ」


 だがそれを聞いてもアポストロスは何の反応を見せず、ロワンゼットを無視して部屋から出ていった。


「ふん、つまらん奴め。まずは居飛車という事か。だがいずれ奴も、儂の手中に入れてやろうぞ」

ブックマーク、☆☆☆☆☆評価、感想など

お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ