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第55話 いざ、再びオアシスへ!

 フリークは2種類の騎乗モンスターを召喚した。


 一体目のサウザンドウイングという名のグリフォンは、彼の相棒だった。大きな体を持っており、休まず一月も飛び続けられるタフネスがある。

 黄金の翼を横に広げた姿はギリシャ彫刻のような美しさと勇ましさを兼ね備えていた。


 次に召喚したのは、ソーンテイルという大型の狼モンスター2体だ。灰色の毛皮と棘のように進化した尻尾が特徴的だ。

 酸性ガスの立ちこめる火山地帯に生息するソーンテイルは、本来とても気性が荒いモンスターである。しかしフリークと魔法契約を交わしていた事により、背中に乗れるほどにおとなしくなっていた。


「そうそう、気をつけてくださいね。ソーンテイルの棘に触ってしまったら、一発であの世行きですから」


 そんな事を言うものだから、移動の最中、デルンとロンドはずっと死の恐怖に怯え続けなけらばならなかった。



 ダイバー達は召喚獣に乗って白絹の森を抜けた。

 それからは一度野宿をしてからゆっくりと北上を続け、やがて海の見えるコロニー〈サキエル〉までたどり着いた。


 しかし、どこかコロニーの様子がおかしい。



「えっと、ネベル君。ここが〈サキエル〉であってるの?」


「……おそらくな」


「オイこら。俺たちはお前の案内でここまで来たんだぜ。まさか道を間違えた、何て言わないよな」


「そんな事はない……と思うけど」


 ネベルが疑問を抱くのも、そのはず。久しぶりに訪れた〈サキエル〉の様相は、ネベルの記憶にあるものとは大きく異なっていたのだ。



 二年前の〈サキエル〉の住人たちは閉塞的な超合金の住処を抜け出し、白い砂浜の上でのびのびとエビをBBQしながら暮らすような生活をしていた。


 しかし、現在の〈サキエル〉では、コロニーの外周はモンスターの侵入を防ぐ黒い防壁で取り囲まれ、人々は素っ裸でなく文明的なスーツを着込み、子供達はビーチボールの代わりにラーニング機能を備えた電子端末を携えていた。


「うへぇー。 一体、このコロニーはどうなっちゃったわけぇ???」


 かつての〈サキエル〉を知るネベルとピクシーは、この街の余りの変わりように唖然としていた。

 すると、街路沿いで怪し気なDHAサプリを売っていた小太りの男性が二人に気づいて近づいて来た。


「もしかして…… お兄ちゃん、不可視の獣じゃないか??」


「ム。そうだけど」


「やっぱり! 俺だよ俺。話した事があるだろう。ほら、クロエルフダイの卵を食わせてやったじゃないか」


「……ああ、思い出したぜ。偽物の豆を食わせやがった奴だった!あの時はよくも騙したなっ」


 ネベルはそっと、エクリプスの柄に手を伸ばす。


「いや、そ、そんなつもりは…………。ま、まあともかく。あの時は〈サキエル〉を救ってくれてありがとうよ。またここに訪れたって事は、例の報酬を受け取りに来たんだろう。ついてこいよ。使長の元に案内するよ」


「フン……」


 そしてネベル達は小太りの男の後をついて行く事にした。



 男は、今はもう浜辺でエビを焼くことは無いのだという。エビやタイなどの美味しいBBQよりも、住人たちはサプリメントのような実用性と能率の良いものを好むようになったのだそうだ。


 また、道すがらコロニーの住人がミュートリアンについて噂しているのを聞いた。


「どうやらこの辺りでもクローン兵士による侵略行為が行われているようですね」


「また洗脳とかして、仲間同士で戦わせているのかな」


「それはどうか分かりませんが、同じような事が起きているのでしょう」



 その後、ネベル達は海を見渡せる大きな窓のある使長室に案内された。そこは改装されたコロニーの建物の上層階に位置していた。


「うわぁー! スゴイ高いよっ? 昨日までいた白絹の森まで見えるんじゃないかなぁ」


「フ、やっぱりお子ちゃまね。 ん? ねえねえ、アレ見てよネベル!きっとクジラの潮吹きだよ!」


「やれやれ……」


 数分後、〈サキエル〉の使長がネベル達の待つ部屋に入ってきた。

 褐色の肌の老人。服装こそ違えど以前会った使長と同一人物のようだ。


「おおっ、ネベル様。ずっとお待ちしておりました。あの時、私共が受けたご恩をお返しする用意は出来ております」


「ああ、それは良かった」


「では早速ですが……」


「その前に! まずは聞かせてくれ。このコロニーに何があったんだ?この変わり様はどうしたんだ」


 すると、使長は質問に答えた。


「はい。あの事件から私たちは学びました。このままではまたいずれ、同じような悲劇が繰り返されるのではと。そして自分達だけでも外界のモンスターに対抗できるような、コロニーの防衛態勢を整えてきたのです」


「フン……随分と殊勝な心がけだな」


「それも、あなたがこの〈サキエル〉を救ってくださったおかげですよ」


 するとキャンディがこう言った。


「でも、失礼ですが、ネベルさんからは〈サキエル〉はレリックなどの科学技術には疎い原始的なコロニーだと聞いていました。ですが、この建物や外の街並みを見る限り、〈ダイバーシティ〉と同じかそれ以上のテクノロジーを持っている風に感じますです」


「それも、私たちが悲劇を繰り返さぬよう努力してきた結果です」


「たった2年で?」


「はいッ!」


 すると〈サキエル〉の使長は部屋の外に待機していた召使いを呼ぶと、彼女から銀色のアタッシュケースを受け取った。

 ネベルがそのアタッシュケースを開くと、中には緑色に光輝くエナジー結晶1000個が等間隔で並べられていた。


「ワオッ」


「すげぇ!!! こんなにたくさんのエナジー見た事ないぜ」


「兄さん!僕たち大金持ちですよ!」


 ダイバー達はそれを見て狂喜乱舞した。


「どうぞお収めください。私たちの気持ちです」


 これだけの量があれば、どんなに激しい戦闘があってもエナジーが無くなる事は無い。


 ただ、ネベル達が欲しいのはエナジーだけでは無いのだ。


「ありがとう。このエナジーは助かったぜ。けど他にも食料や物資も分けてくれないか。新鮮な魚とかさ。あと、もしあればアイツらの分のエナジーライフルなんかもあるといいんだ」


 ネベルはバーンズ兄弟を指差しながら使長にそう言った。ダメ元での頼み事だったが、ネベルの願いを使長は快く受け入れた。


「ええ、もちろんですとも!」


「本当か」


「ですが一つ、食料に関してですが……。もう〈サキエル〉の住人は新鮮な魚などを食べていないので、魚介の類は自分で釣っていただく事になりますよ」


「ああ、そうだったな。だったらこのコロニーの名物は何になったんだ?」


「それは食事に時間をかける必要のない‘supplement‘’ですかね」


 それを聞いたピクシーは昔食べたカプセル食の味を思いだし途端に気分が悪くなっていった。

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