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第45話 クローンの襲撃

 デルンとロンドは目を覚ますと、ふたたび目の前の犬人族(ウェアドッグ)の存在に驚いた。

 しかしディップは、ミカエラに危険がない事を保障した。


「大丈夫だ。彼女の事は信じてもいい」


「兄さんがそう言うなら」


 その後、犬人族(ウェアドッグ)の薬師ミカエラは、ディップ達に温かい食事を振舞った。

 調理には錬金術用の炉が使用された。

 また食材のほとんどは、森で採れた薬草やキノコなど自然の恵みを利用したものだった。


 ディップ達にとってどれも初めて食べるものばかりだったが、苦味も無く、みんな美味しいと言って食べた。


「あなた達、こんなものはどうです?」


「お、酒か! いいねぇ~」


「これも森で採れたエンジェリンゴで作った物よ」


 ミカエラは、木のコップにアルコールを含んだ黄金のジュースを注いだ。


「僕は遠慮します。魔界の酒ってあんまり好きじゃなくて……」


「デルンは食わず嫌いだからなぁ。(ごくごく)くぅーっ 美味い!」


 彼女のおかげで、三人は充分に食事を満喫できた。


「みんな、もうお腹も膨れて元気も出たようね」


「ああ、この通り。腹ァいっぱいだぜ! すっかり世話になったな」


「ミカエラさぁん。ご馳走様でした!」


 美味しい食事を振る舞われた事で、ダイバー達の中からミカエラに対しての敵対心はほとんど無くなっていた。

 だがその後、ふとミカエラの表情に影が差したかと思うと、彼女はいきなり語気を強めてこう言ったのだ。


「そう。なら、早くこの森から出ていきなさい! さあ、すぐにッ」


「えっ!? 急にどうしたんですか???」


 ディップ達は、ミカエラの急な態度の変化に疑問を覚えた。

 彼女はミュートリアンだが、悪人でない事はすでに分かっていたからなおさらにだ。


「ミカエラさん。どうして急に突き放すような事を言うんですか。確かに最初、僕達はあなたに失礼な態度を取りましたが、それが気に障りましたか?」


「いいえ、違うわ。そもそもこの白絹の森は神聖な場所で、半獣族の者以外は入ってはいけないのよ」


「そうだったんですか?」


「ええ。普段森には結界が貼られていて普通なら外から賊が入れないのだけど、あなた達は旧文明の飛行船に乗って、空を飛ぶというあり得ない方法をとって侵入してきたようですね?」


「は…はい、でも途中で何者かに撃墜されてしまったんです」


「そう。とにかく、今この森ではとても厄介な事が起きていて危険なのです。だから、巻き込まれない内に早くここからお逃げなさい」


 ミカエラはディップ達の身を案じ、丁重に森から出ていく事をすすめたのだった。


 だが、ディップ達にはそうもいかない理由があった。


「せっかく教えてくれて悪いが、まずは仲間と合流しないといけないんだ。望ちゃん達が心配だぜ」


 ディップがそう言うと、ミカエラは申し訳なそうにうつむきながらこう答えた。


「残念ですが、すでに手遅れかと。人間の力では数十人の半獣族相手には為す術もないでしょう。あなた達くらいは助かるように、早く森の外へ向かってください」


 だがそれを聞くと、ロンドは快活にこう答えた。


「アハハ、それなら大丈夫だよ」


「だ、大丈夫? おそらく仲間が死んでしまったというのに、何が大丈夫なんですか?」


「だって、向こうにはネベルさんがいるからね。ネベルさんはドラゴンだって倒しちゃうんだ。ミュートリアンが何人いたって負けるはずがないやい」


「なんと……!」


 ミカエラはそれを聞くと、とても驚いているようだった。


 ディップもロンドの言葉に頷く。


「まあな。俺には及ばないが、戦闘に関しては任せていい奴だ。 それより教えてくれ。望ちゃんたちのいる猫人族(ケットシー)の里ってのはどこにあるんだ。助けに行かなくちゃ」


「それは……」


「あと、この森で起きてる厄介事ってのも気になりますよね。あ、こちらは差し支えなければでいいので」



 だがその時、家の外から何かが落ちて来たような物凄い轟音が聞こえて来たのだ。

 彼らが急いで外に出ると、そこには二人組の少女が立っていた。


 二人は旧文明でいうチャイナ服のようなデザインの高性能アクションスーツを身に着けていた。

 チャイナ服から伸びるいくつものケーブルは、彼女たちの体内に直接繋がっているようだった。


「お前ら、何者だ!」


 ディップがそう尋ねると、まず白いロングタイプのスーツを着た少女がその場でくるくると回りながらこう名乗りを上げた。


「それってワタシの事? ふふん、ワタシはマキナデーすっ」


 続いて黒を基調としてへそ出しタイプのスーツを着た少女が、またもくるくると回りながらこう名乗りを上げた。


「それってアタシの事? へへーん、アタシはプーパなのダ!!!」


 二人はビシッとポーズを決め隣に並ぶと、改めてこう言った。


「ワタシたちは、熾天使会議(セラフィニオム)三大天使長のお一人、斑目マダム様のクローン体だ」


「やいやい、お兄さん達! 大人しくアタシたちに…………」


「「神の雫を渡しなさい!!!」」

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