第37話 旧文明のダイバー達
ここは誰も知らない場所。どこにも存在しない空間。
暗闇の中、ぽつんと三つの棺桶が浮かび上がった。
それぞれの棺桶の中身は、たっぷりの人工羊水と人間のミイラが一体ずつ。
「ようこそ。熾天使会議へ」
棺桶の一つから声が聞こえた。深みのある渋い男性の声だ。
ここに集まったのは、ポストアポカリプス後に一定の繁栄を続けた三大都市〈ラファエル〉〈ミカエル〉〈ガブリエル〉の代表たちだ。
「はあ゛あ゛--。せっかく気持ちよくコールドスリープしてたっていうのにねえ? 一体なんの用だってんだい」
「まあ、そうツンケンなさるな。アレックスさんも大事な用があって儂らを呼んだのだろう。クフフフ」
「当たり前だよ! あんた、くだらない用だったら許さないからね」
続いて聞こえて来たのは、落ち着いた老人と艶のある熟女の合成ボイスだった。
彼らは全員、サイバーエイジに墓の塔で暮らしていた生き残りだった。
「それで? どうしてアタシらを呼びだしたのさっ」
「とても良い報せがあります。ついに神の雫が見つかりました」
アレックスと呼ばれた男がそう声を発すると、他の二人は驚きと感嘆のため息をもらした。
「それは、本当なのかい?!」
「はい。大聖堂の高性能管理演算機でもアーティファクトの起動を確認しましたから。あれさえ手に入れられれば、我らの宿願は叶ったも同然です」
「おおっ ついに世界は救われるのですか」
「ふふふ、いいねえ。こんな毎日コールドスリープの生活にもオサラバだよ。またあの楽園に戻れるんだ」
そのような音声が流れた。天使たちの談義は続く。
「アレックスさんや。それで肝心のブツの在りかはどこにあるんだい」
「東大陸の辺境です。既に配下を回収に向かわせていますよ」
「はあ゛あ゛ーー? 冗談じゃない、手柄を全部取られてたまるかってんだ。アタシのも行かせるからね」
「箇条戦力なので不要、と言いたいですが……我らは平等。よってあなたを止める権利は私にはありませんね」
「儂は遠慮しておくぞ。今回は二人にまかせる。クフフ」
老人は不気味に笑った。
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