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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
生き狂いのバルガゼウス
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第27話 ネベルの力

 戦場から離れた望は、戦いの邪魔にならない場所を探しながら仲間たちの救助を行った。


 怪我をしたダイバー達を安全な場所に移動させると、望はネベルに飲ませて空になったエリクサーのガラス瓶を取りだし、蓋の裏にわずかな残った水滴を一人ずつに舐めさせた。


「ペロペロ……んっこれは、美味しいぃ!? ……ハッ、体が動く?!」


「良かった! 皆さん気が付いたんですね」


 エリクサーは本来ほんの僅かでも効果を発揮する神薬である。重傷で倒れていたダイバー達は、全員が動けるまでに回復した。


「の、望が助けてくれたのですか? ありがとうです!」


「ううん、私は何も……」


 望は遠慮がちにそう答えた。


 するとエリクサーの力で意識を取り戻したディップは、まだふらつく足取りで望に近づいてきてこう尋ねた。


「バルガゼウスはどうなったんだ?! もう、どこかに去ったのか」


 それを聞くと望は言った。


「まだ戦ってます。ネベル君は私たちを逃がして今も一人で戦っているんです」



 その後、移動したダイバー達はネベルの戦いを見守っていた。


 バルガゼウスの槍爪、黄金の鱗、そしてネベルの大型刀剣エクリプスの刃とが短時間で何度も何度も火花を散らしながらぶつかり合う。

 そして超スピードの攻防の後には互いに相手の次の動向を見定めようとして、じりじりと間合いを測るような立ち回りを行った。


「不可視の野郎の動きはどうなってるんだ? まるで次の攻撃が来る場所をあらかじめ知ってるみたいに躱しやがる」


「それにとんでもない速さの戦闘ですよ。僕たちとはレベルが違ったんだ」


 バルガゼウスとの戦闘が始まってから、ネベルは攻撃を一度も受けていなかった。全てを紙一重で躱し、即座にカウンターに繋げていたのだ。


「えっへん! ネベルは強いでしょー」


「チッ ああ、流石に認めてやるよ。 だが、おかしくないか?」


「ん? なにが?」


「いくら奴の戦闘センスが高いといっても、それだけであんな化け物の、しかも初めて戦う相手の攻撃をあそこまで見切れるなんて不可能だ。ピクシー、奴にはなにか仕掛けがあるのか?」


 ピクシーは少し考えこんでいたが、やがて何か思い当たる事が見つかると彼にこう言った。


「あ~、なんかさ、ネベルは昔から避けたりするの得意だったりするかも。たしかネベルは勘だっていってたよ」


「は? ただの勘だとぉ」


「うん、そうだよ! 私がネベルと森で初めて会った時も、わたしの仕掛けた罠を全部よけちゃったんだから!」


 ピクシーはその直後、自分の失言に気づいて咄嗟にその小さな口を覆い隠した。


「いけねっ 罠の事は秘密にしてたんだった! いーい?ネベルには言っちゃダメだからね」


「はぁ………」


 ディップは訳も分からず気の抜けた返事を返した。


 しかしピクシーの言う事が本当なら、ネベルは直感を頼りにあのバルガゼウスと渡り合っているということだ。まあそんな事はあり得ないだろうから結局は奴の戦闘センスの賜物なのだとディップは思った。


 ―もしかして……透明になるとかじゃなく、モンスターの攻撃が当たらないから不可視なのか?―



 ダイバー達からは、ネベルがたった一人でもバルガゼウスと対等以上に渡り合えているように見えた。

 攻撃のヒット数に関しては、ネベルの方が断然多いのだ。


「直感とかはよく分からないケド、とにかくすごいよぉ! これならワンチャン、バルガゼウスにも勝てるんじゃない?!」


「うん、きっとネベル君なら大丈夫だと思う」


 改めてネベルの戦闘力を目の当たりにし、皆が再び勝利の希望を抱きはじめた。


 だが一方、戦闘開始直後からスナイパーライフルを構えつつ戦いの様子を観察していたマックは、ネベルの体に限界が近づいている事を悟っていた。


 そして突然みんなの前でこう言ったのだ。


「ノー!ダメだ。このままだとやられてしまう」


 マックの言葉にダイバー達は動揺した。ロンドが尋ねる。


「ええっ ど、どうして!? ネベルさんは今もあんなにスゴイ戦いをしているじゃないですか」


「分からないかい? よく彼の足元を見てみるんだ」


 彼らは言われた通りに、ネベルの動きを注意深く観察した。するとたまにネベルの足がふらついている事に気が付いた。

 それは長引いた激しい戦闘のせいで、筋肉の疲労が溜まった結果だった。


 バルガゼウスの攻撃を躱しつつ、隙をついてダメージを与え続ける戦法は確かに有効だった。

 しかし敵の攻撃が鋭いだけに、その分アクロバティックな回避運動を多く要求されてしまい、体力の消費が予想以上に大きかったのだ。


「確かにお前の言う通りだ。不可視の野郎は、あのままじゃ(じき)にくたばっちまうな」


「そんなっ、嘘ですよね?? ディップさん、どうにかなりませんか」


「俺達じゃどうにもならないぜ。奴に俺達の攻撃は通じないんだからな」


 ディップは熱に完全耐性のあるドラゴンに、エナジーライフルは効果が無いという事をこれまでの戦いから把握していたのだ。


「だが妙だな。不可視は急所を狙う気が無いみたいだ。攻撃は一応当たっているが、あんないかにも防御が硬そうな腕なんかをいくら斬りつけても意味がない事ぐらい、アイツなら分かっているはずだろうに……。オイ、何やってんだよ」


 ディップの推察どおり、ネベルの行動パターンは戦い始めた時から徐々に変化していた。

 槍爪をギリギリでかわしながら首や脇などの急所を積極的に狙っていくスタイルから、確実性の高いヒットアンドアウェイ戦法へと切り替わっていたのだ。


「あれじゃダメージは無いだろ。うーん、まるで時間稼ぎのような………………何かを狙っているのか?」


 するとディップのその言葉で、キャンディはネベルの思惑に気がついた。


「分かりましたです!!! フェイタルブランドです!!!」


 キャンディは大きな声でそう叫んだ。いきなり大声を出されたため、すぐ側にいたデルンは驚いてひっくり返ってしまっていた。

 彼女は声を裏返らせ、やや興奮しながら次のように続けた。


「ネベルさんはきっと、エクリプスちゃんの排熱処理が完了するまでの時間稼ぎをしていると思いますです! エクリプスちゃんはスゴイんですよ!どれだけあのモンスターの装甲が硬くても、覚醒時の威力は生物に耐えられるような物ではありません。 ……一瞬しか使えない事が欠点ですが」


「なに、ただの爆発する大剣じゃなかったのか? キャンディは剣のメンテナンスをしたんだろ? 不可視は一体、どんな改造をしていたんだ」


 ディップがそう聞くと、キャンディはニヤニヤと笑みを浮かべた。そして、


「うへへぇ………ぜんぜん、分かりませんでした!」


 彼女は自信をもってそう答えた。


「全くもって未知の技術です。射撃や変形機構は私にも理解できましたが、要となるフェイタルブランドの発動システムに至っては全く分かりませんでした! うひよひょ、きっとダイバーがまだ誰も見つけていない、レリックのなんかスゴイ技術が使われてますです! ネベルさんなら分かるのかなぁ。えへへ、えっへ、えへ……」



 エクリプスに使われていたのは、uhO(アホ―)というエネルギー技術だった。

 ネベルは墓の塔(セメタリータワー)の攻略時に核となる物質uhOを見つけ、エクリプスに組み込んだのだ。


「そうだよ! ネベルが本当に全力で戦ってたら、今頃あんなドラゴンなんかとっくに倒してるんだもんね!」


 ピクシーはまるで自分の事かのように得意気だ。


 しかし逆にロンドは不安そうにこう言った。


「でもさ……あんな速いのに上手く当てられるのかなぁ? だってそのフェイタルブランドってさ、一発しか打てないんだろ?」


 バルガゼウスの素早さは、ネベルが軌跡を残像と見間ちがえる程だ。

 今もダイバー達の少し離れたところでは、コンマ一秒の一挙手一投足の選択が命取りになるような高速戦闘が繰り広げられていた。


 ロンドの言う通り、とても大技を当てる隙があるとは考えにくい状況だった。


「あれじゃ、いくらネベルさんでも無理ですって。バルガゼウスのあのスピードじゃ正面から攻撃しても当たらないだろうし、フェイタルブランドをチャージする時間すらあるか分からないですよ」


「私たちで何とか出来ないかな。一瞬でもいい。ネベル君が奥義を撃つ隙さえ作れれば…………」


 すると、マックはこう言った。


「ヘイ、みんな聞いてくれ。オレならネベルを助けるその隙を、作れるかもしれない」

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