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DareDevil Diver 世界は再起動する  作者: カガリ〇
世界をはじめるための戦争(後編)
105/120

第105話 逃げるが勝ち

 大仕事を任された望とロンドそしてピクシーは、張り切りながら機械室へと向かった。


 だが肝心の賊は、誰の目にも気づかれずに坑道砦門に忍び込んだほどの凄腕だった。なので彼らはワクワクしながらも、探索の慎重さも欠かさなかった。



 機械室があるのは地下だ。機械室には、大型催眠妨害装置もある。

 ちなみに作戦班本部は砦の2階だ。


 3人は機械室に続く階段を下っていた。


「おれたちもようやく活躍できるんだ! 頑張るぞぉ!」


「せっかく新しい武器も貰ったんだもんね。それに、ネベル君たちにもちょっとは自慢したいし」


「うん! …あれ? 誰かこっちに近付いてくる!」


 すぐにロンドたちはレーザーブレードを抜いて警戒する。だが、それが技術者のハリス・シャムだと分かると、彼を落ち着かせて話を聞くことにした。


「どうしたんですか? そんなに血相を変えて」


「助けてくれ! 俺以外の奴等が、みんな操られてしまったようなんだ!」


「ええッ、つまり洗脳されたって事?!」


 望たちは急いで機械室へと向かった。

 そこにはドワーフの技師が数人いたが、ハリスの言うように彼らの様子はどこか不自然だった。ふらりふらりと揺れながら歩くその姿には、自意識のような物をまるで感じられなかったのだ。


「どうやら催眠妨害装置が壊れちまったってな。やばいねー」


「侵入者がやったんだよ!絶対そうだ!」


「し、侵入者だって?! お前さん、それは本当か」


「うん。それでおれたち、様子を見に来たんだ」


「そうだったのか。それは助かったな」


 すると、何やら納得のいかない様子のピクシーがこう言った。


「ねえねえ、少し変じゃない~」


「ピクシー? 何がおかしいの」


「だってさー。そもそも催眠装置は持ち運べないから、この戦いで使ってくる可能性は超超低いって事だったじゃん」


「「そうだったの!?」」


 望とロンドは、まさかの新事実に驚いた。


「ネベルが言ってたもん。合ってるよね、おじいちゃん」


 するとハリス・シャムは頷いた。


「ああ、その通りだよ」


「マジかよ。じゃあ本当に厄介払いされてたんだ。ガーン」


「けどね、彼らはふつうの洗脳状態とは少し違うようなんだってな」


「えっ それって、どういうことぉ?」


 ハリスによれば、これまでクローンによって洗脳されたミュートリアン達は、いずれも例外なく攻撃性を発揮するか、クローンに命令された何らかの作業に従事するのだという。


 しかし目の前にいるドワーフの技師たちは、そのいずれでもなく、ただただぼんやりしているだけに見えた。


「えっと、それじゃあ洗脳されてはいないって事ですか?」


「いや、そうではない。おそらく彼らに影響を与えた催眠電波が異なるのだろう。症状の変化もそのせいかもしれない」


 他の洗脳されたミュートリアンと様子が違っておかしい事も気になるが、一番不可解だったのはそうではない。

 問題は誰が、いつ、どうやって、何のために彼らを洗脳したかという事だ。洗脳した彼らを、そのままほったらかしにしている点も謎だった。


 しかし原因を突き詰めるより先に、望たちはまずドワーフ達を洗脳から解放してあげようと考えた。


「電波が違くてもさぁ。このレーザーブレードを使えば洗脳を解くことが出来るんだよね!」


「うしゃしゃ! そうだ。俺の設計に間違いがなければな。 頼めるか?」


「もちろんさ! よぉーし」



 望とロンドは同時にレーザーブレードのスイッチを入れた。熱を帯びた黄色の刀身が飛び出す。

 この電熱剣はハリスの作った特別製で、催眠電波の波動を検知し、特殊な斬撃で破壊することが出来るのだ。


 ~――ピコーン~ ピコーン~ 


 催眠電波の位置を探るソナーのような電磁波が放出された。

 レーザーブレードの持ち手部分からはホロサイトが出現し、現在の探索状況を二人に知らせた。


 やがて二人のレーザーブレードは、同じ場所でひときわ強い反応を示した。催眠妨害装置のすぐ近くだった。


「ここだね」


 二人は催眠電波が存在していると思われる空間めがけて、レーザーブレードを一閃した。

 すると、ホロサイトから催眠電波の反応は消失した。


「ロンド君、やったね。これでみんな解放されたはずだよ」


「早く戻って確かめようよ」


 だがその直後、二人はハリスの悲痛な叫びを聞いた。



「誰だお前っ ぐぁ…!」


「ハリスさぁん?!?」


 ハリスは腹から血を流して倒れていた。そしてすぐ傍には、赤いレーザーブレードを持った黒装束が立っていた。


「クローン兵! そうか、お前が侵入者だなぁ!」


 頭に血の昇ったロンドは特別製レーザーブレードを構え、黒装束の侵入者にすぐにでも飛び掛かろうとしていた。

 だがそれよりも先に、黒装束は望に向かっていきなり斬りかかって来たのだ。


「うわッ!」


 咄嗟に自分のレーザーブレードで防御した望。すると、黒装束が彼女にこう言ってきた。


「お前が持っているのは知っている。さっさと神の雫を渡せ」


「ッ!? それが狙いなのっ?  っう゛う゛」


 ()()()という言葉に気を取られた瞬間、望は腹部に強烈な拳打をもらってしまった。体勢が崩れた望に対し、黒装束は首筋めがけて剣を振り下ろす。


「望さんっ 危なぁい!」


 ―ガキィン


 ロンドが斬撃の途中で割って入ったことで、望はなんとか助かった。そのまま望はロンドに押し出され、ロンドと黒装束はレーザーブレードによる激しいバトルを始めた。


 黄色と赤のレーザー光が、凄まじい速度でぶつかり合う。


「くっ コイツ強いぞ!」


「……」


「くそぉッ」


 最初はどうにか打ち合えていたロンドも、黒装束のどんどん早くなる攻撃速度についていけなくなっているようだった。


 連合軍の最深部まで単騎で侵入してしまうような奴だ。きっと、クローンの中でもかなり高い階級なのだ。


「ロ、ロンド君!大丈夫?」


「う、うん。平気だよこのくらい……」


 ロンドの身体は少しずつ焼き切られ始めていた。彼は明らかに無理をしている。


 だがそれでも黒装束は、二人を追いつめるようにじりじりと近づいてくる。


「どうしよー!ネベルは、今いないしぃ~!!!」


 いつも楽観的なピクシーでさえも、このように慌てるほどにヤバい状況なのだ。



 絶体絶命。このままでは殺される!


 だがその時、望はふとネベルの言葉を思い出した。


(「……もし危ないと思ったら、すぐに逃げるんだ!」)


 ―そうだ。私はまだ何も終わらせていない。絶対に生き残らなくちゃ!―


 すると望はロンドの手を掴み、一目散に駆けだした。


「早く!逃げるよ!」


「う、うん!」


 だが、二人が逃げ出すのを見ると、黒装束はレーザーライフルに持ち替えこっちに向かって容赦なく撃ってきた。


 ロンドがレーザー弾を弾いたりして攻撃をしのぎ、二人はなんとか走り続ける。


「はぁッ、はぁ…ッ」


 機械室を出てすぐ目の前の扉を開くと、そこには川があった。

 というのも、坑道砦門のすぐ下の空間は、ケイブロングヴェルツの全ての旧坑道につながる水路の出口だったのだ。


「……行くしかないよ!」


「ほ、ほんとにぃ?」


 水路は真っ暗でとても怖かったが、すぐ後ろからは黒装束が追ってきている。

 望は生き残るために、勇気を振り絞った。

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