第七話
敵兵がいなくなり、生き残った仲間たちが俺の方を見ると同時に「ありがとうございます!」と深々と頭を下げた。
「あ、あぁ…いいから頭を上げてくれ。」
大勢からいきなり言われて戸惑いながら返事をした。
すると、最初に俺に気付いた指揮官らしき兵士が前に出てきた。
「本当に助かりました。ありがとうございます。私はこの兵士たちを率いている、隊長のゲイツ・ガルムです。あなたの名前を教えていただけますか?」
「あぁ、俺は羽間雄一だ。アリシアに言われて来たんだが、敵はあれで全部なのか?」
「いや、恐らくまたあのワープゲートからこちらに来るでしょう。だからその前に敵の城を打たなくてはなりません。というか、さっきからなぜアリシア様と言わないのですか!せめて呼び捨てにするようなまねはっ――」
『いいのです、ゲイツ。救世主の方に名を呼んでもらえるだけでも嬉しく思うのですから。』
ゲイツと名乗る人が俺に怒鳴り始めた所で、突然どこからかアリシアの声が聞こえた。
「アリシア様っ!?……わかりました。不躾なことを言ってしまい申し訳ありません。」
ゲイツは反射的にそう反応すると腰に提げられているバッグから水晶を取り出してその水晶玉に向かって話し始めた。
その水晶玉の中にはアリシアの肩から上の部分が映し出されていた。
『いいのですよ。あなたがわたくしのために言ってくれていることはわかっていますから。』
「あの、その話している水晶玉みたいなのは何だ?」
俺はつい気になってしまい、口を挟むとゲイツは苦々しい顔になったが、アリシアの声は特に気にしたようではなく話してくれた。
『雄一様、失礼しました。これは水晶玉を通して、お互いの視覚や聴覚をつなげる魔法を施しているのです。』
「すごいな、それ!今度俺にも教えてくれ。」
一度魔法を使ってみたいと思っていたので、それに関してかなり興味を持った。
『はい、喜んで!』
水晶玉の中からアリシアの嬉しそうな声が聞こえた。その直後、殺気のようなものを感じ周りを見てみると、ゲイツ・ガルムが嫉妬心丸出しの顔でこちらを見ていた。
『ゲイツ、無事帰ってきてくださいね。健闘を祈っていますよ。』
「はっ、はい!必ず戻ってきます!!」
その受け答えだけで、ゲイツはとても満たされたような顔をしていた。それを見るだけで、ゲイツの気持ちに気付きそうなものなのに、アリシアは気づいていない様子だった。いや、気づいていて気づかないふりでもしてるのかもしれないが。
「アリシアはゲイツの気持ちには気づいてないのか?」
「いえ、気づいていないとは思いますが、アリシア様は何を考えているのかわからないところがありますので何とも言えません。」
他の兵士に聞いてみると、小声で意外な答えが返ってきた。
「そうなのか?俺には感情を隠してるって感じじゃなかったんだけど。」
するとその兵士は、何か思い至ったような顔をした。
「それはおそらく、あなたが特別なのだと思いますよ。」
そう言った時に、その兵士が少し含み笑いをしていた。
「?」
その特別の意味するところがわからなかったが、特に気にしなかった。しかし、含み笑いに対する疑念はぬぐえないままだった。
――――――――――
(これは使える。)
薄暗い部屋で黒いローブを被った謎の男は、水晶の中を覗きながらそんなことを思いながらほくそ笑んでいた。
「くくくっ、くふふふっ。これで舞台がより面白くなるでしょう。楽しみですねぇ。さぁて皆さんはどう踊ってくれるのでしょうねぇ?」
謎の男は、どことも知れないような部屋でそう呟いたのだった。




