第六話
アリシアに目指す場所を聞いた俺は、今どこを走っているかもわからないまま走り続けていた。
(そういえば、別れ際のアリシアの様子は少しおかしかったような気がするな。まっ、今考えても仕方ないか。とりあえずあのワープゲート?に向かって進んでいくか。ってかいくら走っても体が疲れることが無いんだが。これが神様からの力ってか?有難いけどなんか微妙だな。)
しばらく走り続けると、草原から森の入り口へと辿り着いた。ワープゲートは森の遥か先に見えているため森を突っ切る方が速いと思い森に入った。
森の中には生き物の気配はするものの特に襲ってくるようなこともないため、無視して走り続けた。足場が悪く走りにくいものの、なぜかその場その場での走り方が直感的に理解できるため特に時間をかけることなく森を抜けることができた。
俺が森を抜けてワープゲートへ向けて走っていると、小高い丘の辺りで交戦中の部隊があった。よく見てみると片方は赤い鎧を、もう片方は青い鎧を身につけており鎧のデザインはほとんど同じだが胸の辺りにある徽章も赤と青で違うように見えた。
俺がその戦いを少し離れたところから眺めていると、赤い鎧の指揮官らしき人が俺の存在に気付き3人ほどの兵をこちらへ送ってきた。
こちらへ駆け寄ってきた赤い兵の1人が俺に問いかけてきた。
「見たことのない服装ですが、あなたは誰ですか?」
「俺は羽間雄一だ。アリシアにワープゲートを目指すように言われてきたんだが、お前はアルミダ星の兵士なのか?」
すると、その兵士は戸惑いながら答えた。
「え、ええ、そうですが、なぜアリシア様が?…ですが、戦力は一人でも多い方が助かります。あの青い鎧が敵兵です。」
聞くと、そこにはアルミダ星の兵士500人に対し、敵兵が10倍の5000人ほどいたらしく、どちらの兵もすでに何割か死に絶えているようだった。
「そうか、わかった。なんとかするよ。」
そういって俺は、ギール・アルガーである球体を取り出し、それを透明に近い色をした二本の鎌が鎖で繋がれたものに変形させた。
「そっ、それはっ伝説の武器じゃないですか!?そうか、あなたはもしかしてアリシア様がお呼びになった救世主ということですか?」
兵士は驚きのあまり腰を抜かしながらも、聞いてきた。
「まあそういうことらしいけど、俺もよくわからん。ただ、この戦いは終わらせるつもりだよ。」
少しかっこつけたことを言ってみたが、気恥ずかしくなったのでそのまま戦場へと走っていった。
残っている仲間の兵士を少しでも多く助けるために俺は敵兵を倒すことだけを考えて戦った。防戦一方である状況のところへ駆けつけ、敵兵の鎧の隙間を狙って切り付けてはまた他のところへと駆けていった。
「がっ」
「ぐはっ」
「何だ!?何が起きてる!?…くっ、かはっ」
敵兵の死角から攻撃してまた移動して、を繰り返していくことで、ほとんどの敵から気づかれることなく倒していくことができた。
かなり不意打ち気味なこともしてしまったが、今は味方の命が優先だと思い特に考えないようにした。
最初は戦えるか不安だった。なにしろ戦争なんて未経験なのだから。だが、なぜか焦りも恐れもなく、逆に少し楽しかった。こう思うのはおかしなことだが、戦争のない世界で無意味に生きてきたころと比べると生きがいすら感じていた。
この世界に来るときに向こうでの常識も塗り替えられたのかとも感じたが、都合がいいので特に気にすることなく戦い続けた。
俺たちは6時間ほどかけて、敵兵を全滅させることができた。
俺は、昂っていた心を落ち着かせてから仲間の数を確認した。数は350ほどになっていた。普通に考えると奇跡と思えるような逆転ではあった。だが、頭の片隅で救えなかったことへの悲しみや怒りが残り、自分を責める者がいた。俺はその感情から逃げるように、(まだ戦いは終わってない。350人も救えたんだ。上出来じゃないか!)と思うようにした。




