第五十二話
あちらの世界へ行く手立てを見つけてから半年、雄一様が帰られてから1年が過ぎようとしていました。
本来であれば今すぐにでもあちらへ向かいたいと思っておりましたが、まだ民たちへの償いが完了していなかったこともあり、より一層施政に取り組むことになりました。
そのおかげもあり、民たちの不満の声もほとんど聞こえなくなり、より良い星へと変えることもできました。
今、わたくしはウリルとともに雄一様を召喚した丘の上へとやってきていました。
研究の結果としてわかったことの1つとして、この場所が世界間の歪みが最も大きく時空間同士を繋げやすいと判明したからです。
雄一様をここで召喚したのはわたくしの勘に頼っていた部分もありましたが、良く見つけることができたと自画自賛してしまいました。
「それで?この魔法陣にあたしたちの血をたらせばいいのよね?」
「はい。その血はわたくしたちが通るための道を形成してくれます。ただ、この方法もおそらく回数をこなすことはできないと思います。あちらの世界に行けても帰ってくることはできないと思っていただくことになります。それでもよろしいですか?」
「ええ、もちろんよ!ウルミダ星のことは弟に任せてきたし、両親もちゃんと説得してきたわ。未練が全くないとは言わないけど、それよりもあの人に会いたいって思いの方が強いからね。」
ウリルはそう言うと、満面の笑みをこちらに向けてきました。
本当に敵わないなぁと、改めて思わされましたが、わたくしだって負けていられません!
雄一様にお会いするためにここまでやってきたのですから!
わたくしももちろん両親に伝えました。反対されると思っていましたが、あっさりと許可をいただくことができたので拍子抜けでしたがよかったです。
アルミダ星のことも両親や姉、妹に任せることでもう大丈夫だとも思います。
元々、わたくしよりもあのお2人の方が王としての器はあったので心配する必要もありません。
無責任のようにも思いましたが、家族の皆さんが快く背中を押してくださったお陰で、わたくしも足を踏み出すことができました。
「これで準備が完了いたしました。それでは始めますね。」
「ええ、お願い。」
わたくしは描いた魔法陣にマジックグローブを装着した両手で触れました。
そこから、魔力を注ぐことで魔法陣を起動させることに成功しました。
すると、地面に光が降り注ぎ、そこに薄っすらと階段が降りてきていました。
わたくしはウリルと手を繋ぐと、一緒にその階段へと踏み出しました。
――――――――――
アリシア達が光の中に消えていくのを、陰から見つめる者が2人。
「くそっ!なぜアイツの下へ向かわれたのですか!?許せない許せない許せないユルセナイユルセナイユルセナイユルセナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ。」
まるでうわ言のようにそう言い続ける者がいたことはある1人を除いて知る者はいなかった。
「…ゲイツ様。どうなされるおつもりですか?」
「おお、イズンか。お前、アレの方法は理解できるか?」
「はい。今はまだおおまかではありますが、時間をいただければ再現は可能かと。」
「流石、魔導具技術随一であったイルミダ星の生き残りなだけあるな。」
「っ!?イルミダ星のことをご存じなのですか!?」
「そんなの当り前ではないか。義理とは言え弟のことだ。その程度のことは把握しているさ。」
「っ!!…ありがとうございます!!」
「ふっ、まあいい。それなら、できるだけ早くアレの再現をできるようにしてくれ。」
「はっ。仰せのままに。」
話を切り上げると、2人はその場から離れていった。




