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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第五十話

 アリシアが落ち着きを取り戻したころには日が傾いていて、夕方になっていた。

 会見が終わったのが昼過ぎだから、あれから結構時間が経っている。

 俺は自分の身体の質量が抜けていくような感覚を感じ始めていた。

 どうやら本当にもう元の世界に返されるみたいだ。

 

 「ああ、もう時間みたいだな。」

 

 俺がそう言うと、2人ともまた悲しそうな顔をした。

 

 「どうすることもできないのですか!?このままお別れなんて嫌です!!」

 「そうね。流石に早すぎるじゃない。あたしだって心の準備ができてないわよ。もう少しだけでもここにいることはできないの?」

 

 俺は2人の言葉に嬉しさと申し訳なさが混在した気持ちになった。

 でもこればかりはもう……

 「2人ともごめんな。これからのことは大変なことが多いと思うけど、頑張ってくれ!応援してるから!!ぐすっ。あれ?おかしいな。涙が、溢れて…くっ。……それと…2人とも、仲良くしてくれよ!!もし次に悪魔が来ても付け入る隙を与えないくらいにさ!」

 

 俺がその言葉を口にして微笑みを向けたときには身体が空気に溶けていくように、消失していった。

 

 ――――――――――

 

 気が付くと俺は最初に通った暗闇の中にいた。

 最初の時と違う点が1つあり、ある一箇所だけ光を放っていてそこに帰るように言われているようになっていることだ。

 

 「ああ、本当にあれでお別れなんだな。なんかあっけない別れだったな。……2人とも、元気でやってくれるといいんだけど。」

 

 俺は1人、そんなことを呟きながら元の世界への道を辿って帰るのだった。

 次第に、アリシアやウリル、他の人たちの顔も名前さえも記憶から薄れて消えていったが、それに気づくことさえもできないままに……

 

 ――――――――――

 

 雄一様は最期の言葉とともに光の粒子となって消えていってしまいました。

 

 「う、うぅぅ…雄一様あぁぁ!うわあああぁん!!」

 

 わたくしは我慢できずに思い切り泣いてしまいました。


 「ぐすっ。アリシア、みっともないでしょ。泣き止みなさいよ。スンッ」


 ウリルがわたくしを泣き止ませようと声をかけてきますが、ウリルも泣いているようで目元を拭ったり鼻を啜ったりしています。


 「ウリルだって泣いているじゃない!人のこと言えないわよ!うっ、ううぅ。」

 「アリシアほどじゃないわよ。あんた、号泣してるからね。」


 お互いに憎まれ口をたたき合いながらも、自然と抱きしめ合っていました。

 やっぱり、ウリルもわたくしと同じ気持ちのようです。

 (雄一様、待っていてください。いつか、必ずあなた様の下へ向かいます。絶対に!絶対に!!)

 わたくしはウリルと抱きしめ合いながらもそう強く気持ちを固めるのでした。


 ――――――――――


 相棒が元の世界に戻ることになった。

 まあ、オレも相棒の中にいるわけだから一緒に行くことになるのは当然だわな。

 だから別に寂しくもないんだが、あの2人は少し心配だな。

 ま、2人で支え合っていけば何とかなるか?

 頑張ってくれよなっ!

 よし、帰る時まで相棒とテキトーに話でもするか。どうせならからかってやるのもいいかもなっ!


 (……!?)


 あれ!?相棒と思念での繋がりが消えた!?

 どうなってやがる!?これじゃああの武器庫の時と同じじゃねぇか!!


 (おい!!相棒!!!返事しやがれっ!!!!)


 どれだけ声をかけても返事がない。

 やっぱり相棒にはもうオレの声が聞こえないのか。


 (なんだよ、これ。なんなんだよ!!?)


 オレのあまりの事態に混乱していると、別の声が聞こえてきた。


 『すまぬな、ギール・アルガーとやらよ。』

 (っ!?誰だ!?)

 『儂はゼウスじゃ。異世界の神、とでも言っておこうかの。』

 (…それで?異世界の神様とやらがオレに何の用だよっ?)


 オレが虚勢を張って強気に問いかけると、そのゼウスって野郎は申し訳なさそうな声音で話し始めてきた。


 『アルミダ星とウルミダ星、二つ星の戦いでは雄一が世話になった。本当に感謝しておるよ。』

 (ああ、そうかいっ。)

 『本当ならおぬしの願いも叶えてやりたい所じゃが、それは叶わぬのじゃ。許してくれ。』

 (あ?特に願いとかはねぇが…まさか、オレはこのまま相棒と会話することもできないってのか!?)

 『理解が速くて助かるぞ。』

 (ふざけんじゃねえぞ!!?それじゃあ、あの時に逆戻りじゃねぇか!!どうにかしやがれ!!!)


 オレがどれだけ声を荒げてもこいつはただただ申し訳なさそうな声で無情な現実だけを告げてきやがる。


 『どうにもならぬのじゃ。これも世界のためなのじゃから。……まあ、雄一の中から外を覗くことくらいはできるから、それで勘弁しておくれ。』

 (そんなんで納得できるわけねぇだろ!?おい!!!返事しやがれ!!!)


 その声はそれだけ告げると、もう声をかけてくることが無くなりやがった。


 (ふざ、ふざけんじゃ、ねぇよ。オレはまた、独りに、なるのかよ……)


 オレはどうしようもない現実を受け止めきれず、失意の念に沈んでいった。

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