第四十九話
会見後、俺たちはアリシアの部屋(俺が目覚めたアリシアの寝室の隣室)でお茶を飲みながら今後について話し合っていた。
「これから戦後処理や各地の政策改善など、忙しくなりますね。」
「そうねぇ。あたしのとこは政策については各街に任せているけど、アリシアは城の方でほとんど決議を取っているんでしょ?大変よね。」
「ええ、それでもその方が民の現状を理解できますから……これからも変えるつもりはありませんわ。」
「そう……ま、それはあたしの口出しすることじゃないわね。頑張りなさい。何か手伝えることがあるなら協力するから。」
「ありがとう。ウリル。」
そう言うと、アリシアはウリルを抱きしめた。
ウリルもそれを受け入れるようにアリシアの背中に手を回すと、抱きしめ返した。
俺はそれを眺めて、これで全てが解決したのかと胸をなでおろした。
「俺も、そろそろ、かな。」
「「え?」」
俺が呟くように言うと、聞き取れたのかアリシアとウリルが同時に聞き返してきた。
「ああ、たぶん俺はそろそろ元の世界に返されるかなって思ってな。」
「あなた何言ってるのよ。アリシアだってまだあなたを必要としているし、あ、あたしだって、その……」
ウリルは途中からごにょごにょと聞き取れないほどの大きさで話していてなんて言ったのかわからなかった。
それに続いてアリシアも話し出した。
「そうですよ!雄一様にはまだ、いえ、可能でしたらわたくしのそばにずっといてほしいと思っております!」
アリシアは恥ずかしげもなくそんなことを俺に言ってきて、逆に俺の方が恥ずかしくなってきたほどだ。
俺は、こんな自分が必要とされていることを嬉しく思って少し微笑んだ。
「そう言ってもらえて嬉しいよ。ありがとう。」
「それはこちらのセリフですよ。なので是非――」
「でも無理なんだ。ごめん。」
アリシアの言葉を遮って俺はそれを否定した。
「な、なん、で…どうして、ですか?」
アリシアはこれまでで初めて見るくらいに悲しそうな表情をしていて、涙も流していた。
ここまでくると、流石の俺もアリシアからの気持ちに気づいたが、それでもこれは覆すことはできないだろう。
だから、俺ははっきりと告げることにした。
「これは感覚的なものなんだけど、そろそろ俺をここに連れてきた奴が元の世界へと強制的に返そうとすると思うんだ。イズンと話した時に聞いたんだけど、アリシアが俺を召喚した召喚術は役目を果たしたら元の世界へと返されるって言ってたんだよ。それ以来、俺の中に今の感覚が芽生えたんだけど、たぶんこの感覚がなくても同じように元の世界へと返されるとは思うんだ。たぶんこれは、俺が…何度も…?……!?へ?何度も?…」
俺はアリシアとウリルに今の感覚を話している時に、何か取り返しのつかないことをしてしまったような感覚に捕らわれた。
それが何なのかと考えだして黙り込んでしまうと、2人が心配そうに声をかけてきた。
「あの、雄一様?大丈夫ですか?」
「ちょっと、あなた大丈夫なの?」
俺は2人の声を聞いて、ハッとすると、かぶりを振って微笑んだ。
「ああ、大丈夫だ。何でもないよ。まあ、さっき言ったようにそろそろ俺は元の世界に返される。これは確定的なものなんだと思う。だから、ここには残れない。ごめんな。」
「そうなのね。残念だけど、仕方ないわね。」
「はい……本当に残念です。ぐすっ。」
アリシアもウリルも非常に残念そうな顔をしていた。
アリシアは涙も流していて、どうしようもないこととはいえ申し訳ない気持ちになった。
それからは俺とウリルでアリシアが泣き止むまで背中をなでたりして宥めた。




