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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第四十話

 目を開けると、そこには剣先を額に当てられたままの姿勢で涙を流すイズンがいた。

 少し驚いたが、俺は剣を引いてイズンから離すと声をかけた。

 

 「イズン、どうしたんだ?」

 

 イズンはすぐには答えず、自身の気持ちを落ち着けるように軽く深呼吸を数回するとポツポツと話し始めた。

 

 「思い、出しました。……イルミダ星のことも、ガイツおじさんのことも。そして…私自身のことも。」

 「そうか。イズンも記憶を見たんだな。」

 確認するように言うと、イズンは静かに頷いた。

 どうやら、イズン自身も俺が見に行った記憶を見ることができたみたいだ。

 

 「じゃあ、それも踏まえてアリシア達にも話そうか。」

 「はい、わかりました。」

 

 イズンが素直に返事をしたので、アリシアやウリルに声をかけてこっちに来てもらった。

 

 「あの、雄一様。大丈夫なのですか?」

 「ああ、平気だよ。イズンの過去の一部を見たから、その話をしようと思ってな。」

 「そうなのね。今回はあの時よりも時間が掛かってたから心配してたのだけど、大丈夫そうで安心したわ。」

 

 そんな感じで軽く会話を続けながら、それぞれの椅子を用意してそこに座った。

 聞いてみると、30分くらいあのまま動かなかったようだ。

 デミルの記憶を見たときは5分だったのに比べると、かなり時間が掛かったようだ。

 そのことに俺が驚いていると、(脳に負担がかからないようにすると記憶を読み取るのに時間が掛かるからなっ。)と、ギール・アルガーに説明されて納得できた。

 確かに一気に人の記憶を読み込むのは脳への負担が酷そうだ。

 

 皆が座った所で、俺は見てきたことを説明した。

 「――と、いうことがあったんだ。」


 「そうなんですか。イルミダ星という星もわたくしたちの身近にあったのですね。信じがたいことですが……」

 「…ええ、そうね。ここまで助けてくれたあなたを疑うようなことはしたくないし。それに、あなたがこんなことで嘘を吐くとも思えないしね。」


 アリシアとウリルは、イルミダ星もイリア王女のことも覚えがないような反応を示しており、実在していたと聞いても信じがたいようだった。しかし、俺の発言だからという理由で信じてくれたようだ。

なんか、そうやって信じてもらえるのは嬉しいな。と、俺は1人思ってイズンの方を見ると、すごく複雑そうな顔をしていた。


 「イリア様が操られていた?……でも、確かにそう考える方が辻褄も合うような……いや、それだけでなく、その操っていた者が今回の戦争の黒幕!?私は何も知らなかったとはいえイリア様を恨んでいたのか!?そんな許されないことを!?助けられなかったどころか恨み続けたままもう会えないなんて…あんまりです。」


 小声で何かを言っているようで所々しか聞こえなかったが、自分を責めているような言い方をしているようだった。

 

 「イズン……」

 

 俺は何といえばいいのかわからず、ただ名前を呼ぶことしかできなかった。

 それが聞こえたのか、イズンはハッとすると、こちらに苦笑いを向けてきた。

 

 「……すみません。あまりに衝撃的なことだったので取り乱してしまいました。」

 「い、いや、それは大丈夫だけどさ。その、大丈夫か?」

 

 俺は結局なんて声をかけたらいいかわからず、ありきたりな問いしかできなかった。

 それにイズンは頷くと話し出した。

 

 「ええ、先程までは混乱しておりましたが、今は少し落ち着けています。……まあ、その黒幕の悪魔はもう貴殿によって討伐されている、というのは何とも複雑ではありますがね。私自身の手で倒せなかったのは悔やまれます。」

 

 そう言ってイズンは唇を嚙みしめた。

 確かに(かたき)を自分の手で討てなかったのは悔しいだろうな。だけど、これで本当によかったんだろうか?

 

 「これでよかったのかな?」

 

 俺はつい、考えを口に出した。

 すると、イズンだけでなくアリシアにウリルまでもこちらに視線を向けてきた。

 俺はそのことに少し緊張しつつも、考えていたことを口にした。

 

 「いやさ…今回の戦争やイルミダ星のことをやったのは確かにデミルっていう悪魔だったけどさ。なんか、あいつ自身も殺したくないって思ってたみたいなのに、無理やりそうさせられてさ。それを俺がデミルを殺すことでこの星の戦争自体は解決できたから、良かったんだろうけど。あいつ自身が何も報われてない上にただただ悲惨だったと思ってな。事情を知らなかったとは言っても、あいつも救えたんじゃないかなって考えてしまってさ。……ごめん、こんな情けみたいな思いを敵に向けるべきじゃないんだろうけどさ。」

 

 俺はそう言うと、苦笑しつつ頭をかいた。

 こういう所が俺の弱さなんだろうなと思い、自分の情けなさに嫌気がさし反省するのだった。

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