第三十九話
「なあ、これってどうなってるんだ?」
(あ?どうって、あのおっさんが王女さんに刺されて殺されてんだろっ?)
「そうなんだけど……」
俺は困惑していた。
なぜなら、それは目の前の状況、いや、俺にしかわからない状況が謎過ぎて理解に苦しむようなものだったからだ。
確かにガイツを刺し殺したのはイリア王女だ。
それ自体は間違っていない。
間違っていないが。
「…なあ、本当にあれ見えないのか?」
(は?何のことだよっ?)
「いや、イリア王女のすぐ後ろにさ。」
(ああ。)
「イリア王女の心を映し出したものとデミルが映ってるんだが。」
(…そうなのか?もう相棒はオレよりも相手の心を見れるようになったのかっ!すげぇなぁっ!!)
「……ああ…あ、ありがとう。…だけどさ。」
(ん?なんか歯切れ悪いなあっ。どうしたんだっ?)
「その、デミルの心まで見えてるんだけど…そのデミルもこの殺しを嫌がってるんだよ。」
(…は?……はあ!?)
俺の言葉に、常に調子に乗った口調だったギール・アルガーも驚いて叫んでいた。
そりゃそうだ。
今、俺に見えていたのを言うと、こんな状態だ。
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『イズン様。必ずイリア様も連れてまいります。ですので、向こうでお待ちください。……どうか、お元気で。………!?カハッ、グフッ!?』
ガイツが後ろから刺し殺された。
『イ、リア、さ、ま……な…ぜ……!?』
何とか振り向いて後ろを確認したガイツは最期にそれだけ言うと、瞳の光を失って動かなくなった。
『コロスコロスコロスコロス、ニクイニクイニクイニクイ、コロスコロスコロスコロス、ニクイニクイニクイニクイ――』
瞳の光がない状態でブツブツと呟いている。
操られているようで、身体の動きもぎこちない感じだ。
だが、その手にはガイツを刺した剣が握られており、血を滴らせていた。そしてその本人であるイリア王女は
(いや!なんで!?なんでワタシがガイツさんを殺しているの!?なんでこんなことになってるの!!?誰か教えて、誰か助けてよおぉぉぉ!!!)
そう涙を流しながら錯乱状態で助けを求めていた。
そして、それを操る者、デミルはイリア王女の後ろで不気味に嗤っていた。
『くひっ、くひひひひひっ。いいですねぇ!実に良いですねぇ!!これこそが私の望んだもの!!っはあぁぁ~、実に愉快!痛快!!素晴らしいですよぉ!!!』
だが、そう言うデミルの心はその言葉を全否定していた。
(はあ!?何してんだよ!!なんでこんな惨いことをそんな嗤ってできるんだよ!?サイコパスかよ!!?なんなんだよ、いったい!?俺はどうしてこんなことをしなくちゃいけないんだよ!!?もう嫌だ!!!誰か!!俺を!!俺を殺してくれよぉぉおおお!!!!)
そう、デミルの心はこれらの行動に心が傷つき崩壊寸前の状態にまでなっていたのだった。
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(そう、か。そんなことに、なってた、のか。)
俺がさっきのことを話すと、さすがのギール・アルガーもデミルに対して憐憫の情を抱いているような雰囲気を出していた。
「本当は悪い奴じゃなかったのかもな。」
(そう、かもな。)
「どうにか助けることはできなかったのかな?」
(それは…無理だな。)
あの話以降、元気のなくなったギール・アルガーに助ける方法があるか聞くが、言いにくそうに、しかしキッパリと否定の言葉が返ってきた。
「どうしてだ?」
(オレもアイツも、同じ悪魔ってことは言ったよなっ?)
「ああ。」
(それでオレ達は、アイツの記憶の中にいた主様ってのに作られたんだが……その時に植え付けられた使命は何があろうと果たさざるを得ないようにさせられてるんだ。)
「そうなのか。」
(ああ。それだけならいいんだが、恐らくアイツは、精神構造まで弄られてやがるんだっ。)
「…ん?どういうことだ?」
(つまり、心が全く望んでおらず、やりたくないって思ってることさえも無理やりやらせた上で、その身体にはその行為を楽しんでやってるように表現させてるってことだっ。)
「っ!?……クソだな。」
最初は何のことかわからなかったが、ギール・アルガーの説明を聞いてその生みの親のことを許すことができなくなった。
いくら何でもやってはいけないことだろ!!と思ってしまうようなことだったからだ。
俺とギール・アルガーが、殺されたガイツと傍で佇んで何かをブツブツと呟いているイリア王女を見ていると、デミルの時と同じようにこの場から遠ざかっていく感覚に襲われた。
「これでイズンの記憶も終わりか。」
(ああ、今回のことで色々とわかったこともあるが、まっ、それはまた後で考えりゃいいさっ。)
「ああ、そうだな。」
俺は、そんなことを言いつつも、いつかそのギール・アルガーたちの生みの親に会うことがあったら、決して許さないと心に決めるのだった。
イズンの故郷、イルミダ星の話も終わりを迎えました。
第一章もあと少しです。
良ければ最後まで見ていただけると嬉しいです。




