第三十七話
「……!?…なんだこれは!?」
景色の靄が晴れた後、俺の目の前には先ほどと同じ街だ。しかし様相がまるで違っていた。
穏やかだった街並みは喧騒に塗れ、怒号が飛び交っており、見える範囲一面の家屋等は燃え盛っていた。
(こりゃあ反乱でも起きてんのかっ!?もしかしたらアイツがこの星から避難した時の光景かもなっ。)
それを聞いて俺は顔を不快に歪めた。
遠くからは怒号や争い合うような金属音、また、目の届く範囲では刃物で切り付けられた痕や腹部を刺し貫かれた痕のある死体がある。酷いものだと頭部や身体の各部が潰されたものまであるのだ。
「もう、これじゃ、地獄だな。酷すぎるぞ。」
俺がその光景を見て呆然としていると、目の前で動く小さな影があった。
『え!?……なに、これ。』
それは、先の記憶の中で砂遊びをしていた男の子が少し大きくなった姿だった。
イズンは目の前の惨状を見て顔面蒼白になり、硬直していた。
『イズン様!見てはなりません!!』
そう言ってイズンの視界を塞ぐように抱きしめるのは、同じく先の記憶にいたガイツ騎士団長だった。
あの時の会話から、おそらく同じ屋根の下で生活していたのだろうと思う。
抱きしめられていたイズンは顔を上げると、ガイツに向けて叫ぶように問いかけた。
『義父さん!あれはなんなの!?なんで皆が死んじゃってるの!?僕は…どうしたらいいの!?』
『イズン様、落ち着いてください。気づかれると私たちもああなりかねません。……こちらに隠し通路があります。そこから非難しましょう。』
『待って!他にも生きてる人が残ってるかも。探し出してその人たちも一緒に――』
『イズン様!……それは不可能でございます。他に生存者がいるかも不明、その中を無闇に探しても見つからないでしょうし、それでもし私たちも敵勢力に見つかってしまえば避難することさえできなくなります。…わかってください。』
『……うん、そうだね。…わかったよ。』
イズンはそう言うと、顔を俯かせた。
『こっちです。急ぎましょう。』
そう言って、ガイツはイズンの手を引いてその家屋の奥にある物置部屋へと向かった。
ガイツは物置部屋の奥の本棚を横にずらすと壁際の床に取っ手が付いていた。
それを引くと取っ手周辺の床が抜けて地下へと繋がる階段があった。
『ここから先は暗いので、足元にお気を付けください。』
そのままガイツに手を引かれてイズンは地下通路を進んでいった。
そこから先は2人の間には特に会話もなく進んでいた。
「なあ、これってどこに向かってるんだろうな。」
(さあなっ。ま、避難できる場所って言うと、集会所みたいな場所なんじゃねぇかっ。)
「なるほど、確かにそうかもな。」
その後も少し会話をしつつ、俺は2人の後に続いていった。
しばらく2人の後に続いて進むと、上り階段が見えてきた。
また、その上からは光が漏れ出ていた。
『もうすぐです。イズン様、頑張ってください。』
『…うん。……わかったよ。』
イズンはだいぶ疲れているようで、返事をするのもやっとのようだった。
そして階段を上りきると、戸を開けて入っていった。
俺もそれに続くと、そこはさっきの家と同じような物置部屋だった。
そして部屋を出ると、今度はかなり広い廊下だった。
その廊下は人が横に20人以上並んでも余裕がありそうなほどの幅があり、ここから見える突き当たりまで50m以上ありそうなほどの長さがあった。
「…なあ、ここって、もしかして……」
(ああ、だろうなっ。相棒が思ってる通りだろうよっ。)
「やっぱりか。」
俺たちが辿り着いた場所は、おそらく城だろう。
ここでの城、ということは……
「イルミダ城、だよな。」
俺はこの先の展開が想像できるものの確認しなきゃという義務感と、嫌な予感が当たるかもしれないという不安を感じながら、2人の後に続いて進んでいくのだった。




