第三十四話
ギール・アルガーによってイズンの暴走が収まった。
その後、鎖が解けて手元に戻ってきた。……意思があるとはいえ、この武器は便利すぎるな。
(それで、何がどうなったんだ?イズンは大丈夫なのか?)
(ああ、大丈夫だぜっ!アイツの中に残ってた悪魔の因子をオレが吸い取ってやっただけだからなっ。オレも同類だからその吸収とかもできたってとこだなっ。まっ、少しすれば意識も戻るだろうよっ。)
(そうか、よかった。ありがとな。)
(いいってことよっ!)
俺がギール・アルガーからイズンの無事を聞き、安心していると牢の外から声がかかった。
「ねぇ、その兵士は大丈夫なの?」
「雄一様……」
そちらに目を向けると、2人とも心配そうにしていた。
俺は頷くと鎖を示しながら説明した。
「ああ、大丈夫らしいぞ。こいつがイズンの中に残っていた悪魔の因子を吸い取ったらしくてな。俺も詳しくは理解できてないけど、もうイズンが暴れることはないよ。それと、少ししたら意識も戻るって。」
「そうなのね。」
「イズンは無事なのですね。本当によかったです!」
俺がイズンのことを伝えると、2人は反応の差こそあれど、安堵したようだった。
「うぅ……」
俺たちが話していると、イズンが呻き声をあげた。
俺は一応警戒をしつつ、近づいて声をかけた。
「イズン、大丈夫か?」
俺は警戒を緩めないよう注意しつつ声をかけたためか、この牢で最初に言ったことと同じような言葉を投げかけることになった。
イズンはさっきまで叫んで暴れていたのが嘘のように落ち着いていた。
俺が声をかけてもすぐには反応せず、少ししてからこちらを向いた。
「ああ、大丈夫ですよ。ただ、先程まで私がなぜあれほど怒っていたのかがわからないですが。」
「そうか、よかった。じゃあ、まず今の状況について説明するぞ。」
「ええ、お願いします。」
イズンはまるでさっきまでとは別人のように落ち着いており、少し薄気味悪さを感じたが、とりあえずはイズンにも状況説明をすることにした。
ウルミダ城の玉座の間でのイズンの暴走から黒幕である悪魔のこと。またその討伐に至るまでのこと。先程の原因である悪魔の因子のことを説明すると、イズンは悪魔の存在に驚きこそしたが納得したようだった。
「なるほど。そんな事態になっていたのですね。教えていただきありがとうございます。」
イズンはそう言うと、椅子に縛られたまま器用に頭だけ下げて礼をした。
「いや、大丈夫だ。それより、こっちからも聞きたいことがあるんだが、いいか?」
「はい、私に応えられることなら何なりと。」
「俺たちがウルミダ城に向かう時に話していたことなんだが、イズン、お前はイルミダ星の生き残り…なんだよな?」
俺は戦争の結末までの話の後、早速イルミダ星のことについての話題を切り出した。
正直俺はこれだけわかれば良いと思っている。もしも、あの時のイズンの言葉があの悪魔、デミルによる記憶改竄ならイズン1人がその被害にあっていることになるが、逆なら規模は桁違いすぎる。
それに、その場合はまた面倒なことが待っていそうなのだ。
だから、言い方は良くないが被害者がイズン1人だけであってほしいと思っている。
だが、そんな期待は裏切られることになりそうだ。
俺の質問を聞いていたイズンは、「何を当たり前なことを?」というような顔をしており、心の声も少し聞こえたが、やはりイルミダ星のことを知っているようだった。
それからイズンは特に間を開けることなく、話し始めた。
「ええ、もちろんそうですが……それは貴殿にもお話した通りで間違いありませんよ。それがどうかしたのですか?」
(ほら、やっぱり。)
「ああ、いや、そうだな……今から話すことは向こうの2人も関係あることなんだけど、まずは落ち着いて聞いてくれ。」
俺は少し考えて、警戒は保ちつつも、イズンの故郷について話し始めた。
「実は、お前の故郷のイルミダ星のことを2人に聞いてみたんだ。そしたら、2人とも知らないらしくて、な。」
「え?知らないって、イルミダ星のことを、ですか?」
イズンの質問に俺が頷くと、イズンは2人の方を見た。
俺も目を向けると、2人とも申し訳なさそうに頷いていた。
「いやいや、あんなにも仲良さそうに話していたじゃないですか!あのイリア殿下のことさえもお忘れになられたというのですか!?」
イズンがそう言うと2人は少し間をおいて話した。
「……ええ、ごめんなさいね。あたしにはその星の名前すらも記憶にないのよ。」
「……はい。申し訳ありませんが、わたくしも初めてお聞きする名前でして。その星のことは何もわからないのです。」
イズンはそのことを聞くと、信じられないと言って取り乱したのだった。




