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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第三十三話

 「ウリル。さすがにこれはやりすぎじゃないか?」

 「わたくしもこれはどうかと思うのですが……」

 

 牢の中、椅子に縛られた状態のイズンを見て流石にやりすぎだろ、と目を向けると、バツが悪そうに眼を逸らしつつウリルが答えた。

 

 「そう、かもしれないけどね。やったことは反逆罪と変わらないもの。それに意識を取り戻した後の状態もわからないのよ。これくらいの用心はしておかないと、痛い目に合うかもしれないでしょ。」

 「うっ……そう、です、ね。」

 「なるほどな。それならまあ、仕方ない…か。」

 

 イズンへの対応に俺とアリシアも苦言を呈したが、ウリルの言い分ももっともなため、アリシアはそれ以上言うことができなくなっていた。理解できているが、納得できないといった気持ちなんだろう。

 俺も、ウリルの措置はやりすぎとも思った。しかし、もしものことに備えるのは大切でもあるため、それ以上何かを言う必要はないだろうと思い、口を閉ざした。

 そして俺たちは鉄格子の向こう側にいるイズンの様子を窺った。

 イズンの意識はあったが、牢の中で椅子に縛られていることに茫然自失としていた。

 俺は2人に確認を取り、イズンへ話しかけた。

 

 「なあ、イズン。」

 「……」

 「おい!……目覚めてんだろ?」

 「……」

 

 俺がいくら呼び掛けても、イズンは反応をしなかった。

 心配になった俺は2人の許可のもと、牢の中に入って話しかけることにした。

 

 「おい!…イズン、大丈夫か?」

 「…っ!……ふっ。この状況で大丈夫かを聞かれるとは予想していませんでしたね。」

 

 俺がイズンの肩を揺さぶりながら呼びかけると、やっと俺のことに気付いたのか、ハッとした後こちらに顔を向けて返事をしてきた。

 イズンが目覚めてどれくらい経ったのか知らないが落ち着いた口調からすると、目覚めてから時間が経って少しは整理がついているのだろうと思った。

 

 「イズン、お前が何でここにいるのかは理解してるか?」

 「いえ……貴殿に話しかけられるまでは、誰からも話しかけられることはありませんでしたので。ふむ……状況から見るに貴殿とアリシア様はウリル様と敵対関係ではなくなったのですか?」

 

 イズンは俺と牢の外にいる2人を視界に入れると、そう結論を出した。

 先の戦争での指揮能力からも認識していたが、頭の回転速度が速い。流石である。

 

 「ああ、そうだ。もう俺たちは――」

 

 もう俺たちは戦わなくていいんだ。

 

 そう言おうとした俺の口はそれを言い切ることができなかった。

 

 「アリシア様だけでなく、お前も裏切ったのか!??ふざけるなぁぁ!!!!」

 

 イズンがそう叫び出し、手足を拘束されたまま暴れ出そうとしたからだ。

 

 「イズン!?落ち着け!誰も裏切ってなんかない!!話を最後まで聞いてくれ!!!」

 

 そう声をかけてみるが、収まるどころか悪化していった。

 

 「うるさいうるさいうるさい!!!そうやってまた俺の居場所を奪うんだ!!!あの時みたいに!!みんなみんなみんなっ、そんなことばかり言って俺を騙し、傷つけ、独りにして!!こんなの嫌だ!!こんな人生も、こんな世界も!!全部嫌だ!!!!誰も信じられるわけがないだろうがぁぁぁ!!!ア“ア“ア“アアアァアァァァアァァァァ!!!!!」

 「「っ!?」」

 

 そしてイズンの気配が、悪魔が取り憑いていたときに近いものへと変化していったため、俺たちは咄嗟に警戒態勢にはいった。

 

 (どうする!?悪魔はもういなくなったんだろ!?もう殺すしかないのか!?(殺せよ。ここで暴れられても面倒なだけだろ。さっさと殺した方がお互いにラクだろ。)うるさい!!邪魔するなぁぁ!!)

 (相棒っ!オレを鎖の状態にしてアイツに放てっ!!)

 (っ!わかった!任せるぞ!!)

 (ああっ!!)

 

 俺はギール・アルガーの言うとおりに鎖にしてイズンへと放った。

 すると、その鎖はイズンの足先から頭までを覆いつくすように巻き付いた。

 初めは暴れて抵抗していたイズンだが、その抵抗も少しずつ弱まっていき、数十秒ほど経つと抵抗が完全に収まったのだった。

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