第三十二話
俺たちはウリルの案内でイズンを捕えている場所へと到着した。
そこは城の地下にあり、最低限の空調を整えてるだけの牢獄だった。
その薄暗い地下にいくつかある牢獄の1つにイズンは閉じ込められているそうだ。
ウリルが牢獄の番人に話を通したことで、俺達3人はその地下牢獄に足を踏み入れた。
「なあ、これはさすがにやりすぎじゃないか?あれは操られての行動のはずだろ?」
「そうかもしれないけど、もしかしたらこの兵士自身も反逆の意志を持ってるかもしれないもの。悪魔の件がなくても暴れる可能性があるじゃない。念には念を入れなくちゃならないのよ、王族としてはね。」
「あぁ、なるほどな。」
ウリルの言うことも理解できるがそれでもやりすぎではないかと思った。
しかし、俺は所詮この星からしたら部外者でしかないため、余計なことを言うべきではないなと思い、そのまま口を閉ざした。
そして、しばらく牢獄のある地下へと繋がる階段を下り続けた。
それから30分ほど階段を下っていると、ようやく牢獄のある階層に到着した。
「にしてもここの地下はかなり深いんだな。下りるのにも時間かかってたら、上がるときはもっと大変そうだな。」
「それは大丈夫よ。今は考えをまとめるために階段を使ってゆっくりと向かっているけど、この地下には昇降用の魔導具があるもの。帰りはそれに乗るつもりよ。ほら、あそこにあるでしょ。あれがその魔導具よ。」
ウリルはそう言って、階段の登り口とは部屋の中心を挟んで反対側にある扉のようなものを指さした。見た目は元の世界にあるエレベーターに酷似していた。
「そうなのか。それならよかった。帰りも階段だと面倒だからな。……ところで、その昇降用の魔導具ってなんだ?戦時中に見た通信するための水晶も気になってたんだが。この星は魔法が存在するのか?」
俺は戦時中に気になっていたが、それどころじゃなくなっており聞けなかったことを思い出したため聞いてみた。
「ええ、魔法は存在するわよ。」
「そうなのか!じゃあ、手から火球を飛ばしたり空を飛んだりもできるのか!?」
「ええと……」
俺が魔法の存在に興奮してウリルに詰め寄ると、なぜかウリルは頬を染めながらも答えにくそうに微妙な表情をした。
すると、アリシアがわざとらしく咳払いをしたので振り返ると、少し不機嫌そうな顔をしていた。どうしたのかと思い首を傾げていると、アリシアは唇を尖らせたまま話し始めた。
「コホン!…雄一様、この星に魔法は存在しますが、わたくし達が直接使えるわけではありません。この星で言う魔法は、この水晶玉のように魔導具を介してのもののみになります。星から湧き出続けているエネルギーをこれらの触媒を介して発動させる事象のことを魔法とされております。」
「なるほどな。アリシア、詳しいんだな。すごいな!」
「い、いえ。それほどでも、ありません。」
「それはここでの常識だからね。ほとんど全ての人が知ってるわよ。知らない人の方が珍しいわね。」
「もう!ウリル!…余計なこと言わないでよ!!」
「あははは…」
アリシアの説明に俺が興奮気味に反応を返していると、アリシアの不機嫌そうな表情が消えて頬を染めた。
しかし、そのすぐ後のウリルの発言でまた拗ねだした。
それを見て、俺は笑った。2人とも仲良しで微笑ましかったから。
アリシアの説明からすると、この星の魔法とは俺のいた世界の電化製品と似たようなものなんだということがわかった。
(まあ、それでも聞く限りは星から湧き出続けているエネルギーを利用したこっちの道具の方が良いようにも思うんだけど。俺の求めてた魔法とは違っててなんか少しショックではあるかな。)
それから俺たちは、階段の登り口と昇降用の魔道具からほぼ同じ距離にある通路へと進んでいった。どうやら、さっきまでいた場所には階段と魔導具のための空間で、牢獄は更に奥にあるようだ。
その通路に入ると、数多の牢獄があったが中には誰もいなかった。
「あれ?イズンはどこにいるんだ?」
「あの兵士は念のため、最奥の牢獄に入れているわ。」
「それ以外には閉じ込めているやつとかいないのか?」
「ええ、そうよ。基本的にここを使用することなんて滅多にないもの。」
「そうなのか。これだけの牢獄があるから、誰か他にもいるのかと思ってたんだけど。」
「街で兵たちが常駐してる所にも簡易的な牢屋があるのよ。ここが使われるのは、大罪人を閉じ込める時くらいだからね。そう、ほいほいとここを使うことなんてないわよ。」
「なるほどな。じゃあ、イズンとの話に集中できて良いかもな。」
「ええ、そうね。」
それからも俺はウリルやアリシアと話しながら歩き続けた。
しばらくすると、重厚な扉の前に辿り着いた。
そこには番人がおり、扉には数多くの鍵がかけられていた。
「この奥の人と話があるから、開けてちょうだい。それと、あたしたち以外は誰もここに入れないように。」
「はっ!かしこまりました!」
ガチャ、ガチャ……
「どうぞ。」
「ええ、ありがとう。」
「もったいなきお言葉です。」
そう言うと、番人は恭しく礼をして俺たちを通してくれた。
俺たちが番人の横を通ってその中に入ると、牢の中で椅子に座った状態で縛られたイズンがいたのだった。




