第三十話
ウリルの話を聞いた俺とアリシアは、しばらく言葉を発することができなかった。
大切な存在を人質に、その人を傷つけるように強要されていたのだ。
(そんなの辛すぎる。俺がそうなったら耐えられるだろうか?。)
そんなことを思い、かける言葉が出てこないでいると、ウリルがアリシアに頭を下げだした。
「本当にごめんなさい!!あたしのやったことは到底許されることじゃないのはわかってる!でも、せめて謝らせて。ごめんなさい!!」
ウリルはそう言って頭を下げたまま一向に上げようとしない。
俺はどうすることもできずに若干の気まずさを感じていた。すると、
「なんでウリルが謝るの?」
アリシアがウリルに問いかけた。
「だって!アリシアに何も言わずにこんなことをやったのよ!!多くの人が死んじゃったし、アリシアにも突き放すようなこと言っちゃったのよ!!もう、自分で自分が嫌になるわよ。」
ウリルが堪えきれなくなったように泣きだした。
すると、アリシアがウリルをそっと抱きしめた。
「ウリルは悪くないわ。わたくしのためにしてくれたんでしょ?むしろ悪魔に取り憑かれてしまって、わたくしの方こそごめんなさい。わたくしがウリルを羨ましがってるところに付け込まれたと思うの。だから、わたくしが謝ることであって、ウリルが謝ることなんてないのよ。だから…気に病まないで、ね?」
「うぅ、アリシア~!!ほんとにあなたは甘いのよ!ぐすんっ…こんなあたしにさえ優しくするなんてぇ!!」
「よしよし。ありがとね、ウリル。わたくしは大丈夫よ。それよりもウリルを悲しませてしまってごめんなさい。」
「……ううん、いいの!アリシアが無事ならそれで。」
そう言うと、ウリルはアリシアの背中に手を回し、抱きしめ返した。
それからしばらく、2人はそのまま抱きしめ合っていた。
数分後、2人は落ち着きを取り戻したようで、2人とも椅子に腰を下ろした。
「なあ、さっきの話聞いてて気になったことあるんだけど。」
「ええ、なにかしら?わかる範囲のことなら何でも教えるわよ。」
椅子に座って話が途切れたタイミングで俺が話を振ると、ウリルが親し気な口調で返事をしてきた。
なんとなく変な感じがしたが、特に気にすることなくそのまま話した。
「さっきの話では2年前までよく遊んでたってことだけど、その…イルミダ星とは2年前にはもう交流がなかったのか?それと、イルミダ星は滅んだって聞いたけど、それがいつなのか聞いてなかったからさ。それに、もしもっと前に滅んでたんなら、悪意ある人は使用できないワープ装置だけじゃなくて他の対策ができてないのもおかしいと思ったんだけど……あれ?2人ともどうしたんだ?」
俺が疑問をまくしたてるように言うと、2人とも俺が何を言っているのか理解できていないような顔をしていた。
「いや…その……」
「雄一様、イルミダ星って何ですか?」
俺が2人の様子を怪訝に思っていると、ウリルは言い出しにくそうにしていたが、アリシアは何のことはないように疑問で返してきた。
「え?玉座の間まで一緒に来ていたイズンって兵士の故郷らしいんだけど。元々はアルミダ星、ウルミダ星、イルミダ星の3つの星があってそのうちのイルミダ星が滅んだって…聞いたん…だけ…ど。」
「いえ、雄一様。イルミダ星という星はそもそもわたくしの記憶にございませんが。」
「……は?」
俺はアリシアの発言に唖然となった。
アリシアが友好的だった星を忘れるはずないし、ここで嘘を吐くとは思えない。
でも、イズンのあれほどの感情の発露も嘘とは思えないものだった。
「そうね。言いにくいのだけど、その人が何か思い違いをしているとしか思えないわね。」
「え?いや、だってウリルもイルミダ星のことをイズンから聞くって言ってたじゃないか!記憶にないって…嘘だろ?」
「それは…あまりにも名前が似てるから、もしかしたらあたしたちの星と何か関係あると思ったからよ。申し訳ないのだけど、あたしにもイルミダ星の記憶はないのよ。」
ウリルも同じくイルミダ星のことを知らないようだ。
俺はそれを聞いて混乱するのだった。




