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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第三話

「取り乱してしまってすみません。」

「いや、大丈夫だ。ただいくつか疑問なんだが、なんで戦争なんて始まったんだ?戦争をやめることは出来ないのか?友好関係にあった星なんだろ?」

そう質問すると、アリシアはまた暗い顔をした。


「それが、わからないのです。これまでは普段から使用している通信魔道具でお互いの星の状況や世間話などをしていたのです。ですが、2年前のある日、突然にその魔道具から連絡が入ったと思ったら『明日、我が星軍は貴方の星の侵略を開始する。』とだけ連絡があり、何かの冗談かと思って連絡し直したのですが、繋がらず本当に我が星の侵略に兵たちが送り込まれてきたのです。なので、理由もわからないまま今の状況に陥ってしまいました。」

「なんだよそれ。なんか謎だらけだな。原因がわかれば交渉なりできただろうに。」

「そうなのですが、確認の仕様がありませんのでこのような有様に。このような姫で民たちに申し訳が立たないです。」

アリシアはそう言って悲しそうにした。


「いやっ、その、なんだ。責めてるわけじゃないんだ。気を悪くしたならごめん。」

俺はそんなアリシアに大したことも言えず、謝ることしかできなかった。我ながらほんとに情けないなぁ。

「いえ、事実ですのでお気になさらないでください。」

アリシアはそう言って表情を取り繕うと、席を立った。

「それでは、これから戦場に行ってもらうわけですが、その前にある場所に来てもらいます。」


アリシアはそう言うと、俺を連れて長い廊下を歩き、少し古びた宝物庫のような扉があった。その扉の両脇に二人の番兵がおり、アリシアが話を通すと扉が開かれ中に入った。扉を通った先には、様々な武具が置かれていた。

 

 「ここは城にある武具を保管している場所です。この中から好きなものをお選びください。」

 「それはありがたいけど、いいのか?」

 「はい。そもそもわたくしの勝手な都合で召喚させていただきましたので、これくらいのことはさせていただきます。」

 

 そう言って頭を下げてきたので、俺はありがたくその武具を見せてもらうことにした。

 俺は学校の体育館くらいありそうな部屋の中で様々な武具を見て回った。

 普通の剣、槍、盾、弓などがあり、変わった物だと斧槍、鎖鎌、手甲鉤や鎖の先端に多数の棘の付いた球のようなものまであった。

 

 「いろんな物があるんだな。多種多様すぎて目移りするよ。」

 「はい。中には職人が悪ふざけで作成した物もございますが、ほとんどの物が実際にこの星の歴史の中で使われた武具でございます。」

 「へー、そうなんだな。それはすごいな。……ん?じゃあ、あれは?」

 

 俺は視界に入ってきた()()に目を向けた。()()は漆黒の棺のような箱だった。

 中身は見えていないのに、なぜか()()の中に何かある、と感じたのだ。

 アリシアは()()に目を向けると、息をのんでいたが、少しの間を置き説明してくれた。

 

「あれは伝説とされた武器、ギール・アルガー。かつてこの武器を持ったものにより、世界は窮地から救われたと言われています。ある時は地を裂き、またある時は離れた敵を全て穿ったとも言われています。しかしそれも大昔の話で、わたくしが幼いころ生きていたおじい様から聞いた話だとこの武器を手に入れようとした盗賊も、騎士として勤め素晴らしい功績の褒美としてこの武器を望んだ方も居たそうなのですが、その誰も彼もがこの武器を手にすると生気を吸い取られて死んでしまったそうです。ただ、実際に大昔の文献ではこれを使って窮地を救ったりしたともあるので確たることは言えないのですが、その実態は謎に包まれております。」


 俺は、アリシアの話を聞くと、その漆黒の棺のような箱の蓋に手を伸ばした。

 

 「雄一様!?危ないです!!それには触れない方が!!」

 「いや、なんでかはわからないけどさ。大丈夫な気がするんだよ。なんだか『これ』に呼ばれてるような気さえしてくるんだ。」

 「こ、怖くはないのですか?触れただけで死んでしまうかもしれないのですよ!?」

 「うーん。怖くは…ないかな。少し驚きはしてるけどさ。まあ、大丈夫だと思うよ。」

 

俺はそのまま漆黒の箱の蓋を開けた。その瞬間、箱の中から闇と光が入り混じった何かの奔流に晒されたように感じた。そして中には一つの球体があった。それ自体は透明だが、見ようによっては、神々しくも、禍々しくも見えた。


「綺麗だな。」


俺はそう言うとその球体に触れた。瞬間、その武器の戦場での記憶が頭の中を駆け巡った。それは、とても壮絶な戦いの中で敵を斬るところや、仲間が目の前で殺されたところ、自我の暴走か何かで敵味方問わずに殺戮の限りを尽くしたところなどの人によっては気が狂いそうなものだった。まるで、武器そのものの意志や感情さえも流れてくるような感覚でもあり、俺はその光景を見ているうちに知らず知らず涙を流していた。


「だ、大丈夫ですか、雄一様?」

心配そうに見つめてくるアリシアに微笑みを向け、

「あぁ、心配ない。ついさっきこいつが戦い方を教えてくれたところだ。」

 そう言って、俺は武器を自分の望む形、鎖で繋がれた二つの鎌へと変形させた。これがいいのかというより最初にこれが思い浮かんだだけだったが、思いの外しっくりときた。

 

 「まあ!手にするどころかもうそこまでできるようになったのですね‼すごいです、雄一様‼」

 そう言われて少し照れ臭くはなったが、気を取り直して質問した。

 「それで、俺はどこへ向かえばいいんだ?」

「はい。ご案内いたしますのでこちらへ付いてきたください。」

アリシアはそう言って城の出口へ向かった。


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