第二十九話
あたしとアリシアは仲が良く、毎日のように魔法水晶で会話をしており、月に何度も実際に会って遊んだりもしていた。
事件が起きたのはとある日の午後。その日は朝からアリシアと2人でお茶をしたり、露店市を見て回り楽しんでいた。
「ウリルは本当にすごいわね!」
「え、何が?」
「街のみんな、ウリルを尊敬の目で見てるじゃない。わたくしは全然ダメだわ。」
「何言ってるのよ。アリシアにはアリシアの良いところがあるじゃない。あたしもアリシアの笑顔に元気もらってるのよ。人それぞれなんだから、そんなに気にしなくていいのよ。」
「そうかしら?でも、やっぱりわたくしもウリルみたいになりたいわ。だってウリルはわたくしの憧れなんだもの。」
「そ、そう?あ、ありがと。」
あたしはアリシアの純粋な目で褒められるたびに頬が赤くなるため、顔を逸らして返事をした。
アリシアはそんなあたしを見て不思議そうに首を傾げていた。
「ん?…あ!そろそろ時間だわ。それじゃ、帰るわね。」
「あ、そうね。それじゃ、またね。アルミダ王女として、頑張りなさいね!」
「ええ、できる限りのことはやってみるわ!でも、困った時は相談にのってくれるかしら?」
「わかったわ。その時は力になってあげる。」
「えへへ。……じゃあ、またね!」
「ええ、また今度ね。」
そう言ってアリシアはワープゲートで帰っていった。
それからしばらく書類整理をしていると、ワープゲートからアリシアが戻ってきた。
いつもはワープゲートを閉じていたが、その日はたまたま閉じ忘れていたのだ。
そのためアリシアが連絡もなく来ることができた。
あたしもアリシアが何か忘れ物でもあったのかと思って、特に警戒することなく話しかけた。
「アリシア、どうしたの?何か忘れ物でもあったの?」
「……」
「ん?アリシア?」
「くふっ。」
「何がそんなにおかしいの?」
「くふっ。ふふふっ。ふっはっはっは!全く気づかないとは、あわれですねぇ。この身体は私が預からせていただきましたよぉ。」
「え!?…誰よ!?身体は預かったって…じゃあその身体は本当にアリシアのものだっていうの!?」
「えぇ、そうでなければ意味がありませんからねぇ。くふっ。」
「くっ!人質ってこと!?何が目的よ!?」
「ものわかりが良くて助かりますねぇ。これを選んで正解でしたねぇ。ふふふっ。」
あたしが警戒しながら問うと、そいつはアリシアの顔で不気味に笑った。
そのままあたしの周りをゆっくりと歩きながら、要求を口にした。
「そうですねぇ。ではまずは、アルミダ星へ戦争を仕掛けてくださいねぇ。その後のことはまた指示いたしますよぉ。全てが終われば、ちゃぁんとこれをお返ししますよぉ。」
「ええ、わかったわ。」
「あぁ、そうそう。このことをこれに言わないようにしてくださいよぉ。どこにいても私には何をしているのか、把握できますからぁ。もし言ったらぁ……」
そいつはそう言いながらアリシアの身体を指さした。
「言ったら?」
「これもこれの星も無事では済まないですからねぇ。」
「くっ!わかったわよ。その代わり、最後にはアリシアを返しなさいよ!!」
「くふっ。大丈夫ですよぉ。私はちゃんと約束は守りますからぁ。」
そう言って、そいつは不気味な笑い声を響かせながらワープゲートで帰っていった。
あたしはそれをしばらくの間睨みつけていたが、そいつがワープゲートでこの場から消えて10分ほど経った後、力が抜けて糸の切れた操り人形のようにその場に崩れ落ちた。
「うぅ。…ごめん。…ごめんなさい…アリシア……」
そのまま、あたしは涙を流しながら、拳を握りしめ、アリシアに謝り続けるのだった。




