第二十二話
暴走状態から自我を取り戻すと、剣を振りぬいてはいるがイズンの首は薄皮が切れた程度でほぼ無傷だった。
(っ!?危ねえなぁっ!!そいつは殺さないんだろ!!怒りに任せてんじゃねえっ!!目的見失うんじゃねえよっ!!!)
俺が呆然としていると、ギール・アルガーに怒鳴られた。
(え?今何があったんだ?)
(怒りに意識を乗っ取られてたぞっ!自分の感情くらい制御しろやっ!)
(すまない!また、抑えられなかった!!…それで今はどうなってるんだ?)
(相棒が暴走してるから、オレが勝手に変質して首を斬り飛ばさずに済ませてやったんだっ。感謝しろよっ!)
(ああ、ありがとう!)
俺はギール・アルガーと会話をしながらイズンの肩から飛び降りて距離をとった。
そのままイズンに振り返ると、うめき声を上げながら蹲っており、全身から煙が上がっていた。
「これは………成功した、のか?」
(ああ、なんとかなっ。ギリギリだが10秒以内にケリをつけることができてるぜっ。)
「そうか、良かったぁぁ!ふぅ。」
ギール・アルガーから成功と言われて、安堵のため息を吐いた。
すると、ギール・アルガーが真剣な声で忠告してきた。
(まだ気ぃ抜くんじゃねぇぞっ。まだ戦いが終わってねえからなっ!)
「あ、あれはなんなのよ!?」
ギール・アルガーに返答しようとするとその前にウリルの声が聞こえてきた。
ウリルの方に振り向くとアリシアを支えたまま上を見上げて目を見開いたまま固まっていた。
「……っ!?」
ウリルの視線の先を見ると、イズンから出た煙が黒ずんでいき一箇所に集まっていた。
それは質量を持ち始め気体から固体へと変質した。そして粘土のようにグニャグニャと変形していき大きな人型のようになっていった。
数秒続いて、変形が終わった時には2mくらいの黒い執事服を着た白髪紳士風の男が10mほど上の空中を浮遊していた。そいつは背中に蝙蝠のような形の羽が生えており、黒に近い灰色の肌で両手の指は鋭く50cmくらいに伸びていた。
「あれは…なんだ?」
(奴の本体だっ。さっきまでの攻撃で奴の憑依の力を削いであるからしばらくは憑依されることもないだろうよっ。まあ精神の隙がないと憑依自体できないけどなっ。)
俺が疑問を口にするとギール・アルガーが説明してきた。
(お前、あいつのことについて詳しいな。あいつの正体はなんなんだ?)
(ああ、オレも奴と同じ類の存在だからなっ。オレも奴も正体は悪魔だっ。)
「悪魔……」
「悪魔!?あれが悪魔なの!?」
俺の呟きを聞いてウリルが驚き声をあげた。
ウリルの声を聞きつつ、あの悪魔に向けて長剣を構えた。
『くっくっくっ。ここまでコケにされたのは初めてですよぉ。この私、デミルの計画の邪魔をしてきて、あなたは覚悟できているのですかぁ?』
「は?覚悟?そんなもん特にないけど、とりあえずお前はここで倒すよ。」
俺はデミルと名乗る悪魔の言葉に冷めたような態度で答えた。
俺はデミルに対して怒りを抱いているのに、なぜか心は冷え切っており冷静に判断できるほどに落ち着いていた。どうやら怒りが増すほどに視野が広くなるようで、不思議な感覚だった。
俺の心の奥深くで怒りの感情が荒れ狂っているのに、表層では波紋1つ無い水面のように澄んでおり、まるで先程まで制御できなかった俺の中の俺と、融合したかのような感覚だ。
俺は脱力して構えていた長剣をダランと下ろすと、デミルへ向けて歩き出した。
そして歩きつつ、右手に持っていた長剣に新たな機能が付くようにイメージして作り替えた。
『くっ!くらえぇ!……あなたにこれ以上近づかせるのは得策ではありませんのでねぇ。遠距離から攻撃させていただきますよぉ。』
俺が気負うことなく歩いていることに気圧されたのかデミルは一瞬怯んでいたが、すぐに気を立て直すと黒い炎弾を飛ばしてきた。
『くっくっ。どうですかぁ?これであなたは私に近づけないでしょうぅ?はっはっはっ!所詮は人間ですねぇ!!黒炎弾に触れてただで済むはずもないのですよぉ!!このまま塵となって消えてしまいなさいぃ!!!』
そう言うと、デミルはさらに多くの黒い炎弾を放ってきて、それが俺に向かって弾幕のように迫ってきた。
第一章も中盤に差し掛かってきました。
第一章の最後まで投稿し終えたら、また投稿するまで時間が空くかもですけど次章も完成し次第投稿するのでお付き合いしていただけたら幸いです。




