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神子の救済記  作者: 雪夢優希
第一章 二つ星仲裁編
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第二十一話

 俺が向かった先はイズンのところだ。

 どうやらあいつはイズンの身体に入って戦おうとしているようだ。

 

 (あいつバカなのか?イズンの力じゃ勝てないのはさっきの攻防でわかったはずだろ。)

 (油断は禁物だぜっ。相棒、恐らくさっきよりも強力になってるはずだ。あれは生命力を力に変換してやがるっ。全ての能力が普段の10倍の力になるから気をつけろよっ!)

 (何だよそれ!?チートだろ!!)

 (相棒がそれを言うなよっ!お前の方がやべぇからなっ!?それにあれは肉体限界を超えてるから、使用後は身体を壊す諸刃の剣だぞっ。もっても5分がいいとこだっ。対してお前は少なくとも今の状態で何かリスクを負うようなこともない。どっちがチートか一目瞭然だろっ!?)

 (お、おう。そうか。)

 

 俺はイズンの所へ向かいながら、ギール・アルガーと話していた。すると、イズンの叫び声が聞こえた。

 

 「うっ!ああっ!!ヴぁああああアアアア!!!」

 

 (そろそろだぜっ、相棒。気ぃ引き締めろよっ!)

 (おう!…ってなんだあれは!?身体が変形、いや、膨張してる!?あれじゃもはや人間じゃないだろ!!?)

 

 イズンの身体が歪に膨張して、元の状態の3倍くらいの大きさになっておりまだまだ変貌し続けている。

 

 (だから言ったろ。肉体の限界を超えるって…そのためにはあの身体じゃ無理だから細胞操作による肉体改造をしてんだよっ。相棒はあの野郎も助けたいか?)

 (イズンのことか?そりゃあ助けられるなら助けたいさ。(あいつはアリシアの気持ちでなくて私怨を優先してんだろ?なら、助ける必要ないだろ。)うるさい!!お前は黙ってろ!!……助けるにはどうしたらいいんだ?)

 (……お前も大変だな。助けるには速攻で奴を殺すことだ。さっき言った5分は、いわゆる制限時間みたいなもんだな。過ぎれば野郎の細胞が死滅して死ぬからな。だが、奴が身体を掌握してからでないと本体を捕捉できないからなっ。まだ待てよっ。野郎を助けたいならなっ。)

 (そうなのか。(面倒だな。もう殺そうよ。)だから黙れ!!……なら、動きだしたら仕留めればいいんだな?)

 (いや、それでも10秒と経たずに肉体の崩壊が始まるだろうよっ。だから、オレがタイミングを言うから相棒はそれに合わせろっ!)

 (ああ、わかった。)

 

 俺とギール・アルガーが話していると、イズンの変貌が終わったようだ。

 その身体は全体的な筋肉が5倍くらいになり、上背は5mくらいになっていた。

両肩は大盾のように広がり、右手は指が鋭く長く伸びてかぎ爪のように、左手は握り拳のまま膨張して直径1mの鉄球のようになった。

 首元からは肉が伸びて頭の左右を覆うように広がっていた。

 胴体は肩甲骨が上向きに伸びて翼のような形になり、胸部、腹部、背部ともに異様なほどに盛り上がっている。

 また、下半身は大腿部が外側に向かってそれぞれ伸びて、足は指が伸びてかかとも後ろに向かって伸びて硬く鋭くなった。

 そして、肌は色白だったものが灰色になっていた。

 

 (もうあれは化け物じゃん。)

 (そう言ってもおかしくないなっ。相棒、そろそろ構えてろよっ。合図出したらすぐにあいつの首と心臓を斬れっ。)

 

 俺はギール・アルガーの言葉に頷くと構えをとった。

 それから10秒ほど経過したころ、化け物となったイズンの目がわずかに光ったかという時……

 

 (今だっ!やれ、相棒っ!!)

 「はああぁぁぁああああ!!」

 

 ギール・アルガーの合図とともに俺は走り出した。

 イズンの身体が動き出す前に跳びあがり、イズンの左膝を足掛かりにして左肩まで駆け上がってそこから剣を真下に振り下ろした。

 

 ザンッ!!


 「うぐぅっ!」


 痛みを感じたのか、あいつはまだイズンの身体を動かせずにいる。

 着地した後、反動を利用してイズンの右膝に走って向かい、そこを足場に利用して思い切りジャンプした。

 すると、思いのほか跳びすぎて10mも跳んでしまい、イズンの頭よりも7m上にまで上がっていた。

 

 「やばい!加減間違えた!?」

 (相棒、何やってんだっ!?)

 (すまん!予想以上に力が上がりすぎてて高く跳びすぎた!!)

 (くそっ、動き出したぞっ!)

 

 動き出したイズンの身体が俺を捕まえようと右手を伸ばしてきた。

 身体が大きくなったため動きが少し鈍くなっているが、それでも凄まじい速度で迫ってきた。

 その瞬間、世界が止まったのかと思うほどにすべての動きがゆっくりになった。

 そして、走馬灯のようなものが見えた。俺は無意味に何も成すことなくただそこで生きていた。

 

 (俺は何もできてないのに死ぬのか?最期がこんなミスで?(は?ふざけんなよ?)ふざけていたんじゃない!ただ、首辺りまで跳ぼうとしたら思った以上に力が上昇してたんだよ!!(それがふざけてるって言ってんだよ!……はあ、もういい。)は?何を――(邪魔だ、どけ!俺がやる!!)ちょっ、おい!――)

 

 「くそぉ!「…がああぁぁァアアア!!」」

 (おいっ!?落ち着けっ!!…いや、今はこっちの方がいいのか?)

 

 俺はまた自分の不甲斐なさに怒り、怒りの感情が暴走してしまった。

 しかし、幸いにもそのおかげで危機を脱することができた。

 俺は暴走したことで傷つけることへの躊躇いが無くなり、迫ってきた右手の平の上半分を斬り飛ばした。

 

 スパッ!!!

 

 「っ!?」

 

 俺が物理的に斬りつけてくると思ってなかったのか、斬り飛ばされた瞬間に硬直した。その隙を利用して伸びてきていた右腕の上を走ってイズンの首元まで走り寄っていった。

 そしてイズンの首を斬りつけた。


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