二十話
「アリシア待ってろよ。今、助けてやるからな。」
俺はそう言いつつアリシア?の方へ歩み寄っていった。
アリシア?は困惑した表情で俺に語り掛けてきた。
「雄一、様?どうして、止めるのですか?あいつが死ねばこの戦争が終わるのに。わたしの英雄様が、なぜわたしの邪魔をするのですか!?」
アリシア?はそう言って俺を非難してきたが、俺は構わず歩き続けた。そしてアリシア?に話しかけた。
「お前が誰かは知らないけどさ。そうやってアリシアのふりをするのはやめろよ。聞いててむかつくんだよ。」
「な、何を言っているんですか?わたしはアリシアですよ!信じてください!!」
「いや、信じれるわけないだろ。なにせアリシアはそこにいるウリルのことを殺そうなんてしないんだからさ。それくらいは俺でもわかるさ。だから、もう正体を偽るのはやめろよ。虫唾が走るから。」
俺はそう言いつつ、アリシア?に近づいた。俺は静かに怒りを放ちながら、話しているため逆に冷静になっているような心地になり、気味が悪かった。しかし今はアリシアが優先と思い、俺の体の内側に入っているギール・アルガーに意識を向けて長剣を作り出すと、右手で持ってだらんと下ろしたまま歩き続けた。
アリシア?は、チッと舌打ちをするが、余裕の表情をしていた。
そして、両手を広げると口を開いた。
「まあ、いいさぁ。お前がどれだけぇ、私を傷つけようともぉ、傷つくのはアリシアの身体だけだからなぁ。」
「ああ、そうか。まあ、俺はアリシアを救うだけだ。邪魔なお前には消えてもらうよ。」
俺はアリシア?の近くまで来るとそう言って、右手に持っている長剣でアリシアの身体を右腰から左肩へと切り上げた。
「ちょっ!あんた、何してるのよ!?なんでアリシアを切ってんのよ!?……って、え?」
ウリルが俺の行動に対して非難してきたが、アリシアの身体から血が流れていないことに気付くと、非難が戸惑いに変わった。
「うぐっ!?なっ、なぜぇ!?私の身体にダメージは入らないはずがぁ!!お前!何をしたぁ!?」
「あぁ、言ったろ?邪魔なお前には消えてもらうってよ。だからアリシアの中にいるお前だけを斬ったんだよ。」
「はあ!?そんなことできるわけないだろぉ!ふざけるんじゃねえぞぉ!!」
「普通の武器ならな。このギール・アルガーだからできただけだ。アリシアの身体を傷つけずに、お前だけを斬れるような武器になれってな。創り出すまではわからなかったが、出来上がった瞬間にはお前を倒せる武器だってすぐにわかったよ。」
俺はそう言うと、右上に振り上げていた長剣で左肩から右腰へ斬り、右腹から左腹、左腰から右肩、そして頭から真下へと連続で斬った。
先ほどと同じようにアリシアの身体には血が流れることはなく、アリシアに取り憑いている者だけがダメージを受けているようで呻いていた。
「ぐぅ!これでは私の二つ星を手中に収める計画がぁ!くっ。この身体は放棄するしかないかぁ。」
そう言うとアリシアの身体から力が抜けて倒れそうになったため、俺が支えた後で床へ横たえた。
すると、ウリルが近寄ってきたのでアリシアをお願いすることにした。
「アリシアのこと、よろしく頼むよ。ウリルにとっても大事な存在なんだろ?」
「…ええ、わかったわ。アリシアを助けてくれてありがとう。」
「まだ礼は早いぞ。あいつを倒せていないからな。後始末をつけてくる。」
「そうね。お願い。あいつを倒して!」
ウリルの言葉を背に受け、振り返ることなく歩き出した。
(わかってると思うが、標的はあいつだけだ。他の奴には攻撃が行かないようにしろよ。)
(くくっ、わかってるよ。相棒の望むようにしてやるさっ。その方が面白そうだしなっ。)
俺は心の中でギール・アルガーとそんな会話をしながら、敵の位置を見据えていた。
俺は死にかけた影響なのか、アリシアに取り憑いていた奴の存在も見えるようになっていた。また、これまでは稀になんとなくわかっていた人の心も今でははっきりとわかるようになった。
だから、ウリルのアリシアへの気持ちが本物であると理解できた。ウリルに任せても大丈夫だということも。
俺はそのまま敵の所へと歩き続けた。




