第十七話
アリシアの英雄と一緒に来たアルミダ兵がアリシアの首を掴んでいた。
(あいつなんで自分の主君を殺そうとしてるのよ!?)
止めたいけれど、敵対してる以上それはできない。
この戦争において、あたしは絶対に引けない。
そうやってアリシアを助けないようにと堪えていると、あの英雄が助けていた。
それを見てホッとしたが、あの兵士の様子がおかしいため確認してみた。
(さすがアリシアの英雄といったところかしらね。口にはできないけれど、感謝しなくちゃね。それにしても、あの兵士はどうしたのかしら?操られてるようにも見えたのだけど。………まさか!?)
兵士の様子はあたしが一度見たことのあるものと限りなく似ていた。
あたしが驚いていると、あの英雄が声をかけてきた。
でも、そんなことを気にしていられるほど余裕もなかったあたしは、怒鳴るように返事をした。そしてまた現状について考えていると、また状況が変化した。
アリシアが英雄を刺し貫いたのだ。あんなに殺すことを嫌がっていたのにだ。
(さっきまで異常だった兵士が動いていないってことは……あいつがアリシアに移ったってことなの!?)
あたしが衝撃の連続に固まっていると、刺された英雄は倒れて、アリシアは笑いながら涙を流していた。
傍目からすれば不気味にも見えるが、その原因に心当たりのあるあたしからすればアリシアの気持ちを雄弁に語っているように見えた。
(っ!やっぱりアリシアは望んでないのよね。でも、どうしたらいいのよ!あたしに何ができるっていうのよ!!)
それでも、アリシアのためにできることがないか、あたしは考えなくてはならない。それがあたしにできるせめてもの贖罪なのだから。
「ねえ、あんたの目的は何なのよ!?その英雄が目的ならもう終わったんだからアリシアを解放してあげてよ!!!」
あたしが声を荒げて言うと、アリシアの顔をした何かは笑いをやめてニタニタとした顔をこちらに向けてきた。
「返すわけがないだろぉ?お前は馬鹿かぁ?このままこの星もあの星も私の支配下にするのだからなぁ。………くくっ、くふっ。くはははっ。きゃはははははっ!」
「くっ!出ていきなさいよ!それはあんたの身体じゃないのよ!!アリシアを解放しなさい!!」
そう言ってあたしはショートソードを抜いて、刃を向ける。
「いいのかぁ?この身体はこいつのものだぁ。お前が傷つけても傷を負うのはこいつだけだぁ。私には傷1つできないぞぉ。私はそれでもかまわないけどなぁ。また次の身体を探すだけだしなぁ。」
「くっ!どうしたらいいのよ!?アリシア…ごめんなさい……」
あたしはどうしたらアリシアを救えるのか分からず、悔し気に歯を噛みしめると向けていたショートソードを下した。それを見たあいつはニタリとした。
「くくっ、そうだろぉ。お前にできることなどぉ、ないのだからなぁ。くはははっ。………さて、そろそろお前も用済みだなぁ。死んでもらおうかぁ」
そう言ってアリシアの身体を使って英雄に刺したナイフを抜き取ると、ナイフを持ってこっちに近づいてきた。
あたしはアリシアを傷つけることも、自分が殺されることも嫌で、後退りながら何かないかと考えるが何も良い策が見つからない。
(どうすれば!?…アリシアの英雄は死んだ。………あたしの兵はおそらくもうやられてるだろうし、後は………っ!?)
ドンっ。
あたしが打開策を考えつつ後退っていると、後ろの壁にぶつかってしまい止まってしまった。
その間もあいつはいやらしい笑みを浮かべながら近づいてきた。
「もう逃げても無駄だぁ。ほら、死んでしまえよぉ。」
「くっ!まだ死ぬわけにはいかないのよ!!アリシアのためにも!!!」
「くくっ。抵抗しても無駄だぁ。ほぉら、死ねえぇぇ!!」
「なっ!?なんでこんなに力強いのよ!!…このままじゃ!?」
あたしがショートソードでこいつのナイフを防いだが、アリシアの身体からは考えられないほどの力でナイフを押し込んできた。
ギリギリ、と互いの得物の音が鳴り、じわじわとあたしの方に近づいていく。
このままだとあたしは何もできずに死んでしまう。
どうすることもできずに、ナイフがあたしの目前まで迫ってきた。
(もう、どうすることもできないの!?………アリシア…ごめんなさいね。もう謝ることも、償うこともできないのね。)
そしてナイフがあたしの首に触れる寸前、あたしは死を意識して目を閉じた。
「……えっ?」
しかしいつまで経っても痛みが押し寄せてこないため不思議に思いつつも目を開くと、そこにはアリシアの英雄が立っていたのだった。




