第十六話
気が付くと俺がさっきまで感じていた痛みが無くなっていた。
これまでの戦闘で感じていた疲労さえも。
そして、視点の位置が高くなり玉座の間を見渡すところにあった。
俺の身体は、笑っているアリシアの足元で倒れている。
(俺は、死んだのか?……ははっ、情けないな。助けようとした子に裏切られて、刺されて死ぬなんてな。」
俺はこれまで、嘘や騙りにあうことが多かった。
俺自身が騙されやすいのはもちろんあったと思うが、それでも信じたいと思ってしまうため、余計に多く騙されていたんだと思う。
友達から嘘の待ち合わせ場所で日が暮れるまで待っていたり、気になる異性の人からは嘘告白されて笑いものにされたり、仲のいい親友と思っていた相手には都合のいい小間使いのように思われていたりと例を挙げたらきりがない。
それでも信じたのは寂しさゆえだったのかもしれないが、今はもう考えても意味のないことだろう。
アリシアはそんなことないと思っていたのは、俺の願望だったのだろうか?
(でも、確かにアリシアは嘘を吐いていなかったと思うんだけどな。まあ…俺の見立てが間違っているのならわからないんだけど。)
そうなのだ。俺は昔から何となくではあるが、人が嘘をついているのかどうかがわかるのだ。それでも俺は疑うよりも信じたい。その一念で信じ続けた結果がこのざまである。正直目も当てられないだろう。
ただ、アリシアは初めから嘘を吐いていなかったのだ。恋は盲目と言いはするが、俺に関して言えばそれは無いと言える。だってもう誰にも恋に落ちることさえなくなってしまったのだから。
それでもアリシアが嘘を吐いてる様子はなかった。最初に会って話した時からずっと。本気で現状を憂い、自身の無力を悔やんで、何よりも民たちのためを思っていた。
(まあ、それで信じてたアリシアに裏切られて心臓貫かれるんだから、俺ってホントに救えない奴だよなぁ。)
俺はそう自嘲気味に言うと、諦念した気持ちで玉座の間を見渡すのだった。
――――――――――
「くくっ、くふっ。くはははっ。きゃはははははっ!」
(え?わたくしは今何をしているのでしょう?なぜわたくしは雄一様を刺して!?いや!いや!!いやぁぁぁ!!! 雄一様を殺したくなかったのに!!なんで!?どうしてわたくしの身体なのに動かせないの!?誰か助けて!!雄一様を助けてよぉぉ!!!)
わたくしの身体が勝手に動いて雄一様を殺してしまいました。
(例え、わたくしの意志による行動でなくともこのようなことがあっていいはずがありません!わたくしの都合で呼んだお方を、わたくしの手でなんて!!)
そう思いますが、わたくしには何もすることができません。何もできない無力な自分が許せません。
どうすればいいのか。どうすれば雄一様を救うことができるのか。
こんな時にさえ何もできずにいることが悔しくて、笑っているわたくしの目から涙がこぼれていくのでした。




