第十五話
「おい!何してるんだよ、イズン!?」
俺はイズンとアリシアの間に走りよると、イズンの腕を掴んでアリシアの首から離した。そしてイズンを睨みつけると、イズンの目が今まで見たこともないほどに淀んでおり、もはやその瞳には一切の光が感じられなかった。
俺はイズンのあまりにも異様な姿に圧倒され、後ずさりしてしまった。
それでも何とかアリシアを庇うようにして立つことができた。
そのままイズンを睨みつけていると、イズンはこちらを見ているようで見ていないようなどこを見ているのかわからない表情をしていた。
「裏切り者は殺さなければ。裏切り者は排除しなければ!」
「おい!!イズン!?しっかりしろよ!!!」
イズンの様子が異常だったから、声をかけたが正気に戻る気配はまるでなかった。それどころかどんどんおかしくなっているようだった。
「殺さなければ!排除しなければ!…コロサナケレバ!!…ハイジョシナケレバ!!……コロス!!!……ハイジョ!!!」
イズンは焦点の合っていない顔つきでずっとアリシアを見続けており、ずっと独り言ちりながら剣を抜いてきた。
キィン‼キィン‼キィン!!!
アリシアに斬りかかってきたイズンの剣をギール・アルガーで迎え撃つ。
ただこれまでのウルミダ星の兵と違って練度が高いため、それを倒さずに無力化するのは難しい。
数十合の攻防の末、何とか抑え込むことに成功して拘束した。
「イズン、急にどうしたんだ?お前の主であるアリシアに手をあげようとするなんて、おかしいだろ!?」
「コロス………ハイジョ………コロ……ス………ハ……イジョ………」
俺が抑え込んでいると、イズンはしばらくうわ言のように呟いて意識を失うように体の力が抜けた。
俺はその後もイズンを抑えていたが、動く気配がない。まるで、死んでいるようで心配になったので呼吸の確認をしたが、呼吸はちゃんとしていたため安心した。
俺は一度イズンを寝かせてアリシアに話しかけた。
「アリシア、イズンはどうしたんだ?なんか急におかしくなったように見えたんだけど。………?…アリシア?」
「………」
イズンの方に目を向けたままアリシアに声をかけるが、返事がないためアリシアの方に向くとアリシアは顔を俯かせていた。
俺がアリシアに顔を向けていると、ウルミダ星の王女が目を見開いて驚いているのが視界に入った。
「おい。ウルミダ星の王女さん、あんたは何か知ってるのか?驚いてるようだけどさ。」
「……知らないわよ。あたしだって何がなんだかわからずに混乱してるんだから!」
「じゃあ、なんでそんなに驚いた顔してたんだよ。」
「別にいいでしょ!あんたには関係ないことよ!」
「あぁ、そうかよ。」
俺がウルミダ星王女に話しかけても取り付く島もないようだったので、話しかけるのをやめた。
とりあえずアリシアの様子を確認しようと思い、もう一度アリシアに話しかけた。
「アリシア!どうしたんだ!?おい!!」
「………。……っ!……雄…一……様?」
アリシアの肩を揺すりながら声をかけ続けると、反応はしてくれたが焦点が合っておらず、先ほどのイズンと同じ気配を感じた。
だが、今の俺はそこまで意識を回すことができなかったため、イズンのことについて聞くことにした。
「アリシア。さっきのイズンの様子がおかしかったんだけど、何か心あたりとかないか?それがわかれば対処とかもできると思うんだけど。………っ!?」
アリシアの様子を確認しようと近づくと、胸部に熱のような痛みを感じた。
何かと思って視線を下に向けると、アリシアが隠し持っていたらしいナイフが俺の左胸辺りに突き刺さっていた。
「アリ…シア…?…な…ん……で!?」
「くくっ、くふっ。くはははっ。きゃはははははっ!」
「っ!?」
俺はアリシアに心臓を刺されたことへのショックと、アリシアの異常な反応に混乱した。そのまま俺はショックと混乱の中、意識が薄らいでいくのだった。




