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九話 守秘義務

「カイジさん、こちらへどうぞ」

「…失礼する」

「君がカイジ君かね?」


ソファに座っていたのは結構歳のいったお爺さんだった。いや、50前後か?


「あぁ、そうだ」

「私がここのギルド長…オルデウスだ。よろしく頼むよ。」

「……そうか」


ちょっと無愛想過ぎた…?


「そんな警戒せんでも食ったりせんよ」


思っていたこととは裏腹にケラケラとオルデウスさんは笑った。


「オルデウス…と言ったか?」

「!あなた、ギルド長にむかって…!!」


インテリ系お姉さんことリリムが持ったお盆をガタガタと震わせて声を上げる。


「リリムよ…いいんじゃよ」

「なんでですか…」

「ただ敬語じゃないだけだ。」

「だけって…!」

「みんなが勝手に敬語なだけだ」

「…」


みんなが勝手に敬語なだけ。みんなとは冒険者達のことだろう。その中にはハイランクの冒険者達も含まれているはずだ。何故ならオルデウスはギルド長。この席に座れるのはAランク以上の実力を持ち、前ギルド長に推薦された者だけだ。それだけの実力を持っているから尊敬され敬語となる。つまり、ただのこの会話には煽りが含まれている。



「舐められたものだな」

「はて、どういうことかね」

「分かっている、その言葉は侮られていると思ったから出たのではないのか?」

「…」

「…??」


リリムは会話の意味が分かっていないのか俺とオルデウスの顔を交互に見ている。すると、オルデウスはハッハッハと豪快に笑い出した。


「冒険者登録も今までしたこともない若造でギルド長である私に怖気付かずに大したもんだ」


笑いながらオルデウスは俺を褒める。しかし、穏やかだった雰囲気はオルデウスの目つきでガラリと変わる。


「!!」


ガタッとソファから立った俺を見るとオルデウスはリリムに退出するよう命じた。


「なんだ…?」

「そう警戒するな。カイジよ、今ここに音を一切外に漏らさぬよう結界を張った。警戒せずに正直なことを話してほしい。いつかお主をきちんと守れるように」


オルデウスは俺を呼び捨てる。さっきはただの前座ということだろうか。


「何も言う事はない。書類にと言いたくないこと、書きたくないことは書かなくていいとあった。だから名前しか書いていない。それになんか文句でもあるのか?」

「…その警戒心はいつかお主を救うだろう。しかし、私を信じてくれないかね。お主には霧がかかっているように感じる。」

「言って俺になんの得ある?」

「まず一つ、助けが必要になった時必ず最善を尽くそう。二つ、ひと目見てわかった。お主はとても強い力を持っている。最初のランクからだとほとんどの依頼が薬草採取だったりだ。だからお主の力に合ったランクにしてやろう。実力は知らんからな、Bランクからスタートはどうだ?」


Bランク…きっとそこら辺の平均的な冒険者だと初期ランクからBランクになるまで一年〜二年はかかるだろう。俺でも遅くとも10ヶ月以上はかかるだろう。だってこれでも一応王子だもん。ひょひょいと城から出られたら苦じゃないもん。


「因みにBランクまでになると3ヶ月に一、二回は依頼をこなさないとランク降格するから注意だかな。初期ランクは二週間に一回は依頼をこなすが上がれば期間は一応伸びるぞ?」


この人わかって言っていた?…そんなわけないだろうが、俺が頻繁に依頼をできないというのは察していたらしい。やべー(笑)


「…俺にとっての得は俺が決める」

「……」


「オルデウス…さん」

「…?どうした、カイジくん」

「本当に結界張ってあるんですよね」

「?あ、あぁ」

「驚かないで下さいね?」


俺は纏っていた魔素を離した。そして、オーロラが揺れるように本来の姿カイル・バリオード・エト・ジャックとして姿を表す。俺はほとんど表に出たことはない。しかし、父親譲りの銀色の眼をサングラスをとってあらわにする。


「…カイジくん…君は王族なのかい?それに、その魔法は…?」


オルデウスさんは俺を見るとガタッとソファから立ち上がった。


「俺のために動いてくれると約束してくれたから…全てを話します。そのかわり他言無用でお願いします。この情報がどこかに漏れた場合…」


俺はオルデウスさんをみる。オルデウスさんは宥めるように言う。


「そんな怖い顔をしないで下さい。分かってますよ。」

「敬語なんて必要ないですよ。それに俺のこと…知らないでしょうし」

「すまないな」

「いえ…。俺の名前はカイル・バリオード・エト・ジャックです。」

「だ、第四王子…!?」


オルデウスさんは

「えぇ。王族の中で唯一王位継承権を授からなかった平民の子、落ちこぼれといわれる第四王子、カイルです」

「…」

「どうなさいました?」

「どこが落ちこぼれなのだ?」

「無属性だからですよ。ただそれだけです。」

「そうか…私はカイジくん、いやカイル様を尊敬しますよ」

「…ありがとうございます。でもここでは王子ではなく冒険者として、カイジとして扱ってください」

「分かっているとも。無断で来たのだろう?」

「よく分かっていらっしゃいます」

「本当に4歳なのか?君は」

「えぇ。」

「…そうか」

「ではこの魔法について説明を…」

「いらぬよ」

「何故ですか…」

「守秘義務があるのだぞ?それは言わないということだけでなく必要以上に聞かぬということもある。それに君がなおさら王族ならばな」

「俺ははただの駒です。気になさらなくても」

「王族の秘密まで探らんよ。全てを知ろうとは思わん。その魔法についても君が冒険者を続けていればいずれ公になると思うしな。私はカイジくんと共にその秘密を共有しようじゃないか。子供には荷が重すぎる。私も共に背負わせてくれ。」

「…そうですか」


流石、ギルド長ということか。知り過ぎても良くないということなのかな。守秘義務にもいろいろあるのか。

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