表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/55

命の期限3

 クレアは周囲を警戒しながらもレイの様子を盗み見た。

 体調が悪化しているらしく、血に濡れた顔は真っ青だ。

 両手を体の前で拘束されていて、その手首には鉱石術を封印する魔具が装着されている。

 一刻も早くレイを助けなければ。クレアは元凶たるルベンを鋭くにらんだ。


「いい加減しつこいわよ! こんなことをしている暇があるなら、魔獣を一体でも多く倒したらどうなの!」

「枢機卿の命令で、どうしてもこいつを捕らえなければいけないんだ。まあ、命令がなくても、俺はこいつを捕まえるつもりだったが」

「なんですって?」


 胸騒ぎがして、柄をにぎる手袋がぎしりと軋んだ。


「あれから俺も鉱石人を調べた。すると千年前にも鉱石人は出現していたんだよ」


 ルベンは口元を綻ばせて、レイを見下ろした。


「千年前にも一度世界は荒廃し、増えすぎた魔獣が生命を蹂躙していたという。いままさにこの世界で起きている現象と同じだと思わないか?」

「レイに何をさせるつもりなの」


 クレアの声が低くなる。

 ルベンは意味ありげに微笑んだ。


「彼は救世主だったんだ。女神フォルトゥナが遣わした天使。世界を救うためだけに存在する兵器だよ」


 ルベンは苦しげに呼吸を繰り返すレイの背後に立って、レイの右腕に触れた。

 するとレイは目を見開いて、激しく抵抗した。


「触らないでください!」

「こっちか」

「嫌だ! クレアには見せないで!」


 ルベンは逃れようとするレイの首に腕を回して押さえながら、左腕の袖を引き千切った。

 クレアはその光景に驚愕した。


「レイ、その腕」


 レイの左腕には、皮膚を侵食するように青い魔鉱石がびっしりと生えていた。

 魔鉱石の街灯に照らされた腕は、きらきらと輝いて残酷なほどに美しい。


「見ないで、クレア」


 レイはクレアの視線から逃れるように深くうなだれた。

 垂れ下がった前髪の奥から、ぽつぽつと雫がこぼれ落ちている。


「調べたとおりだ」


 ルベンは魔鉱石化した腕を見て嘲笑う。


「この魔鉱石が完全に体を覆いつくした時、強力な鉱石術が強制的に発動して自爆する。そしてこいつは世界中の魔鉱石や魔獣、魔力を吸収し、強制的に女神へと還元する。こいつが他人の魔力を吸い取れる理由はこのためだ」


 クレアは信じられない話に、緩く頭を振った。


「自爆って何なのよ……そんなこと、いきなり言われても……レイはどうなるの!」


 声が震えた。

 ずっと一緒にいられると思ったのに。そう信じて疑わなかったというのに。

 レイは私を置いて行くの?

 絶望のにじんだクレアの悲鳴に、レイはびくりと体を震わせるだけだった。

 沈黙は答えだ。

 ルベンは慰めるようにクレアを見つめて言った。


「遅かれ早かれ、これは死ぬ運命なんだよ、クレア」

「黙れ!」


 クレアは事実を否定するように叫んだ。

けれど頭の片隅で「冷静になれ」と声がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ