陽気な榎島家
「ただいまー」
最後にすごい恥ずかしい事実を知った後、仲の良かった奴らとLANEを交換してから家に帰ってきた。
「おかえりー兄貴」
妹の一華が出迎えてくれた。
小さい時からバレーをやってるからか発育が盛んで中一なのに僕と身長が同じくらいある。
その事実にいつも僕の心が傷つけられる。
二歳も離れてるのに。解せぬ。
「数量限定の超絶カレーパン買ってきてくれたー?」
「はいよ。ったく自分で買いに行けよな」
「ありがと!文句言いながらもいつも買ってきてくれる兄貴優しいよね」
そういってふざけて抱き着いてくる。
そしてその柔らかい胸を押し当ててくる。
今や慣れたものだが。
昔からスキンシップ激しいんだよなーこいつ。
直せと言ってるのに。
「そういえば一華、最近学校ではうまくやってんのか?」
一華は僕と違う学校に通ってるから、直接聞かないと知る術がない。
そして愛する妹の学校生活はつい気にかけてしまうものだ。
僕の質問を聞いた一華は、
「べ、別に何ともないよー?」
僕から離れてごまかすように答えた。
「いやそれ明らかに何かあるときの反応だろ。お前が隠し事してるとき目線だけ壁見る癖、抜けてないぞ」
「うそ!?」
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なんやかんやで白状してもらった。
「この前の総合格闘技の大会で三連覇を果たした選手のことがニュースなったじゃん?その張本人が兄貴だってばれてさー。同級生が質問攻めしてくるのがだるいんだよね」
ソファーでだらけながら疲れたように一華は言う。
ただただ申し訳ない。
僕自身に来るのはいいけど身内にも来ちまうのか~。
「それはすまんが僕もどうしようもない。何とか対処してくれ」
「超絶カレーパン十個」
「…わかった。今度買ってくるから」
僕の返事を聞いて一華は満足そうだ。
そしてさっき僕が買ってきた超絶カレーパンを半分ちぎってくれた。
「ほい。半分あげる」
「ん。どーも」
リビングでふたり並んでそれを頬張る。
うむ、うまい。
パンもカレーもこだわり尽くされてる。
数量限定なだけあるな。
「ただいま~」
母さんが買い物から帰ってきたようだ。
「「おかえりー」」
「あー!超絶カレーパン食べてる!私のもあるよね!?」
「あーごめん。買ってきてない」
「えー!!明日買ってきてお願い!」
日頃の反応の一つ一つが若いんだよなーこの人。
「うーすただいまー」
そうこうしてると父さんも帰ってきた。
今日は帰ってくるの早いな。
「おかえり父さん、なんかいつもより早くない?」
「おう、何言ってるんだ。今日は待ちに待った唐揚げの日じゃないか!」
「そうよ!こんな重大イベント忘れるわけないじゃないの孝一!」
うちの親は二人とも唐揚げが大好きだ(まあ僕と一華も好きだけど)。
榎島家で月に二回ある“唐揚げの日”なるものを定めてそれをめちゃめちゃ楽しみにするくらいに。
唐揚げに関してはすごいテンションが上がるしこだわりもすごい。
使う片栗粉も厳選したり日によって変えたりしている。
「今から父さんは母さんと下ごしらえをする。孝一、一華、それまで待っていてくれ!」
「腕によりをかけて作るからね!」
「「りょ、りょーかい」」
やっぱりこのハイテンションな両親の姿だけは慣れないな。
唐揚げは片栗粉に決まってンダルォ!!??
☆キャラ豆知識
榎島家は全員遺伝で地毛の色が青いです。
現実にそんな人間いねーよと思うかもしれませんがご容赦ください。