表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人竜千季  作者: 秋谷イル
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/148

序章・選択

 陽が沈んでからしばらく経った。静かに燃えながら黒煙を吐き出す森を横目に、ぬかるんだ地面の上で、泥だらけになった男女が向かい合う。炎の放つ暖かい光が両者の姿を照らし出しているのに、互いの間に漂う空気はひどく冷たい。

「どういうこと?」

 赤毛をポニーテールにした小柄な少女は、その身の丈に似合わぬ巨大な対物ライフルを胸の高さで構え、銃口を眼前の相手に押し当てる。ちょうど“心臓”があるはずの位置だ。

「……えっと」

 対するは黒髪黒目、鋭い目付きで、それでいてどこか柔弱な印象を抱かせる少年。抵抗の意志は無いと示したいのか、両手を肩より上まで持ち上げつつ少女を見つめ返す。背丈は彼の方がずっと高いのに、どういうわけか彼女の青い瞳に見下されているような錯覚に陥った。自然、俯いた彼の視線も卑屈に上を向いてしまう。

 少女は体型にフィットした黒いスキンスーツを着用している。周囲にも同様の格好をした男女が数人おり、全員で少年を取り囲んで、彼女の手の中のものより小ぶりな──けれども十分に危険な突撃銃を彼一人に対し向けていた。その表情には微塵の油断も感じられない。まるで猛獣を相手にしているかのような警戒感。

 この陣形でも彼等が同士討ちすることは無いだろう。それだけの訓練を受けて来たプロだと聞いた。

 頭上を鳥が旋回する。甲高く一声鳴いた。

 直後、少年は訊ねる。

「撃つ?」

「アンタ次第よ。どうする?」


 引き金を引くか、それとも──


「……」

 問い返されて、しかし、すぐには答えることが出来なかった。彼の極めて短い人生の中でも、おそらくは一番重要な選択なのである。

 急かすように銃口をグリグリ動かす少女。嗜虐的な笑みを浮かべ、今か今かと回答を待ちわびている。炎の輝きに照らされたその姿は逞しく、生命力に満ち溢れていた。同時に可憐な容姿でもあるはずだが、今の彼の目には悪魔のようにしか映らない。

 周囲の者達もきっと見逃してはくれないだろう。仮に見逃されたとしても、この世界でどうやって一人で生きて行ったらいいのやら。

 どうしてこんなことになったんだ?

 少年は、遠い昔を思い返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ