どうしよう
コミックス1巻が、2023/1/20に発売となりました!
詳細はページの一番下に紹介がありますので、ぜひご覧ください。
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こちらのお話は、第一章終了時点+番外編「祝福のあめちゃん」のあとになります。
四方の壁に並ぶ背の高い本棚。隙間なく並ぶ背表紙の高さは不揃いで、所々から紙キレが飛び出している。
どうにかしようと取り出そうにも、手前に本が横積みされているせいで、取り出せない。
「できたばかりの書庫なのに、もう本で埋め就くされてる」
書斎の本を片付けてくるよう頼まれたリリィは、ウロウロと歩きながら空いているスペースを探したが、一向に見付からなかった。
進んだ先に休憩用の机とイスもあったが、両方ともに本が乗っている。
「おかしいわ。ダニエル様の書斎には、まだ本が残っているのに。倍もある書庫が埋まるだなんて」
まるで本が繁殖しているとしか思えない。もしくは、新しい本が運び込まれているか、だ。
「ダニエル様が、本を増やしているんだわ」
書庫の主が本をせっせと運び込むのは、いい。
ただ、任された本を収納しないと、リリィは仕事が終わらないので困る。
「え~。奥のほうなら空いてるかしら?」
どんどん進んでいくが、床積みの本が多少減るだけで棚は空いていない。
「床に本を置くなんて、できないよ~」
本は貴重。あらゆる情報のつまった高価な代物。西の砦では子供が触ろうとするだけで大人が怒鳴って取り上げていた。
破いたり汚れたりしたら、取り返しがつかないからだ。
ウロウロウロウロ歩いていると、やっと空いているスペースが見付かった。
喜んで駆け寄ったリリィだったが、そこは空いているのではなく、目立たない馴染む色の箱が詰め込まれているだけだった。
「本じゃないなら、ちょっと遠慮してもらおうかな」
箱なら床に置いても気兼ねしないので、さっそく引っ張りだした。
本を収めて達成感に包まれたリリィの目に、先ほど取り出した箱の中身が飛び込んでくる。
「――倉庫でみたことある。この装飾品……」
どれもこれもリリィが解呪した品に、よく似ていた。
手にしたときに、ああ、とっても高値で取引してくれそうだな、と何度も思ったので鮮明に記憶に残っている。
間違いない。
「銀! ネコババしたわね!!」
重量のある箱を両手でつかんだリリィは、来た道を勢いよく戻っていった。
◇◆◇◆
「ちぇー、見つかっちまったか」
箱の主は、やはり銀だった。
問い詰める前に白状して、悪びれる様子もない。
「ちぇー、じゃない! なにしてるのよ!」
「だって、使うのは武器だけだっただろ? 装飾品の使い道は決まってなかったじゃないか」
「決まってないから、持っていっていいわけじゃないの!」
「え~。ちょっとくらい平気だろ。なー、ダニエル」
本が山積みになっている机に銀が問いかけると、生返事がかえってくる。
「そうだね~。まぁ、バレなければ、なんとかなるよ」
「だってさ」
「バレたのよ! 私に!!」
「リリィは俺の主だから、共犯だな。ってことで、バレてない」
ニカッと笑う銀とは対照的に、リリィは悲鳴をあげて震えあがった。
「勝手に共犯にしないで。返してくる!」
持ってきた箱を再び手に持って、リリィは部屋を飛び出していった。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう)
知らない間に悪事を働いたことになっていたなんて。
(どうしよう、どうしよう、どうしよう)
銀の主になったばかっりに、とんでもないことになってしまった。
考えがまとまらないまま歩いていると、王太子の執務室へと辿り着く。
両手が塞がっているのでノックができず右往左往していると、呼び止められた。
「おい。こんなところで何をしている。王太子の執務室前でウロウロと――」
「ひえ! 飴のおじさん!」
いつぞや廊下で祝福の飴について尋ねられて、銀が追い払った青い髪のちょっと怖そうな人――ディランであった。
「お、おじさんでは、ない!」
思わず怒鳴ったディランが、しまったと思っているあいだに、リリィがびくっと飛び跳ねた勢いで半回転し、足音も立てずに走り去っていった。
「――怯えさせてしまった、だろうか」
だろうか、ではない。
見上げるほど背の高い男性に怒鳴られたら、成人女性ですら委縮する。
まだ子供と大人の間を行き来するような微妙な年齢の娘なら、半泣きで怯えるだろう。
「……ふむ」
気にはしたが、ノアにフォローを頼むのもアーサーに相談するのも気が乗らない。
ここへ来たのも、オリビアから聖女候補生に戻れるよう取り成してほしいとお願いされた件以外、用事は無い。
「さて。――戻るとするか」
ディランは、一連の出来事を無かったことにして去っていった。
王太子の執務室。
「今日は、めずらしくディラン様がいらっしゃらないですね」
いつも時間きっかりに現れるディランを待ち構まえてドアの前に立っていたノアは、時計を確認して首を捻った。
「タイミングが悪いなぁ」
どうせ来るから渡せるだろうと思っていた資料が机の上に用意してある。来ないのであれば届けるしかない。
「アーサー殿下、ちょっと行ってまいります」
「ああ」
手にしていた資料の内容に集中していたアーサーは、適当な返事をした。最後まで読み終わったところで、少し悩んで書類にサインをし、引き出しから取り出した印で判を押す。次の書類に手を伸ばしたとき、執務室の扉が静かに開いた。
「どうした、ノア」
ノックがなかったので、ノアが何か都合の悪い場面に出くわして逃げて帰ってきたのだろうと思った。
目線の先、細く空いた扉の隙間には、誰の姿も無い。
「すみません、アーサー殿下」
目線を少し下にやると、リリィがいた。
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