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ポピィと祝福の飴ちゃん

次で「番外編・祝福の飴ちゃんシリーズ」はラストになります(多分)

「ノ~ア君! ちょっといいかな?」

「うわ!」


 いきなり目の前に飛びだてきたポピィに驚いて、ノアは後方へと飛び退いた。


「驚かせちゃった? ごめんなさい」


 上目遣いで謝りながらも、ゆっくりと近づいてくる。

 もう止まってもいいだろうという距離を過ぎても寄ってくるので、ノアがさらに後退っていく。


「あのね、お願いがあるの」

「あ、はい」


 無意識に両手を前にだして、ノアはポピィの前進を留めていた。

 その手のひらに、なにを思ったのかポピィが両手を合わせている。


「ひっ!」

「ふふふ」


 この距離感のないところと愛らしい仕草がたまらないと、クラスメイトが噂していたのをノアは聞いたことがあった。


(なにを考えているのか分からないだけじゃないか!)


 褒めた奴でてこい、今すぐ変わってやる。と心のなかで絶叫したが来るはずもない。


「あのね、これを渡したかったの」


 ポピィは合わせた手を離すと、腕に下げていた手提げ袋を差しだした。


「これは、なんですか?」

「これはねぇ、飴ちゃんです!」


 受け取ろうとしていたノアの手が、ピタリと止まる。


(なぜ、また飴……)


「ノア君とオリビア様が話していたのを聞いちゃったの。飴ちゃん、流行ってるのね」


 一体どこに隠れて聞いていたのだろうか。

 まったく気付けていなかったことに、ノアはゾッとした。


「ポピィさんもアーサー殿下に渡すために持ってきたのですか?」


 実はつい先ほど、オリビアからもアーサー宛の飴を渡されたばかりである。

 またかと受け取ろうとしたところ、袋は引っ込められた。


「ブッブー。こんなに可愛い袋なんだから、違うに決まってるでしょ!」

「はい?」


 よくみると、ピンク色に大きな赤いリボンと花飾りがついている。

 男性に渡すには、たしかに可愛いすぎるラッピングだ。


「これは、同じ聖女候補生のリリィちゃんに渡してほしいんです!」

「リリィに?」

「そう! 可愛いでしょう。すっごく頑張ったんだから」


 まさかリリィへのプレゼントだとは思っておらず、ノアはちょっとだけ感激した。


 思い返せばリリィの周囲には同性の友人がいない。

 城での仕事に同い年の悪ガキ共のお世話にと、忙しい毎日を送っている。

 いつの間にか、味気のない日常が定着してしまっていた。


 邸に帰って贈り物を渡したら、きっとラッピングのまま眺めて楽しむだろう。

 王都へ呼び寄せたら、可愛らしい日常をプレゼントしたいと計画していたことを思い出した。


「ありがとうございます。きっと喜ぶと思います」


 ちょっとだけ目頭が熱くなる。

 大事なことを思い出せて本当によかったと、ノアはポピィに心からの感謝を述べた。

 クラスメイトの男共が、彼女を褒めそやす気持ちが少しだけわかる気がする。


「喜んでもらえてよかったわ」

「はい、必ずリリィに渡しますね」


 可愛らしい袋を受け取ったノアに、ポピィがにっこりと笑う。


「リリィちゃんに、お返しの飴ちゃん楽しみにしてるって伝えてね!」

「!?」


 一度握ってしまったら、今さら返せるはずもない。

 軽やかに去っていくポピィをみつめながら、ノアはぽつりと呟いた。


「……こわい」



 ****



「うわぁ、可愛い袋ね。ノア従兄さま」


 ポピィから受け取った贈り物を渡したところ、ノアの予想通り紙袋のままリリィは楽しんでいた。


「開けるとリボンを解かなきゃいけないね。どうしよう」


 感嘆しながら机のまわりを移動して、様々な角度から眺めようとする姿はなんとも可愛らしい。


(こういう純朴な感じのほうがいい。安心する……)


 同世代の女子ふたりの相手に疲れ果てたノアは、癒しを求めていた。


 やっと決心がついたのだろう。リリィがそっとリボンを解いて、机の上に飴を並べている。


「ひとつ食べてみたら?」

「まだいい」


 頬杖をついて、うっとりと眺める。

 微笑ましい光景に満足したノアは、一度席を外した。

 用事を済ませて戻ってくると、状況は一変していた。あんなに機嫌よく過ごしていたのに、リリィが今にも泣きそうな顔をしているのだ。


「なに? どうしたの!?」

「ノア従兄さまぁ」


 一体なにがあったというのか。


「話してごらん」

「……お礼が」


 リリィは、自分の作った飴と頂き物の飴を並べて、見栄えの差にショックを受けていたのだ。


 祝福の飴ちゃんの包み紙は、西の砦で支給された薬包紙(パラピン)を使っている。

 どうせ捨てるのだからと気にしていなかったが、贈り物に相応しいとはいえない。

 飴を入れる袋も無地の紙で手作りしていた。


 今まで気にもとめていなかったことに気付いてしまい、祝福の飴ちゃんに関わる物のすべてが、恥ずかしくなってしまった。


「お返しに、祝福の飴ちゃんをあげなきゃ……ダメでしょうか?」


 一拍の後、ノアは代替品に手を伸ばして元気な声で叫んでいた。


「今回は、僕のオススメの飴を渡しておきます!」

「大丈夫でしょうか?」

「大丈夫。お従兄さんに任せなさい!!」


 ほっとした顔をしたリリィに、ノアは頷いてみせた。

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