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冴えない男子高校生の日常  作者: キラキラクラクラ
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入学式前日

俺の名前は神山響介。


星海学園に今年入学した高校一年生。


父は世界中を飛び回るやり手の投資家。

若い頃から貯めていた金で一発当てた成金だ。


それを支えているのが母。

天衣無縫を擬人化したような父の学生時代からのストッパー。頭の切れる美女。


二人とも今も海外を飛んで回って仕事をしているため、家にいるのは俺と、兄と姉。


兄の名は京次。格闘技の世界にのめり込み、幼い頃から空手、柔道、剣道、古武術にシステマやジークンドーといったありとあらゆる格闘技にかじり付いては大会を荒らし回る生粋の戦闘狂。


姉の名は鈴。理系の道に進み、何度も賞を取るサイエンティスト。大人顔負けの論文を書き上げてはプレゼンをし、潰しにかかる大人をぐうの音も出ない正論で叩き潰す才女。


それ故か二人は双子であるが犬猿の仲。

それを止めるのが末の子の俺の役目。


そんな俺は大した特徴のない、ごく普通の男子高校生。健全なね。


だが、テストの点なら自信もある。

中学時代は毎回学年2位だった。

今回はどうなるかわからないけど、中学時代とても仲の良かった奴らが同じ高校に入ると決まって喜んだのは昨日のこと。


今まで隠していたらしい。驚かせるためと言って。


そして今日は入学式の前日。

俺は、明日必要な物を鞄に詰め込み終え、リビングでくつろいでいる。


「準備は終わったの〜?」


姉がリビングの外から顔をひょっこりと出して聞いてくる。


「一応ね。あとでもう一回確認してみるけど。」


「そう?ならお姉ちゃんが見てあげよっか?」


ど、どうしよう。

部屋に変なもの置いてないよな…?

コレでアレとかアレとか見つかったり、dフォルダ漁られたりしたら気まず過ぎて家出するぞ…。


そんな俺を見て察してか、「その前にトイレ行ってくる〜」と言い残し、スタスタと歩いて行った。


それを見届けた俺は光の速さで部屋に戻り確認をする。

良かった。何もない。表面上は。


戻ってきた姉に鞄の中を見せ、問題ないことを確認してもらい、夜。この時間だ。


ーガチャリ


「たっだいまー」


兄の帰還。

それは修羅場の来襲と言っても過言ではない。

兄姉はお互いに何かと因縁をつけ火花を散らす厄介な人達。

俺が下手に止めようとしても悪化するだけ。


「飯は何だ〜?」


そんなこと気にも留めない兄は稽古帰りの格好のまま呑気にダイニングに入ってくる。

そして姉が………、


「そんな臭え格好で入ってくんなぁ!ご飯の前にとっとと風呂入ってこいやぁっ!」


キレる、と。

天丼だ、もうもはやコントだ。


「んだと狂人!いきなりキレることねぇだろうが!」


それもそうなのだ。最初からキレる必要もないように見えるが……。


「毎日、毎日同じことなんべん言ってると思ってんだっ!わざとやってんのか脳筋が!」


そう、同じことの繰り返しだからいい加減、初っ端からキレるようになったんだろう。

その他のことに関してはネチネチ言い合うところから始めているところを見ると、姉が急に癇癪起こしたりしてるわけではないのだ。


「テメェ言いやがったな!このクソ女が!今日と言う今日こそその偉そうな面、ぐちゃぐちゃの泣きっ面に変えてやらぁ!」


「あら、顔面吐瀉物が何喚いてるのかしら?腕っ節だけが取り柄の脳筋さん?」


あ、姉が冷静さを取り戻してきた。

こうなると兄に勝ち目はない。

兄も武道に身をおく身。

いくら挑発されてもいきなり殴りかかったりはしない。

無論、言葉でやり合えば姉が勝つのは明確。

姉が冷静な状態で吐く言葉は辛辣かつ冷酷。

昔姉に理不尽なイチャモンつけてた教員が大衆の前でボロクソに言われて泣きじゃくっていた。


姉が勝つ。兄は負ける。

だが、兄にもプライドがある。

だから俺が適当に話をすり替え、なかった事にする。


「今日の夕飯はアジのフライだよ、兄さんの好きな金平と。」


「んぁ?…おぉ!そうなのか!そんじゃ早速「とりあえず着替えてきなよ。その稽古着じゃ暑苦しいでしょ?」あ、あぁ、それもそうか。」


そしてリビングから少し楽しそうに出ていく兄。


「またやっちゃった…。最初から喧嘩腰じゃなきゃもうちょっとまともな会話ができるのかな……」


姉はいつもこう。熱が冷めると反省する。

理系なのに。怒った時はちょっと距離置けばいいって知らないのかな。


「毎度毎度これ見せられて、他人事なのに一番震えなきゃならない俺の身にもなってくれよ…鈴姉…」


「だって京が!何度言っても同じ事するから!」


まぁ、それがいちばんの原因だよなぁ。

あの人稽古のこと以外殆ど何も興味なしなんだよな。


「ま、あの鶏頭に何言っても無駄なのは昔からか…。」


「ははは…………」


可哀想に。


「それより響ちゃん、明日、本当に大丈夫なの?」


「大丈夫って…何が?」


「何がじゃないよ〜。あの子、千熙(ちひろ)ちゃん。なんか危ない眼してたよ〜?」


柏 千熙。16年来、生まれた頃からの幼馴染みだ。

天真爛漫、だけど理性も持ってる、いわばムードメーカーのような存在。

誰にでも親切で、それが災いし、勘違いした男子達が告白しては無残に散りゆくという、柏ショックとかいう事が起きたこともあった。


だがそんなあいつが危ない眼?

どういう事なのだろうか。


「ま、響ちゃんが気にしてないなら別にいいけど〜」


姉の発言に何か不穏な空気を感じながらも、風呂から上がってきた兄が戻ったことにより、夕食を食べているうちに忘れてしまった。


あんなことが起こるとも知らずに………。





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