4 綺麗な女の子
頑張っていきましょー。
顔を上げると、そこには癖毛がなくて艶々した髪。大きくて宝石みたいな瞳。それにを強調させるように長く伸びたまつ毛。ぷるぷると張っていて思わず咥えてしまいたい。そんな艶かしさがある小さな唇。すべすべ。もちもち。ぷにぷに。さらさら。どんな言葉で擬けば良いのか分かりかねる肌。あぁ……。ずっと見ていたい。
「あら? 貴女は先程の問題児さん。私の顔を見てどうかしたの?」
さっきまでくっついていた唇はお互いが吸い付いていて、口を開こうと顎を動かしても一緒には開かなかった。しかしその分唇は力を溜め込んでいるため、軽く音を立てながら勢いよく開いた。
「……ちょっと。もしもーし」
「……え? あ、はい。どうしたの?」
いきなりの呼びかけで百合美は一気に現実へともどされた。
「どうしたもこうしたも、貴女、確か染井さんだったっけ。ずっと私の顔を見ていたでしょう? 何かあるのかしら」
「いえっ、特に用とかはないんだけど、ただ氷室さんの姿に見惚れていたというか……」
訝しげな表情をする楓乃とは反対に、百合美は身体をくねらせて歯切れ悪く答えた。
あれ? 今――
「今私の名前を呼んでくれたよね?」
「ええ。呼んだわよ。あんな風に私の自己紹介を妨げたんだもの。警戒くらいはしとかないと」
どんなきっかけであろうと容姿端麗な人に名前を覚えてもらえるだなんてこんなに嬉しいことはない。百合美の頬は垂れ、口がだらしなく開いている。それに目もとろけていて、ぽーとしている。
「ちょ、ちょっと染井さん。貴女なんて顔しているの」
「ふぅえい? あ……、あの……、……そ、そうだっ。私、氷室さんのことを一目見たときにビビビッときちゃって、それで……、……これから、私と、お、お友達になって……くれま、……せん……か……?」
「ええ。良いわよ。こちらこそ宜しくお願いしますね」
百合美が友達になりたいという一言を口にするのにどれだけ緊張して、どれだけ恥ずかしい思いをしたのかを、楓乃は意に介することなく承諾した。
「染井さんみたいに友達になりたいって人が何人か来たんだけどね。……みんな利益目的だったからやんわりと断ったの。私、今まで親の都合でよく転校してきたから、その度に同じようなことを受けてきたのよ。だから、なんか染井さんは損得の感情無しで私に声をかけたって分かるわ」
「でも、私だけ仲良くしちゃったら嫉妬とか受けない?」
「心配ないわ。氷室という名前を聞いてなんかピンとこないかしら」
「氷室氷室……う〜ん。……ぁああっ! HIMUROってなんでもやっているあの大企業!?」
HIMUROといえば自動車の分野で右に出る会社はいない。街中で走行している自動車は殆どがHIMUROである。今では家電製品にも手を掛けていて、どの商品をとっても性能がほかの会社のものよりも一段と抜けている。CMや広告は一切出していないにも関わらず、HIMUROを知らない人はいないといっても過言ではない。
「そうよ。そんな認識で構わないわ。それで私はその会社の娘といったところだわ」
「なるほど……。だから大丈夫ってわけか」
「実は学校に交渉して、至るところに録音機能装備の超小型カメラを設置したのよ。「氷室」というワードが出てきたら感知される仕組みになっていて、感知された人は1か月の間だけだけど自動でカメラに追われるようになるの。もちろん私が危険だと感じる人がいれば何年でもリストに登録することができるわ。あぁ、安心して。「染井」っていうワードも登録しておくから」
なるほど。安心だ。喧嘩しないようにしよう。
「ならこれから私のこと、百合美って呼んでよ。私も楓乃ちゃんって呼ぶから」
「あら……ありがとう。私家族以外に下の名前で呼ばれたことが無いから、とても嬉しい」
小さな笑顔だったが、今まで硬い表情だった楓乃が百合美に見せた初めての気の緩みなのかもしれない。微笑んだ顔はどこか幼さを感じさせて、目の前には歳相応の少女がいる。
「ふふっ。楓乃ちゃんっ!」
「何よ百合美」
「えへへ〜。呼んでみただけ」
ただ名前を呼びあっただけ。そんな当たり前のことだけれど、その行為は私にだけ許された。つまり楓乃を独り占めできることを意味する。その事実を知ってか知らずか、2人はどこか浮き立っている。
「さてと。もうクラスには私達しか残っていないけど、帰る?」
「うん! 一緒に帰ろっ」
「ええ。じゃあ鍵を返しに行きましょう」
百合美が部屋の電気を消し、楓乃は鍵を締めた。
廊下には他の新入生の姿がない。それでも足を進めると、先生や部活の生徒の姿が見える。
職員室の前には先生が立っていた。百合美達の姿が見えると軽く息を吐いて近づいてきた。
「も〜遅いからみんな忘れちゃったのかと思ったわよ。明日も学校があるんだから寄り道はしないようにねっ」
そう言うと、先生は小さく手を振りながら「また明日」と続けた。
「「さようなら」」
2人が挨拶したのを確認すると、先生は鍵を持って職員室へと帰った。
2人は他愛もない会話をしながら歩いていると目の前に駅が現れた。
軽く挨拶をすると、そのまま別々の改札口へ歩を進めた。
「裕貴くんに楓乃ちゃんか〜。ぅへへ〜」
なんだろう。心の中は聞こえるはずがないのに、なんか周りから生暖かい目で見られている気がするなー。ま、いっか! 可愛い男の娘。カッコイイ美人さん。あぁ〜私はなんて幸せなんだろう。
月1のペースになるかもしれませんが頑張ります。
ちょこっと修正。
ハーレムすぎるでしょ。
ハーレムは見ていて微笑ましいけれども、実際に自分がその中心にいたらどう感じるんだろうか。単発(例えば半年位)のハーレムだったらやってみたいとは思うけれどもそれが2年3年と続くと、絶対どこかで綻びが出てくるはず。ところで♀♀♂♀♀と♂♂♀♂♂と♂♂♂♂♂と♀♀♀♀♀だったら多分3番目が一番長続きしそう。