3 可愛らしい男の娘
月1か2くらいの投稿のペースになります。今回はいつもよりも少なめです。
教室に残された生徒の中には、早々と帰宅する者が数人いるものの、殆どの生徒はお喋りを始めていた。みんなこれからの高校生活に思い思いの期待を寄せているようだ。
取り敢えず私も……ええっと、楓乃ちゃんは……なんか人が沢山集まっているから後にしよう。他に誰かいないかな……。ん? あそこになんか華奢な身体をした可愛い顔の子が帰ろうとしている……。
「あのぅ……」
「ぼくに何か?」
初めて会った人と話すのはやっぱり緊張する。ましてやそれが男の子にだったらなおさらだ。しかし彼はどこか女の子らしさを感じさせてくれているので、とても話しかけやすかった。
「私、染井百合美って言います。なんか君を見ていたら可愛くて思わず声をかけちゃったの」
「かっ、可愛い? ぼくが……? えへへ……。んんっ……ぼくの名前は吉高裕貴」
彼は可愛いと言われて満更でもない表情を見せたが、すぐに自分の顔が綻んでいることに気付いたので咳払いをした。すると今度は曇った顔で小さく口を開く。
「ぼく、こんな容姿だからさ……今まで何度もからかわれてきたんだ……。その度に女々しいってバカにされて……」
「ご、ごめん! 私そんなつもりじゃ……」
裕貴は目に溜まった涙を溢れる前に袖で拭った。
裕貴くんがそんな過去を持っていたなんて……。私はなんてひどいことを言ったんだろう。
「ち、違うの。染井さんは率直に思ったことを言ってくれたんだよね? ぼくは、……それが……、とっても……、……嬉しくて……」
咽びながら紡いだその言葉は今にも倒れそうなくらいに弱々しかったけれども、それでも裕貴が感じていることを百合美に伝えるには充分だった。
不意に裕貴の両肩に手が掛けられる。ビクッとした裕貴は目の前にいる彼女を見上げた。
「私は絶対に裕貴くんをバカにしない」
裕貴は百合美のあまりにも真っ直ぐな目を直視することができずに思わず俯いてしまう。
「ありがとう。染井さん。こんなぼくでよければ、これから仲良くしてほしいな……」
「うん……。もちろん!」
百合美の輝いた姿に応えようと、裕貴はなんとか声を絞り出した。俯きながらではあるものの、百合美が聞き取るには充分に声が出ていた。
裕貴は自分の肘の辺りまで濡れていることに気が付くと、落ち着くまで百合美の胸元に体を預けた。
「ごめんね。こんな格好悪いところ見せちゃって……」
「いいの。いいの。裕貴くんは可愛い方が似合っているもん」
実際にスカートを履いているその姿は女の子と見間違えることはないだろうけれど、かといって男の子とも言いづらい。男の娘と言うのが相応しく思える。
「むぅー。そうやって可愛いって言っているけど本当はからかっているんだろぅ」
口を尖らせながら肩を軽く叩くその姿は本当に可愛らしく小動物のようだ。
「なっ……。あ、頭ナデナデするな〜」
裕貴は見る見るうちに紅潮させると、嫌そうな口振りで百合美に訴える。だが、どこか嬉しそうにも見えた。
いや〜。本当に可愛い。一家に一体飼いたいくらいだよ。ぅお〜なんだその上目使いは……。そんなやつはこうしてやる〜。
「んやぁ〜……。ぉあっ、頬をグニュグニュしゅるのらめぇえ〜」
一通り裕貴の顔を弄ると、百合美は満足したのか最後にギューッと自分の胸へと押し当てた。
さすがに裕貴は気まずくなってきたようで身をよじらせていると、百合美はそのことに気付いて腕をゆっくりと解……こうとしたが止めた。
「むぅ~~。もう満足したってっ! ちょ、ちょっと。恥ずかしいってば~~」
裕貴は乱れた息を整えると「じゃあぼくはこれで」と言った。これに対し百合美は手を振りながら「じゃあね」と応える。目が合った裕貴は恥ずかしそうにしながら手を振り返すと、逃げるように教室を飛び出していった。
「さてとっ」
長い間じゃれ合っていたら教室には人が数えるほどしかいなかったので、百合美は鞄に腕を通してそのまま肩で背負う。
ドアに指をかけると誰かと重なった。
「「あっ……」」
細くて綺麗な指だ。爪の形も整っている。反射的に手を引いてしまったけれど、すべすべしていて触り心地も良かった。
大分変更しました。チョットだけイチャイチャ増えました。
可愛らしい男の娘良いですよね。はい。少なくとも私はそう思います。少し幼さを感じさせる子って本当に愛らしくてどうにかなりそう。てか性格が可愛ければ男女関係なく可愛い。これは真理。もし裕貴くんが男だったら♂×♂になるけれど、性格的には♀×♀になるという。不思議。ていうかどちらかというと百合美の方が男らしいよね。実際男だし。裕貴くんは百合美のことをどう観ているんだろう。百合美はズボンを履いているわけだからね、中性的な顔っていうのもあって男の子だと観ているのかな(これは読者の好きなように解釈して)。