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マスカレード高校 〜貴方は貴女?〜  作者: 白井流川
入学式やら
2/7

2 カッコいい女の子がいる

初めての登校日です。百合美は上手くやっていけるのでしょうか。

 とうとうこの日が来てしまった。今日は入学式。新生活の始まりだ。百合美にとっては初めての高校生活なので、これからどうやって過ごしていこうか期待や不安といった気持ちで一杯である。勿論それは性転換していなければの話だ。今の百合美はどうやったらバレずに無事高校生活を送れるのか、不安と絶望で心が黒く染まっている。


「ま、一応学校には男性としての登録し直しを相談したけど……」


 スカートとズボンを交互に見ながらどちらを履こうか迷い、う〜んと、頬に手を当てて唸る。


 学校には昨日のうちに駄目で元々電話で相談してみたら、意外にもすんなりと受け入れてもらえた。学校側が言うには


「うちの学校には性差を気にする子が毎年多く入学していてね、そんな子でも少しでも過ごしやすいように心の性別を基準に男子、女子と区別しているの」


 つまり学校に登録されている本来の性別はあまり意味をなしていないのである。


「取り敢えず履き慣れたスカートにするかっ」


 百合美は紺のズボンをベッドの上に置き、代わりに浅葱色(あさぎいろ)のスカートに履き替える。そこには白いシャツに菫色(すみれいろ)のネクタイをして、上から亜麻色(あまいろ)のベストを着た初々しい少女の姿があった。


「うん。やっぱり」


 その場で体を捻らせると、その動きに合わせてスカートがなびいた。


(女子高校生がそこにいる)


 百合美は考えを改めてズボンを履いてみることにした。


(男子に見えなくはない)


 スカートをクローゼットに押し込むと、急いでブレザーを着て家を飛び出した。


 入学式は無事に終了した。校長先生やなんか偉そうな人のありがたいお言葉と、生徒代表が前に立ってそれっぽい話をしていた気がする。印象に残ったのは生徒代表を務めた子が長くて艶やかな黒い髪を肩まで下ろしていたことだった。足が長くてスタイルも良く、如何にも女性らしさを纏ったその身体は凛々しく思えた。

 なんだけな。名前は確か、え、え〜っと……


氷室楓乃(ひむろかえの)です。」


 そうそうこんな感じで声も美しかった。って――


「ええー!!」


 声の主の方を見ると先程見た姿と全く変わらない生徒が立っていたので、百合美は思わず目を見開き、心の声を外に漏らしてしまった。


「氷室さん。ごめんちょっとストップして。はいそこ。染井(そめい)さんかな? なんかあった?」

「い、いえ。すいません。ちょっとびっくりしただけです」


 柔和な表情が印象的で少し小さな先生は、百合美が声を上げたことに対して率直に心配しているようだったので、余計に百合美は気まずさを感じて俯いてしまった。


「ごめんね。氷室さん。続けてくれる?」

「はい。氷室楓乃です。私はあまり外出が好きではないので、休日は簡単な絵を描いたり小説を書いたりしています。どうぞ宜しくお願いします」


 そう言って小さくお辞儀をすると、ズボンによって腰からお尻、脚へと、美しいラインがくっきりと見えた。

 そうか。そうか。もうハ行までいったのか。私は自分の自己紹介が終わったら気が抜けてしまったみたいで、他の人が何を喋っていたかなんて覚えていないよ。まあ後で楓乃さんに訊いてみよっと。あ、でもたぶん凄く人気があるんだろうな〜。


 最後の1人が挨拶を終えたのを確認すると、先生は口を開いた。


「それでは全員分の自己紹介も済んだところなので、いくつか連絡があります」


 と言うと、前から何枚かプリントが送られてくる。


「皆さんプリントは行き渡りましたか〜?」


 先生は手を挙げながらキョロキョロと見渡すと、特に手が挙がらなかったので先に進んだ。


「明日は健康診断があるので、制服の中に体操着を着て学校に登校してください。更衣室については明日説明するから待っていてね。あとあとっ、新入生はこのオリエンテーション中、まだ部活をやっちゃダメだから、しつこく勧誘してくる部活は多分ブラックよ〜」


 新入生は入学式を終えると、まず1週間はオリエンテーションの期間となる。この期間では学校に慣れることを目的としていて、授業という授業はしない。

 百合美は束になっている部活動紹介のプリントに目を落とすと、「ワクワク」だの「楽しい」だの「先輩は優しい」だの、必死さが伝わる言葉が目に入ってきた。

 あぁ、なんだか目がゴロゴロする。ここの学校、運動部はそれなりの成績を出しているというのになあ……。いやおかしいって。入学式で演奏を聞いた限りでは、絶対に吹部レベル高いでしょ。


「はい。それでは先生のお話は以上なので、何か疑問点がなければこのまま終わりにしますよ〜」


 先生の声はざわめきがあった教室によく響いたため、お喋りをしていた生徒は一斉に口を閉じて、全員が誰か発言しそうな子がいないか探すように辺りを見渡した。


「ではこれで、今日の日程は以上となります。お疲れ様でした。先生は職員室にいるから、最後に出る人は鍵を持って来てね〜」


 しばらく沈黙が続くと、先生はその言葉を残して教室を後にした。


初日はあと数回続くので、数話分まとめて読んだ方が良いかもしれません。百合美はちゃんと友達を作れるのでしょうか。

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