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 その言葉に錬金術師≪アルケミスト≫…いや、魔法剣士≪ルーンナイト≫は答えなかった。


 ソウマの言葉はあまりにも馬鹿馬鹿しかった。


 何故ならば、彼の言葉が本当だとすれば、この場に「ソウマ・ニーベルリング」と言う人間は二人いることになる。


 明らかに背丈も体格、声色と何もかも違った。


 だが、その人物は笑わなかった。


 その人物はしばらくの沈黙後に言葉を発した。


「…私は、いやかつてオレは元の世界ではとある迷宮の攻略の第一人者であった…」


 その言葉はまるで自身がソウマ・ニーベルリングであるかのような口ぶりであった。


 彼はこう続けた。


「かつてその迷宮を制した者は『迷宮の謎を解き明かした者はその者が生き続ける限り、永遠にその望みを叶え続けるだろう』言われていた。しかし、叶えられる願いは全て最悪な形で叶ったものだ。『誰かのための英雄になりたい』と願えば、それは何人者の屍の上に築き上げられ、女神となった最愛の人を殺し、世界中の人々から恐怖の対象となった。そして、女神を殺したオレは全ての神々の加護を無効化する力を得た。その力を持って…異世界からやってきた高い能力を持つ奴らを殺して、殺して、最後は最高神“ノーデンスによって捕らわれた」


 誰もその言葉に何も言えなかった。


 ノーデンス。


 このテセルナードを統べる全ての神々の長だ。


 男はさらに続けた。


「ノーデンスによって捕らわれたオレはただ死を待つばかりであった。神殺しの罪はそれだけ重いからな。そこへもう一人の最高神がオレに取引を持ち掛けた。そいつはノーデンスと対立している外から来た神だそうだ。『過去の自分を消せば、このようなことにならないだろう』。最早、過去の自分しか憎むことができなかったオレは悪魔のような最高神の取引に応じた。過去の自分を消すために。そう、このオレ『ソウマ・ニーベルリング』の存在を消すためにな」


 彼はそう言うと、転移≪ゲート≫を使い、そこから武器を取り出した。


 そう、『村正』だ。


「あれは…!!」


「これこそがオレが『ソウマ・ニーベルリング』であるという確たる証拠だ。そうだ、今お前の目の前にいるこのオレこそがお前の目指した下らない『夢』の成れの果てだ!」


 そう言うと、その男は刀を抜いた。


 彼の使う『村正』は通常のソウマが使うものとは異なり、刀身が青く妖しく輝いていた。


 それはまるで人の魂を食らう人魂のようにも見えた。


「やはり、お前は錬金術師≪アルケミスト≫ではなく…」


「そうだ、オレのは貴様と同じ魔法剣士≪ルーンナイト≫だ」


 その言葉に緊張が走る。


 これまでこの男は錬金術師≪アルケミスト≫だと嘯き、ステータスカードやら武器等を制作していたと思われていた。


 だが、実際にはそれらは魔術によって行われていたのだ。


 本来、魔法剣士≪ルーンナイト≫は魔術を専門とした職業ではないため、転移≪ゲート≫の魔法を使うことはできないはずなのだ。


 しかし、この男は明らかに魔法剣士≪ルーンナイト≫の領域を越え、予め用意しておいたダガーや偽のステータスカードを取り出していたのだ。


 すなわち、これまでの相手とは格が違うのだ。


 それでもーー


 男は覚醒した『村正』を手に、一歩ずつソウマたちに詰め寄った。


 彼らに戦闘態勢に入ったが、しかしそれを制止するようにソウマが彼らよりも前に出た。


「ありがとう、皆。だけど、こいつはオレが倒さないといけない相手みたいだ」


 そう言うと、彼は刀を引き抜いた。


 目の前で自分と同じ『ソウマ・ニーベルリング』を名乗る目の前の男と同じ『村正』だ。


 それを見た相対する男は鼻で笑った。


「オレにお前一人で挑むと言うのか?」


「ああ」


 ソウマは黙ってそう頷いた。


「わかっているだろうな。目の前にいる人物はあくまでも貴様自身。『ソウマ・ニーベルリング』を名乗る同一人物だと言うのを」


 男の話が本当ならばこの男は未来の自分自身だということだ。


 もし、それが本当であれば到底勝ち目はないだろう。


 普通ならばありえない話だ。


 それでも彼は逃げなかった。


「ああ、わかっている。だが、お前はオレじゃない」


「どういうことだ?」


 男は不思議そうにそう尋ねた。


「やってみなきゃわからないと言うことさ。それにあくまでお前がオレを名乗るならばオレ自身でお前を倒さないといけないからな」


「・・・命知らずが行くぞ」


 そう言うと、二人は戦いを始めた。

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