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第2話

 街の中央には数々の冒険者が集うギルド会館がある。


 この世界におけるギルドとは一種の冒険者たちで組織された一種の自治団体であり、このギルド会館はそれら全ての冒険者を管理する施設であり、世界中の冒険者の記録がここに登録されているのだ。


 ここは身分や人種関係なくすべての冒険者が一律に登録されており、言い伝えによると冒険と自由の女神アヴァンドラによって管理されているそうだ。


 そのため、この会館に登録されているデータは全て正確であり、神の目でも欺かない限り偽造することは不可能だろう。


 また、全ての冒険者のみならず、冒険者に仕事を依頼する際にもギルド会館への登録が義務付けられているためか、商人や職人、未熟な子供ではない限り、ここに登録しているのが普通であろう。


 ソウマも含める冒険者たちはそこで仕事をもらい、人々からの依頼【クエスト】をこなして、日々の日銭を稼いでいた。


 …最も彼の場合は実家の援助や迷宮の宝物を店に売却をして生計を立てていたが。


「…アンデット退治ばかりだな」


 迷宮の深部に潜るような一級の冒険者たちは人々からのクエストを受けることもなく、迷宮に潜り、魔物たちが守護している宝物から売り払い、それで利益を得ている。


 だが、ソウマを始めとするその他大勢の冒険者はこういった依頼をこなすことによって、日々の生活費を稼いでいるのだ。


「まぁ、ないよりはましかな~」


 ソウマが少し溜息つきながら、掲示板に貼りだされた依頼書を一枚取った。


 この依頼を受けに行くのだ。


 ギルド会館は非常に大きな建物であるが、大きな公会堂のような広場のようになっており、数多くの冒険者や商人などがおり、会館内にも食事所があり、多くの冒険者の情報交換所になっていた。


 そこでソウマは受付に行く通りすがりにこんな与太話を耳を挟んだのだ。


「そーいやよ、『黒銀の鉾』のとこの副ギルドマスターが他の冒険者でやりあったそうだ」


「よくやるよな、あのギルド。あいつら本当、そこらのゴロツキと変わらねぇよな。迷宮攻略が一番進んでいる実力者集団だからっていつもイきりやがって…。その冒険者も副ギルドマスター相手じゃあ相手にならねぇだろ?」


「それがよ…。どうもその冒険者は一方的に副ギルドマスターを叩きのめしたらしいぜ」


「何!?そりゃ本当かよ!そんなことをすれば、あの『ステルベン』が黙っちゃいねぇぜ!何者だ、そいつ!?」


「いや、わからねぇ。何でも今インディス率いる何人かがそいつを探しているらしいぜ。二人組だとか」


(…物騒だな)


 ソウマはその噂話を聞いてそう思った。


 先程話題に出ていた『黒銀の鉾』は特に迷宮攻略が進んでいる大型ギルドであり、メンバーも二百人以上のグループで構成でされている。


 特にリーダー格の『ステルベン』はドワーフの戦士であり、カリスマ性にも優れた男として町中に知られている。


 同時に悪評も相当数あり、かなり凶悪な男であることで町の人から恐れられていた。


 だが。そんな話は彼には関係なかった。


 そんなことより彼は生活費の方が先決だ。


「すみません、これなんですけど…」


 ソウマが受付に着くなり、すぐさま依頼書を渡そうとした時だった。


 ギルド会館の入り口が騒々しくなったのだ。


 ソウマが少し気になって入り口の方を向くと、そこには先程話題になっていた集団がいたのだ。


 『ステルベン』を始めとする率いる『黒銀の鉾』のメンバーだ。


 その中には普段は迷宮に入り浸っているステルベンの姿もあった


 どうやら、気が立っている様子であった。


 それも普段なら気にしないはずの迷宮攻略第一陣の一目見ようと集まってきた見物人に「どっか行きやがれ」と言わんばかりの表情で見ていたからだ。。


 ステルベンは前述の通りドワーフであるが、通常のドワーフは背上が低いのに対し、ステルベンは人間よりも大きな体躯をしていた。


 さらに色が黒く大きな黒い髭を蓄えており、まるで極悪人のような風貌の持ち主でもあった。


 実力者彼は冒険者第2階級の“金”ランクであり、冒険者でも選りすぐれた強者でもあることが一目でわかった。


「・・・ここに新米の冒険者はいるか…エリックを潰した奴だ…」


 ステルベンのその重厚感がある凄みがある低い声に、辺りが静まり返った。


 エリックと言うのはこの『黒銀の鉾』の副ギルドマスターだ。


 どうやら、あの噂話は本当だったらしい。


ーーステルベン…


 ステルベンの重厚感溢れるその声に恐れをなした冒険者たちは、ソウマを除くほぼ全員が知らないと答えた。


 その中にはエリックを倒した者と同格の冒険者最低ランクの”白”級の冒険者もちらほらいるが、顔立ちを見れば未熟者であると人目でわかった。


(こいつらじゃねぇな…)


 ステルベンは長年の冒険者の勘からか、彼らではないとすぐにわかった。

 

 それと同時にこちらに怖気づかない者が一人いるのに気付いた。


 ソウマだ。


「そこの坊主…確かニーベルリング家の坊ちゃんだったかな…?」


 その低く重厚感ある敵意に満ちた声でソウマを威圧した。


 その声にソウマは冷や汗をかきつつも、携えている村正に手をかけつつもすぐにでも逃げられるように辺りを見渡した。


「ニーベルリング?確か貴族にそんなのが…」


 ソウマの姓を聞き、わずかな人が反応した。


 その言葉に彼は少し気になったが、今はそれどころではない。


 最大のギルドが敵意を向けているのだ。


 幸いにもここはギルド会館である。


 冒険者同士の私闘は禁じられている。


 だが、相手は悪評絶えない実力者集団の『悪』の戒律のパーティだ。


「何か御用で?」


 ソウマの声は震えている。相手は冒険者随一の実力者だ。


「冒険者の方々の皆様!ギルド会館内でのトラブルはお辞めください!」


 ギルド会館のスタッフの声が響いたときだった。


「その通りです。冒険者ステルベン。彼は共に迷宮を制覇する同士。個人的な一時の感情での私闘は女神アヴァンドラの名の下に裁きを受けて頂きますよ」


「ああ…誰だぁ…!?この俺に意見するやつは?」


 突如現れた謎の声にステルベンは声を荒げながら、その声の主を方を睨んだ。


 その声の主は『黒銀の鉾』とは真逆の性質を持つものだと一目でわかった。


 『黒銀の鉾』の者たちは野蛮で粗野ではあるのに対し、この冒険者たちは上品で優美な雰囲気を醸し出していた。


 パーティは四人ぐらいのメンバーで構成されており、その四人全員が違う種族であった。

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