24 ローマは一猫にして成らず④
24 ローマは一猫にして成らず④
しかし、スーツ姿の白髪の男性が、渋い表情で発言した。
「ちょっと待ってくれ。そもそも、この計画が実現可能かどうか、ということを考える必要がある。クラウドファンディングは確かに一つの可能性ではあるが、実現できない計画に資金だけ集めても意味はない。
問題を整理しよう。まず、最大の問題は、猫嫌いの人との共生が図れるか、ということ。これは、まだ解決していない。それともう一つ、わしが気になっているのは、児玉焼で猫の焼き物を作るという計画だ。児玉焼は由緒ある伝統文化。そう簡単にいくとは思えない。」
「そうだなあ。格式というものがあるよな。」
これはまさに予想していた展開だ。「市民の声を聴く会」の時と同じ流れである。
待ってました、とばかり、立ち上がったのは、言わずと知れた北里法明。
児玉焼の重鎮。仰天したマイク係が、慌てて走り寄る。
「わしは、北里法明。児玉焼を作っておる。」
言わずもがなの自己紹介から始まった。
「実は、わしはこのねこたま市計画に大賛成じゃ。話すと長くなるが、中学生の発案段階から関わっておる。わしも児玉市と児玉焼の未来を憂えておって、自分にできることは何でも協力したいと思っている。児玉焼の猫、大いに結構。
実は、わしは大の猫好きでな、この話がある以前から、猫の焼き物を趣味で作っておったのじゃ。」
法明の目配せで、渡と春菜が、法明作の猫焼き物をスクリーンに映し出す。
「これがその猫じゃ。」
おーっという感嘆の声が会場内に広がる。
ご満悦の法明が、さらに追い打ちをかける。
「この猫たち、ねこたま市計画のために、すべて寄付しよう。好きに使ってくれ。」
「法明先生の作品を寄付?」
「人間国宝だぞ!」
法明は手を緩めない。
「児玉焼の窯元達に、ねこたま市計画の話をしてみたら、皆、乗り気でな。今、猫バージョンの児玉焼を、あれこれ試しておるところじゃ。」
「すごい! 法明先生、そこまでしてくださってたんだ。」
青山君がうなった。
「今日は、わしの息子が作った焼き物を持ってきた。」
渡たちがスクリーンに映し出したのは、実に愛らしい猫たちだった。法明の作品は、リアルな実写版だったが、こちらは、若い女の子が好みそうなキャラクター的な猫だ。丸々としたフォルム、大きな目、いかにもインスタ映えしそうである。
「可愛い!」
女子高生の声が響く。
「わしには作れん猫じゃな。息子にこんな才能があるとは思わんかった。
児玉焼も、今までの枠を打ち破る新たな作風が求められておるのだろう。児玉焼の将来のためにも、ねこたま市計画は必要だ。それぞれが、新しい発想で、自分にできることを模索していかねば、未来はない。」
法明の言葉はずしりと重い。




