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15 同じ猫なら踊らにゃ損々

 

  15 同じ猫なら踊らにゃ損々


 「児玉市再生プロジェクト」は、よっちゃんのアドバイスを受けて、「ねこたま市計画」を軸に再構築されることとなった。


 まず、「児玉焼」の再生をめざす第一グループは、猫バージョン焼き物体験はもとより、新たな案も考えた。隣県の城を訪れる観光客、とりわけ外国人観光客の誘致を目指した新企画、それは、「猫のいる宿」だった。

「『看板猫のいる宿』をうたい文句に、集客を図ります。既に営業している旅館だけでなく、民泊も有りです。『民泊』という試みは、退職後、第2の人生を送りたい、人とつながりたい、社会とつながっていたいと思っている高齢の方にとって、新たな出会いの場となるのではないのでしょうか。」

「外国人観光客も、民家に泊まって日本の生活を体験することで、生の日本文化に触れることができます。もし可能なら、窯元での宿泊体験というのもどうでしょう。短時間の土ひねりでは味わえないより深い体験ができるということで、人気が出るのではないのでしょうか。そこで、SNS等にアップしてもらえれば、児玉焼が再ブレイクすると思います。」


 第二グループの「ゆるキャラ」は、当然のごとく、猫をモチーフにした「こだみゃん」となった。

「ねこたま公園に、こだみゃんの顔はめパネルを設置して、記念写真が撮れるようにします。この前のプレゼンでインスタ映えを狙うという話がありましたが、私たちはそこを重視したいと思います。ついでに、猫の着ぐるみ体験、猫耳カチューシャを貸し出して、写真撮影などもどうでしょう。」

「さらなるインスタ映えを狙って、ねこたま公園の植木を猫の形に(せん)(てい)します。洋風ガーデンでよくある動物の形の刈り込み、あれを猫にするのです。」

「ちょこんと座っている猫、ジャンプしている猫、のびをしている猫、寝ている猫など、様々なポーズの刈り込みにしたら映えるんじゃないかな。」


 「IT企業誘致」を提案した第三グループは、「猫による誘致」を考えた。

「調べてみると、企業によっては、『猫同伴出勤可』というところがあるのです。猫好きにとって、自分が家にいないとき、愛猫がどうしているかというのが気になるところ。自分の飼い猫を連れて出社できるというのは、うれしいことです。休憩時間に猫とたわむれて癒やされることで、その後の作業効率も上がります。」

「IT企業はヘッドハンティング等が多く、離職率が非常に高い業界です。猫同伴可という独自性を出すことで、人材を確保することができる、そんなふうに考えてくれる企業もあるのではないのでしょうか。猫の街・ねこたま市をアピールして、猫好き社員をゲットするのです。」


 第四グループの「児玉ピザ」は、猫の形をした「ねこたまピザ」となった。 

「土台となる生地は猫の顔の形です。その上に、きのこ、穴子、タコ、ベーコンなどの素材を使って、猫の目、ひげ、口元を描きます。児玉焼の大皿に盛り付けます。全部食べきるとお皿に猫の柄が描かれているのがわかり、二度にっこり、という仕掛けです。」

「食後に、猫のカフェラテアートを提供します。これも、インスタ映えを狙えると思いま

 す。」


「児玉市で素敵な田舎ライフ」を提案した第五グループは、猫との共同生活にシフトした。

「この前指摘されたことを受け、児玉市ならではの田舎生活ということで、猫と共に生きる家を提案します。」

「猫と共生しやすい家を貸し出し、あるいは販売します。最近の猫ブームの中で、猫を飼いたいと思っている人はたくさんいると思いますが、都会ではペット不可のマンションが多いのが現状です。そんな猫好きの人たちに、『ねこたま市で快適猫ライフを』とアピールして、移住してもらいます。」

「ネットで調べると、ペット不可のマンションが多いのは、匂いや鳴き声等が原因で住民同士のトラブルになったり、壁や床に傷がついて、退去時の原状回復費用が多くかかるということから、家賃が高額になりがちだったりするということが理由だそうです。」

「児玉市には人が住んでいない空き家がたくさんあります。そこを猫OKの家として、紹介します。元々空き家なので、家賃は高額にはなりません。古い家ですから、少々傷がついても気になりません。」

「ペット共生住宅に対してお客さんが望むことを調べてみると、キャットウォークなどのペット専用設備はそこまで必要とされてはいません。それよりも、近くに公園や動物病院があるか、ペットのトイレが起きやすい間取りか、換気しやすいか、壁紙を貼り替えやすいかなどの項目が重視されるそうです。」

「公園はOK。児玉動物病院もある。その他の項目も、空き家ならクリアできます。古民家を猫仕様にリノベーションしたいという人がいれば、それも有りです。」

「何といっても、猫好きにうれしいのは、猫好きが集う街だということです。猫に対する理解があるということで、安心して移住できるのではないのでしょうか。猫好き同士のコミュニケーションも魅力の一つだと思います。」

「もちろん、周辺住民とのトラブルが起こらないよう、室内で飼う、避妊去勢手術をするなどのルールを事前にしっかり話し合って、守ってもらいます。」

「さらに、猫の飼い主の悩みとして、出張や旅行でやむを得ず家を留守にしなければならないとき、飼い猫の面倒を誰が見るのかということがあります。その問題に対処できるように、飼い主同士の相互補助システムや、猫一時預かりサービスを検討します。猫好きなんだけど、ずっと飼うのはちょっと、という人が、ある程度のお金をもらって一時預かるというシステムはどうでしょうか。」

「もう一つ、新たな企画として考えたのは、飼い猫と一緒に入居できる介護施設です。高齢者にとって、今まで家族のように一緒に暮らしてきた猫は、老後の心の支え、癒やしです。自分が施設に入居するとき、その猫と別れることは、本当に辛いことです。ですから、猫と一緒に入居できる介護施設があったら、たくさんの入居希望者、移住希望者が集まると思うのです。」

「眞波京介さんという人が書いた『すべての猫はセラピスト』という本で、神奈川県横須賀市にある特別養護老人ホーム『さくらの里山科』が紹介されています。ここはペットと共に入所できる施設で、猫・犬と一緒に同居できるエリアがあるそうです。今、介護業界は人手不足が問題になっていますが、犬猫がいるから、ここで働きたいという応募者もあるそうです。この企画が実現したら、入居者だけでなく、職員として児玉市に移住してくれる人が期待できるかもしれません。」

「高齢の方は、自分が死んだ後、飼い猫はどうなるのかという心配を抱えています。この問題を解決するのは難しいかもしれませんが、そういう場合の『猫引き取り』を検討していくことも必要かもしれません。そういうシステムがあれば、安心して猫を飼える街ということで、さらにねこたま市の認知度が上がるのではないのでしょうか。」


 第六グループが新たに提案した「若者に人気のある施設」は、猫カフェだった。

「児玉公園の野良猫を()でる人もいるでしょうが、野良猫は気まぐれです。屋外ですから天候が悪いときや冬場は集客率が下がることが予想されます。そこで、定番ですが、安定の猫カフェです。児玉商店街に猫カフェを作ります。」

「一口に『猫好き』といっても、その好みは様々です。自由な雑種の野良猫が好きな人もいれば、様々な品種の猫と関わりたい人もいるでしょう。外国人観光客にも猫カフェはウケると思います。」

「さらに、商店街の空き店舗を活用して、猫ミュージアムを展開します。」

「先日の提案の中に猫の写真コンテストというのがありました。例えば、その優秀作品、応募作品を展示するのです。写真だけでなく、猫俳句、猫短歌、猫川柳なども同様に行ってはどうでしょうか。」

「さらに、もっと幅を広げて、様々な猫アートを展示します。猫の絵、彫刻、工芸、手芸、雑貨などなど。猫だったら何でもあり。」

「猫ブームの中、日本各地で、様々な団体が『猫展』を開催していて、大人気です。ただ、常設されているところはあまりないのではないのでしょうか。」

「猫アートミュージアムに展示する作品はネットで呼びかけて募集します。自分の作品を展示できる場を求めている人は、きっといるはずです。」

「展示だけでなく、販売も行えば、税収につながります。委託販売という形でどうでしょうか。一定期間預かって、売れたらラッキー、という感じで。」

「さらに、猫作品体験教室も実施します。

 猫の絵手紙、ちぎり絵、猫のマスコット、猫のアクセサリー、お皿やコップの絵付け、いろいろな作品が考えられます。」

「羊毛フェルト人形って知ってますか? 羊毛フェルトで作る猫がリアルですごいと、ネットで評判です。人気作家の作品は、ネットで一万円以上で売られているものもあるんですよ。簡単なものだったら、気軽に低予算で作れます。」

「もっとすごいのは、羊毛じゃなくて、飼い猫をブラッシングして集めた猫毛で、猫毛フェルト人形を作るっていうのもあるんです。蔦谷香里という猫毛フェルトの本を出している方もいるくらいです。」

「観光客だけでなく、地元の人たちも集える場、みんなが交流できて笑顔になる場、高齢の方も生きがいを見つけて元気になれる場、そんな場所になればよいなと思います。」


 七番目のグループは、「海街留学」ではなく、「猫街留学」という方向にシフトチェンジした。

「この前提案した海街留学では人口増はあまり望めないので、あれはあきらめます。代わりに、観光客誘致を狙った『猫街留学』を提案します。」

「『留学』といっても、一年間という長期にわたるのではなく、『ねこたま市一日パスポート券』を安価で販売して、観光客に来てもらおうというものです。このパスポートがあれば、ねこたま市の様々な体験ができるのです。今まで、他のグループが提案してきた猫バージョン土ひねり体験、ゆるキャラ着ぐるみ体験、ねこたまピザ・カフェラテアートの飲食、猫カフェ入店、猫アート体験教室への参加などなど、一日の中で、自分のやりたいものを選んで体験できるというパスポートです。」

「さらに、これを見せれば、道の駅・商店街の買い物が20%オフ。児玉市内のバスは一日乗り放題。」

「隣県の城とコラボするというアイディアを取り入れて、二日間パスポートにすることもできます。民泊も20%オフ!」 


 最後に第八グループも、補足・追加を行った。

「児玉公園の猫を地域猫として管理する際、餌やりやフンの清掃の問題が出てきますが、今現在、児玉公園で野良猫にえさをやっている人がいるのです。その人たちに地域猫のルール・マナーを理解してもらって、そのルーールに基づいて餌やりや清掃をしてもらってはどうでしょう。彼らは、元々猫好きで、猫のために何かしたいと思っています。エサをやるだけでは周囲の迷惑になっていることをわかってもらって、協力をお願いすればよいと思います。」

「あるいは、地域の方に、餌やり・清掃のボランティアを呼びかけるということもできると思います。」

「餌代については、猫との出会いを求めて児玉公園を訪れる人たちに、『猫募金』を呼びかけて、協力してもらいます。児玉公園への入場料を取ることも考えましたが、それでは、現在無料で誰でも利用できるというメリットがなくなってしまうので、『募金』という形がよいのではないのでしょうか。」

「インスタで『今日のねこたま市』というテーマで、猫の姿、さまざまな活動、体験の様子を定期的にアップします。」

 さまざまな改定案、新企画が提示された。 

 次のステップは、これを児玉市に提案するということになる。

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