朝富やくもさん用ページ
篠崎祥子 女 36歳
明るくいつも笑顔でタレ目のカフェのオーナー
ラストオーダー間際にやってきた男性と仲良くなって……
①月曜日
いらっしゃいませ。……ごめんなさい、もうラストオーダーのお時間なんですがそれでもよろしいですか?ああいえ、謝らないでください。このカフェは勿論大歓迎ですから。ただ実は今日、このメニューしかもう残ってなくて、それでもいいかしら……?ふふ美味しそうだなんて…とても嬉しいです。では、こちらへどうぞ?
……あの、もしよければこれも召し上がってください。男性が食べるにはこの量は少ないかとおもって……。……美味しいですか?よかった、このパスタ、私はよく自分で食べるんですが、有り合わせのもので作ったのでお口にあうか不安だったんです。ああ、お代は結構です、これはサービスで私が勝手に出したものですから。店側が無理やり食べさせたものにお金を払っていただくつもりはありませんよ。
どうぞごゆっくりお過ごしください。ふふ、そんなに急がなくても大丈夫ですよ、あなたさえよければ気になさらないでください。この時間はいつもランチのレシピを考えて過ごしていますから、私もなかなか帰らないんです。ああ、その代わりと言ってはなんだけど一杯飲んでもいいかしら。いつもはお客様が帰られてからやるんだけど、なんだか今日は一緒に飲みたい気分なんです。
②火曜日
いらっしゃいませ!あ、あのときの……!こんにちは、今日はお昼に来てくださったんですね。
職場がこの近くで…そうなんですね!丁度席が空いたのでタイミングが良かったわ。こちらへどうぞ!
今日は何にいたしますか?……ああごめんなさい、それはもうなくなってしまったんです。本当にありがたいことにこの日替わりランチは数量限定で、いつも早い時間に売り切れてしまうんですよ。…そんなに残念がってくださるなんて嬉しい。いつかきっと食べてみてください。随分と長く料理を仕事にしているので、腕には多少自信があるんです。
……そうですね、このカフェをオープンしてもう10年になるかしら。ええ、ずっと自分の店を出したかったんです。それで20代の頃から料理の勉強をして、やっと念願叶って。だからあなたのようなお客様には本当に感謝しているの。以前夜に来てくださった時も本当に美味しそうに食べているのを見て、ああ幸せだなって。私はずっとこのカフェで、皆さんに美味しい料理を提供していくつもりです。
③水曜日
ああこんにちは!今日は早いんですね!勿論!ランチの時間が始まったばかりですから、日替わりランチもありますよ!ありがとうございます、すぐに用意いたしますね。
とんでもないです、こちらこそいつも来ていただいて本当にありがとうございます。あなたにはとてもお世話になっているからコーヒーか紅茶をサービスさせてもらえないかしら。
いいんですよ、わたしの料理をいつも褒めてくださるから、せめてそれくらいのお礼はさせてもらわないと。ふふ、嬉しい…。直接感想を伝えてくださるお客様ってあまり多くはないから、ちょっと照れてしまうわね。
その、そういったことに慣れてはいないの……前にも言ったかもしれないけれど、若い頃からずっと料理ばかりしていたからその他のことにはめっきり駄目なのよ。例えば?……そうね、例えば……恋、とか。……いまのは忘れて、ああつい変なことを……もうこんな歳になるのに。ええと、それで日替わりランチよね、私はその、厨房のほうをみてこないと。どうぞゆっくりしていってね。
④木曜日
…こんばんは。ねえ、あなたわざとでしょう。この時間、狙ってきたわね?
正直なことをいうと、前お昼に来てくれてからあなたに会うのとっても恥ずかしかったんだけど、このラストオーダーの時間に来られちゃ逃げることも出来ないわ。
さ、どこでも好きな場所に座って?今日はなんでもあるわよ、ああ、日替わりランチ以外は、ね。
……それでなにかもの言いたげな表情をしているけれど、私に聞きたいことでもあるの?
そうよね、そうだと思った。あれは完全に私のミス。ちょっと浮かれて口走っただけ。だから忘れてくれないかしら?
……ほんと意地悪ね、よくある話よ。ただの臆病者なだけ、いつも私の片思いで終わってしまって成就したことは一度もないわ。それで気付いたら30代後半。友人は結婚もして子供まで授かって、焦って婚活をしたこともあるけど……そう上手くはいかないものね。でも自分の夢は叶った。素敵なスタッフとお客様に恵まれた。それで十分なの。カフェの経営自体は順調だしね?いっそこのまま独り身も悪くないかなぁと思い始めてるところ。…(少し笑う)もういいかしら?私の身の上話なんて聞いても楽しくもないでしょう?
⑤金曜日
本当変わり者ね……また一緒に飲みながら食べたいだなんて。あの話がそんなに面白かったの?
でもいいわ、わたしあなたとお話するのは嫌いじゃないみたいだから。
お酒は何が良い?別に飲まなくてもいいのよ?好きなものを選べば………これ?……へえ凄い、お酒好きなの?知らなかった。
そう、私あまりお酒は強いほうじゃないの。だからいつも…3%くらいが限界。好きだからもっといろんなお酒を試してみたいんだけどね。
え?ちょっとだけ?……でも……、そうね、それじゃあそのグラスでちょっとだけ……(咳き込む)ッ、……んう、やっぱり…強い……これをそんなに飲めるなんて…羨ましい。それにちょっと意外だった……。
そんなふうには見えないわよ、どちらかというとお酒は全然飲めないのかと思ってたくらいで……違うの、駄目なんじゃなくて、その、私はお酒飲めるひとがいいなって思ってたから。一緒にお酒を飲みながら美味しいご飯を食べるのが理想なの。でも、私はあまり飲めないから初対面の人に言うことは出来なくて……。あなたのことを知ることが出来て、嬉しい。
⑥土曜日
うーん……。え?ああ、新しいレシピを考えてるんだけどいい案が思い浮かばなくて……。そう、今回はちょっと特別なの。このカフェがオープンした記念日だからそれに合わせた思い入れのある料理にしたいんだけど……。記憶に残ってる食べ物?最初に作ったものとか?……そうね、それだと小学生のときに作った卵焼きなんだけどそれはちょっと違うかしら。
ふふ、本当に嘘みたいな話だけど、砂糖と塩を間違えてとんでもない味になっちゃった卵焼き。もちろん今は上手に焼けるわよ?ええ?食べたい?……仕方ないわね……また今度作ってあげる。
だってあなたってずっと来てるからお客様っていうよりもう……な、仲間って感じなんだもの。
それは嫌?ああそう、別にいいわよ?……なによ、お客様なんて、もうそんな関係じゃないじゃない。(引き寄せられる)あ、ちょっと!……なに、どうしたの……?そんなに嫌だったのなら謝るから腕を離して……。特別じゃないって……十分特別よ?私は誰にでもこんなふうに接したり出来ない……、え?こ、恋人に……?私を?……ど、どうしよう……。わ、私、恋が叶ったこと初めてだから…こういう時どうすればいいのかわからないわ。
⑦日曜日
いらっしゃ……こんにちは。ふふ、今日の日替わりは特別よ。何だと思う?……そう、覚えてる?あなたに初めて出会ったときにサービスで出したあのパスタ。そのレシピに少し手を加えたものなの。結局ね、ずっと考えてた記念日はこれが一番ぴったりだなって思ったの。
記憶に残ってる食べ物。あなたが美味しそうに食べてくれたあの顔、ずっと忘れられなくて、その時からもしかしたら、あなたのこと好きだったのかもしれないわ。
あなたもこのパスタが美味しくてずっと記憶に残ってたって言ってくれたものね、ありがとう。
それじゃあ今日は何にする?……そうよね、勿論日替わりランチを頼むわよね?残念、もうなくなっちゃったのよ!ふふふっ、あなたのその悔しそうな顔も私意外と好きよ。
嘘!嘘よ、冗談。あるに決まってるじゃない。特別なメニューよ?いつもより多めにつくっておいたの。恋人に食べてもらうために作ったようなものよ?食べてもらわないと、私が困るわ!