言葉さん用ページ
宇野紡 女 25歳
本屋で働く穏やかな店員
本好きの彼とであって……
①月曜日
いらっしゃいませ。あの…なにかお探しですか?もし違っていたらごめんなさい。さっきからあちこち移動しながら辺りを見回されていたので、なにか探されているのかな?って。
ああ全然!うちの本屋はこの街じゃ一番大きいお店ですから迷っちゃいますよね。因みに何ていう名前の本ですか?……ああ!それなら最近入荷したばかりで、それはこっちに置いてあるんです!こちらにどうぞ~?
ふふ、その本私も好きなんですよ、あんまり好きだって人知り合いにいないのでちょっと嬉しくなっちゃいました。どちらかというとお弟子さんが書かれたやつが有名なんですよね!映画化もされて……!でもあの作品にも、やっぱり似た匂いを感じるというか。そうそう、あの本を映画化にするのは難しいですよね。文字ならではのトリックがあるというか……!
あ、すみません、つい盛り上がってしまって……!私この作家さんの本をなんとか早く入荷させようと常に企んでいるので、お買い求めの際はぜひうちに来てください!
あ、あと取り寄せとかも私担当なのでお気軽にどうぞ!御用の際はレジのところで「宇野紡」の名前を言ってもらえれば大丈夫ですから!
②火曜日
あ、こんにちは!あの作家さんの新作ですよね?当然です、新作スペースの一番前に配置してますから!まさかこんなペースで書いてくださるなんて本当に神様……。本当ですね、前にお体崩されたってニュースで聞きましたし、大事にしてもらいたいです。私ずっとあの作家さんのお話を読んでいたいから……。
そうだ、あれからもよくうちに来てくださってますよね!いつもありがとうございます。覚えてますよもちろん!滅多に出会えないお仲間ですから~!ふふ、前にお話をしていて気が合うな~と思っていたので、もしかして好きな本のジャンルも似てるんじゃないかな?と思っていたんです。そうしたらびっくりするくらい同じで!ほら、あの現代小説も、ハードブックのファンタジーも私持ってるんですよ?ちょっと人間くささがでる作品が好きなんですよね。そう言えばあのファンタジー映画化するらしいですよ。……え?一緒に?本当ですか!ぜひ!……あなたとは色んな話ができそうですね…!盛り上がって一日じゃ足りなさそう!
③水曜日
ああ~楽しかった!!やっぱり原作に沿った映画作りをされてたところが素晴らしかったですね!
そうそう、あの主人公が涙を流すシーンもとっても素敵で……文字で描かれた背景がすべて再現されてましたね!
不思議だなあ……、実は私、映画を誰かと観に行くことって得意では無かったんです。今みたいに感想を言い合う流れになるじゃないですか。特に私が好きな作品の場合、あまり理解されないことが多くて……。友人の意見に合わせて話してたりすることも多かったんです。
でもあなたとは自然にお話出来るんですよね。それがとっても不思議だなあって。
ふふ、本当、特別なのかも。好きなものでたくさん話せるってこんなに嬉しいことだったんですね。あの……今回だけとは言わず、これからも誘ってくれませんか?一緒に本屋さん巡りとかできたらきっと楽しいと思うなあ。
④木曜日
読ませてくれてありがとう!これ本当に素敵だった……!この作家さんのお話全部読んだと思ってたのにこんな名作にまだ出会ってなかったなんて!これってこの作家さんがこの名前で活動する前のお話だよね?すごい……私もファンとしてまだまだだったんだなあ……。
…それにしても、あなたってやっぱり生粋の本好きなんだね。だってお部屋が本に囲まれてるんだもん。初めてここに来た人は小さな図書館かなにかだと思うよ。ううん、私はこの部屋とってもいいなあって最初から思ってた。こんなふうに本に囲まれて過ごせるなんて幸せだなって。もともとはそういう願いもあって本屋さんで働き始めたの。でもお家でもそうだったらいいなあって思いながらなかなか自分ではうまく出来なくて。呼んでもらえて嬉しかったよ。でも……一つ不満があるとすれば、あなたがおうちに呼んでくれて、ちょっとドキドキしてたのは私だけなのかなってこと。……ふふ、一緒なら良かった。
⑤金曜日
え……これって……小説?!あなたが書いたの?!……知らなかった……作家志望だったんだね。何度も一緒にお出かけしたのにどうして言ってくれなかったの?
……そっか、完成したら見せようって思ってくれてたんだね。これ私が最初に読んでいいの……?ありがとう!じゃあ読み終わったら感想いうね!……ふふ、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ?だって考えてみて?こんなに好きなものが一緒なのに面白くないわけがないよ。
嬉しい……、嬉しいよ、当たり前じゃない。あなたの最初に書いた小説の読者第一号になれるなんて。夢だったの、世に出る前の作品が人に愛されるところを見守ること。叶う日が来るなんて思ってなかった……。本当にありがとう。ほんとう…?これから書いた小説は全部、最初にみせてくれるの……?あなたって、やっぱり特別な人なんだなあ。
⑥土曜日
結果が来たって本当?!ああずっと待ってた!!私昨日あんまり眠れなかったよ!……これで合格が出たら書籍化だよね……?ドキドキしちゃう……ふふ、あなたのほうが緊張するはずなのにね。でもね、どんな結果だったとしても、私はあのお話とっても面白かったし、本当に素敵だと思ったよ。だからゆっくりでいいから書き続けてね。
うん、じゃあ……あけて……。…っやったあ!合格だって!!!!凄いよ、あのお話が本になるんだね…!!!
うん、私もそう思ってた。夢見たいだなあって……まさかお友達が……。ねえ、私のお願い、もうひとつ聞いてくれないかな。わがままかもしれないけど、私、あなたのお話をずっと隣で読んでいたいの。頑張っているときも悩んでいる時も、私がそばで支えてあげたい……お友達じゃなくて、…恋人として……。だめ、かな……?
⑦日曜日
いらっしゃいませ。あの…なにかお探しですか?もし違っていたらごめんなさい。さっきからあちこち移動しながら辺りを見回されていただので、なにか探されているのかな?って。
ああ全然!うちの本屋はこの街じゃ一番大きいお店ですから迷っちゃいますよね。因みに何ていう名前の本ですか?……ああ!それなら最近入荷したばかりで、それはこっちに置いてあるんです!こちらにどうぞ~?
ふふ、その本私も好きなんですよ。そうそう、新人さんなのにもう既に映画化が決まってるって!凄いですよね……!ああいえ、お役に立ててよかったです!
……あ、いらっしゃい。さっきね、お客さんがあなたの本を手にとっていったよ。……私の恋人が書いたんですって自慢したくなっちゃった。……したくなったけどしてないよ~、だってそのほうが特別な感じがするじゃない?ふふ。