白目
2019/7/24/18:41 ふむふむ。
放課後一番。
僕はキララの席に向かった。彼女の前に立ちぷるぷると震える。
「ごめん、別れよう」
僕は相手の返答も聞かず逃げるように教室を出た。
「良いのかニャ?」
僕の肩の上でラコルが言った。ボールペンの先を僕の頬に突き刺す。
「いいんだ」
それだけしか言えなかった。
廊下を歩き、階段を二つ下り、玄関で靴を履き替えて外に出る。
雨が降っていた。
そう言えばキララと何か約束した気がする。
忘れよう。
僕は歩き出した。
ふと、後ろから制服を引っ張られる。立ち止まって振り返ると、図体のでかい男子生徒が僕をにらみつけていた。
「高橋シクラ、ちみだね?」
「は、はい」
僕は震え上がった。
彼の靴のひもを見ると緑色だった。二年生である。ちなみに僕は一年生であり青だ。
「ちみ、ちょっと来なよ」
男の後ろの方では、もう二人男がいて、こちらの様子をうかがいクスクスと笑っている。
「す、すいません。僕、帰るんで」
「そういうなよー、ちょっと僕たちと、遊ぼうよー。いやー、ちみ、愉快そうだからさあ」
僕の腕を引っ張って強引に歩いて行く。
校舎裏に連れて行かれた。三人の男が僕を囲んでいる。
「ちみ、川口キララと付き合ってるって本当?」
図体のでかい男が訊いた。
僕は自分の頭に手をやり、
「あ、はい。実は」
別れました。
そのセリフを言う前に顔面をぶん殴られた。
ぶんっと風がなり、僕の脳裏は星がまたたいた。背中から地面に倒れる。もう二人の男が面白くてたまらないというように笑い声を上げる。
首根っこつかまれて僕は立たされる。
「ちみ、ねえ、別れてよ」
「は、はいっ」
「はいだってよ、。だっせー」
「ふんっ」
ぶんっ。
僕はまた殴られて地面に転がる。髪をむんずとつかまれて立たされる。
「ちみ、ねえ。僕たちは今から、キララの所に遊びに行こうと思うんだ」
僕は何も言葉が出なかった。
「僕たちさ、キララとお医者さんごっこしようと思うんだけど、いいかな?」
髪を乱暴に振られる。体が揺らされる。痛い。
「ねえ、いいかな。ちみ、いいかな?」
「い、いいです」
「ふんっ」
ぶんっ。
拳は僕の口に命中し、僕は前歯が折れた。口からだらだらと血が出る。
「もう行こうぜ」
「こいつダメだ」
一人の男が僕の足を踏みつけた。
「うん、行こう」
図体のでかい男ともう二人は笑いながら歩いて行った。
僕は白目をむいていた。