格差
2019/7/24/17:52 しまったなあ。設定もプロットも何も無い。
僕とキララが恋人同士になった噂は、学校の昼休みになった頃にはクラス中に広まっていた。
友達にからかわれたり、事情を追求されたり、応援の言葉をもらったり、そういうことがあったけれど正直なんとも言えない気分だった。キララとそう言う関係になれたことはとても素敵なことだ。だけど、それを心から伝えたくなるような仲の良い友達は、僕にはいなかった。
昼休み。
自分の机で僕は一人で弁当を食べていた。いつもこうだ。ちなみにラコルは机の上で一生懸命メモ帳に何かメモっている。その姿は他の人には見えないようだ。何でも、透明化の魔法を使っているらしい。
ふと、訪問者があった。
キララだった。両手には包みのされた弁当箱を持っている。
「何で来ないのよう」
彼女は唇をとがらせてそう言った。
「ん?」
僕は彼女の何を言いたいのかよく分からなかった。
彼女は弁当箱を僕の机に置く。
「だから、なんで話しかけに来ないの? 私たち、付き合ったばかりなのよ」
「ご、ごめん」
僕は下を向いてアジフライをかじった。
「まあ、いいけどさ。これからは、話しかけに来てよね」
「う、うん」
彼女は僕の前の席の椅子を借りて座った。
僕は頷いたけれど、本当に話しかけに行けるかどうか分からなくて不安になった。僕は、コミュニケーション能力の高い人間では無い。
彼女は弁当をちまちまとつまみながら、一生懸命話しかけてくれた。
放課後雨降るかなあ。
さっきの数学の問題、分かった?
君は、どこに住んでるの?
家族と暮らしているの?
兄弟はいる?
中々、会話は膨らまない。
好きなものは何?
趣味とかあるの?
休みの日は何して遊んでるの?
そのハンバーグ、おいしい?
ねえ。
何で、あんまり話さないの?
私、何か嫌なこと言ったかな。
嫌いなの?
チャイムが鳴った。
僕は弁当を半分も食べていなかった。それぐらい食欲がわかなかった。と言うか、何をしゃべっていいか分からなかった。彼女は怒ったような様子で自分の席に帰って行く。
僕は暗い気分だった。
彼女はあんなにカワイイのに。
何も悪いことをしていないのに。
僕の方が、釣り合わないだなんて。
泣きたい気分だった。