表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ライトノベルツクール  作者: 齋藤翔
5/34

桜色

2019/7/24/17:01 感想お待ちしています。


 天気の良い空の向こうで稲妻が鳴った。


 キララが急に立ち止まりこちらを振り向く。そして何を思ったのか歩いてきた。


「わ、わ、ラコル、どうしよう? どうすれば?」


 僕はわたわたした。


「シクラ落ち着くニャ。男なら、どっしり構えるニャ」

「そ、そんなこと言ったって」

「もう、あたしは知らないニャ」


 ラコルは僕の肩から飛び降り、桜の木の後ろに隠れた。


「わ、わ、逃げないでよ」


 キララが僕の前で立ち止まる。


「高橋、シクラくん?」

「そ、そうですが?」


 僕の声はソプラノになってしまった。気をつけをする。


「あのね」


 彼女のシャンプーの香りが伝わってきそうなぐらいの距離だった。


「う、うん」

「いま、雷なったね」

「そ、そうだね」

「君、傘持ってる?」

「いえ、持って来てません」

「そっか。じゃあ帰り、雨が降ったら入れてあげる。私、折りたたみあるから」

「あ、ありがとうございます」

「そ、それでなんだけど」

「は、はい」


 彼女は両手をすりあわせ、下を向いてもじもじとする。そしてどうしたのか、両手を開いて倒れかかってきた。


「キャー!」

「だ、だいじょう」


 転んだようだ。


 僕は彼女の体を支えようとした。


 僕の唇とキララの唇が重なる。


 あまりの出来事に、僕は彼女を支えることができなかった。二人で抱き合ったまま地面に倒れる。柔らかい唇の感触。桜色の彼女の顔。僕は頭がパニックだった。


 彼女がゆっくりと唇を離す。そして立ち上がり僕を指さした。


「あー!」

「な、なに? なに?」


 僕もゆっくりと体を起こす。


「私のファーストキス! 奪ったわね!」

「いや、奪ったも何も。そう言うつもりじゃ」


 僕はただ彼女の体を支えようとしただけだ。何も無い地面で転んだキララに非があるはずだった。いやそもそも僕がお願い事をしたのが悪いのだけど。


「奪ったわね!」

「ご、ごめん」


 僕は気が弱かった。


「責任とりなさいよ」

「責任?」

「うん」


 キララは両腕を組む。


「付き合ってもらうからね」

「付き合う?」

「付き合ってもらうからね!」

「わ、分かりました」

「分かれば良し」


 キララは満面の笑顔で頷いた。エンジェルスマイルだった。


 彼女は自分の制服についた汚れを払う。


 僕も立ち上がった。ぱんぱんと制服をはらい、汚れを払う。


 彼女は腕時計を見た。


「あ、時間、遅れちゃう」

「え、もうそんな時間?」

「早く行こう」


 彼女は僕の手を取った。早足で歩き出す。


 途中、僕は桜の木を振り向いた。木の根元ではラコルがいて、やはりメモ帳にペンを走らせていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ